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毎月赤字になる『年金暮らしの人』はやっている…家計を圧迫する"3つの落とし穴"とは?【お金のプロの解説】

  • 2025.8.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

多くの高齢者の方が「年金だけでは足りない」と感じていますが、実は知らないうちに家計を圧迫している「隠れた支出」が存在します。

現役時代と同じ感覚でお金を使い続けていると、限られた年金収入では必ず行き詰まります。しかし、これらの落とし穴を理解して対策を講じることで、年金生活でも安心した家計管理が可能になるでしょう。

落とし穴1:固定費の見直しを怠っている

大きな問題の1つ目は、現役時代の固定費をそのまま維持していることです。一般的に、年金生活に突入すると、現役時代よりも収入が少なくなります。

しかし、住宅ローンや保険料をはじめとした固定費を見直していないケースが多く見られます。その結果、年金収入に対して固定費が占める割合が高く、家計の負担になってしまうのです。

たとえば、現役時代に月収50万円で固定費が10万円の場合、負担率は20%でした。しかし、年金が月20万円になると、同じ10万円でも負担率は50%にも跳ね上がるのです。

落とし穴2:医療・介護費の急激な増加を想定していない

年齢を重ねるにつれて、医療や介護関連の支出が増加します。しかし、多くの年金生活者がこの支出を甘く見ており、継続的な家計項目として計上していません。

医療費や介護費の自己負担分や健康食品代などを加えると、月10万円を超えるケースも珍しくありません。医療費や介護費の想定が甘いと、家計を圧迫してしまうでしょう。

落とし穴3:インフレによる実質的な年金価値の目減り

昨今は物価上昇により、預貯金の実質的な購買力は年々低下しています。これは「インフレリスク」と呼ばれる現象で、多くの年金生活者が認識していない重要な問題です。

公的年金は毎年物価上昇率や賃金上昇率に応じて改定されますが、実際の物価上昇率よりも低い水準です。つまり、意識的に節約しないと、どんどん家計が苦しくなってしまうでしょう。

専門家が教える「年金赤字」を解消する3つの対策

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

これらの落とし穴を避けるためには、戦略的な家計見直しが必要です。ファイナンシャルプランナーとして多くの年金生活者をサポートしてきた経験から、実効性の高い対策を紹介していきます。

対策1:毎月払う固定費を年金に合わせて見直す

現役時代の固定費をゼロベースで見直し、年金生活に適した水準に調整しましょう。特に効果的なのが「固定費の年金収入比率管理」という手法です。

具体的には、住居費を年金収入の25%以下、保険料を10%以下に抑えることを目標とします。住宅ローンが残っている場合は、繰り上げ返済や借り換えを検討し、場合によってはダウンサイジング(より小さな住居への住み替え)も視野に入れるべきでしょう。

対策2:医療費・介護費用のための貯金を作る

医療・介護費用を突発的支出ではなく、継続的な家計項目として位置づけることが重要です。医療費・介護費のための貯金を作り、生活費とは明確に分けて保管することが大切です。

医療費・介護費はいつ発生するか、必要な金額がいくらかわからない難しさがあります。突発的な支出に備えるためにも、医療費・介護費用専用の貯金を用意し、元本保証(定期預金や個人向け国債など)で安全に運用しましょう。

対策3:物価上昇に負けない家計を作る

物価上昇に負けない家計を作るには、固定費の削減分を「インフレ対応予算」として確保することが効果的です。これにより、年金の実質価値が目減りしても、生活水準を維持できるようになります。

銀行預金だけでは物価上昇に追いつけないため、資産の一部をNISAで運用し、少しでも資産の目減りを防ぎましょう。たとえば、低コストのインデックスファンドを活用すれば、コストを抑えつつ分散投資を行えます。

さらに、年金以外の収入源の確保も重要な対策です。シルバー人材センターやハローワークを通じて無理なく働ける場所を探したり、スキルや経験を活かして個人事業主として働いたりする選択肢があります。

まとめ

年金生活で赤字に陥る代表的な落とし穴は、「固定費の見直し不足」「医療・介護費用の想定不足」「インフレによる実質的な収入減」です。

これらの問題に対処するには、現役時代の家計感覚をリセットし、年金生活に適した新しい家計管理システムを構築する必要があります。固定費の最適化や医療・介護費の確保、インフレへの対応を実践しましょう。

これにより、限られた年金収入でも安心した生活を送れます。家計の見直しには時間がかかりますが、一度仕組みを整えてしまえば、長期にわたって安定した年金生活を実現できるはずです。


監修者:柴田 充輝

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。