今日好き出身“若手俳優”【月10ドラマ】初の地上波で“目が離せない名演”を魅せる

粒揃いの夏クールドラマの中でも、じわじわと注目を集めている『僕達はまだその星の校則を知らない』。第6話は教育虐待、第7話は先生と生徒の恋と、それぞれのエピソードの誠実さが際立つエピソードとなった。何よりも若手俳優たちの名演に注目したい。

※以下本文には放送内容が含まれます。

教育虐待に苦しめられる男子高生を演じた栄莉弥

第6話で描かれた教育虐待。この問題の難しさを丁寧に映像化していくうえでも、被害者となる男子高生の演技力は欠かせない。

栄莉弥が演じた有島ルカは、医師である父親から勉強について厳しく指導されていた。有島の心はとっくに限界を迎えており、盗撮やカンニングなど、バレない程度の非行に走ってしまっていた。ひょんなことからカンニングがバレてしまう。遠回しにカンニングを注意されたあとにわかりやすく成績が下がってしまったことから、有島が長期にわたってカンニングをしていたことがわかる。

自殺をしてしまいたいと、屋上まで走る有島。心が悲鳴をあげているにもかかわらず、他の生徒に悪態をつき、バカにするなど、助けを求めることができない姿も苦しかった。主人公・白鳥健治（磯村勇斗）は、どうにか有島の心の荷物を下ろせないかと声をかけるが、やはり拒否されてしまう。

暴力をふるわれているわけではない、自分のためを思って指導をしてくれている、父は僕の味方だ！と激昂する姿には胸が苦しくなった。父親に感謝している、しなければならないという思い込みと勉強と成績をあげることを強制される苦しみに対する心の悲鳴がぶつかって、頭の中ではハレーションを起こしているのだろう。健治の言葉で万事解決とならない展開だったからこそ、誠実でリアルな描き方だったといえる。

ABEMAの恋愛リアリティ番組『今日、好きになりました。』に出演していた栄莉弥は、本作がテレビドラマ初出演だ。有島が激昂する場面では、優しく語りかけ、強く主張しない繊細な磯村の芝居に対して、画面全体を背負い、目線を惹きつける芝居を見せた。また、母からもらったくまのぬいぐるみと自分を重ねたときの様子やバスケをしながら見せた笑顔など、繊細な感情表現も魅力だった。

ここからどのような俳優になっていくのかに期待したくなる芝居だった。

家庭環境が原因で、先生に助けを求めてしまう女子高生を演じた北里琉

第7話では、3年生の学年主任を務める巌谷光三郎（淵上泰史）と島田聖菜（北里琉）との間の恋未満の感情が描かれた。聖菜は家庭環境により、何度も巌谷に助けを求めており、そんなときに巌谷からかけられる言葉に救われてきた。巌谷自身も先生という立場を守りながら、聖菜をサポートしてきた。そんな2人の関係は聖菜が補導されたことで変化してしまう。聖菜の親が把握していた巌谷との関係性は、内容だけ聞けばNGと判断せざるを得ない内容だ。

白鳥は巌谷から丁寧に聞き取りをしていく。個人的なSNSでやり取りをしていたこと、自宅近辺で会ったことがあったこと以外にも、島田と巌谷は1度だけキスをしていた。聖菜は不同意わいせつであるとしながらも、被害者は巌谷だと話す。しかし、巌谷は1度だけしか言わないとしながら、「嫌ではなかった」と自分の感情を吐露する。聖菜と巌谷の関係が一方通行ではなかったことがわかる一言だ。巌谷は自分の感情に責任をとり、学校を退職。大人として、教師として自分の恋心を押し殺したのだ。

北里が演じた少しずつ巌谷に惹かれ、心を解いていく表情、退職し引っ越そうとする巌谷に拒絶された時の表情からは、心の痛みがありありと伝わってきた。いつか巌谷のこの選択を理解し、感謝するときが聖菜に訪れるのだろう。大きな喪失感に襲われながらも、涙を流さずに前を向いて歩く聖菜の幸せを願ってしまう。

『僕達はまだその星の校則を知らない』は、越山敬達や月島琉衣などすでに知名度の高い若手俳優も出演しているが、のせりんや南琴奈、日高由起刀などここから大きく羽ばたくであろう俳優が名演を見せている。

本作出身の俳優たちがそれぞれのフィールドで活躍する未来は近いだろう。

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カンテレ制作・フジテレビ系列 月10ドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』 毎週月曜よる10時

ライター：古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X（旧Twitter）：@k_ar0202