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【イベントレポート】『海がきこえる』高知1週間先行上映記念、望月智充監督、髙橋望プロデューサー、キネマミュージアム代表 安藤桃子さんを迎えたトークイベントを開催!

  • 2025.7.11

Filmarks(フィルマークス)主催のプロジェクトにて、7月4日(金)より3週間限定で初の全国リバイバル上映がスタートしたスタジオジブリ作品『海がきこえる』。

舞台となった高知県では全国公開に1週間先駆けてリバイバル上映がスタート。監督の望月智充さん、プロデューサーの髙橋望さん、リバイバル上映を実施する高知の映画館・キネマミュージアム代表の安藤桃子さんを迎え6月28日に開催されたトークイベントの様子をレポートします!

文・写真:上総毬椰

若者が作る若者のための作品。短い制作期間とアニメ化への想い

来場者:高知まで来てくださってありがとうございます。『海がきこえる』がアニメーションになるまでの経緯について、きっかけなどを教えてください。

望月智充 監督(以下、望月):当時『アニメージュ』の編集に携わっていた現スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫さんに企画を持っていったのが最初です。原作の氷室冴子さんの作品がとても好きで、氷室さんの作品を自分が最初にアニメ化するんだという思いは強かった。しばらく経ってからジブリで作ってみては?とお返事をもらいました。

髙橋望 プロデューサー(以下、髙橋):『紅の豚』を作り終わった後で、若者が作る若者向けの作品がいいんじゃないかという話があって、『海がきこえる』の企画が通ったように記憶しています。

望月:そうですね。若いものにチャレンジさせてみようという雰囲気で始まりました。なので制作期間はとても短くて、時間に追われていたことが一番思い出に残っています。

安藤桃子(以下、安藤):どれくらいで作ったんですか?

望月:8月に高知にロケハンに来て、翌年4月には完成していたので制作期間は実質8ヶ月。設定や脚本作りを除くと、作画期間は4〜5ヶ月だったと思います。

終わらないと思った時もあった、と会場を笑わせながら「スタッフが頑張ってくれた」「スタッフに恵まれた」と繰り返す望月監督の言葉から、短い期間の中でとてもいいチームで作られた作品なのだと感じました。

大きな事件が起こらない「日常」をアニメにする

来場者:今日は本当にありがとうございました!私は70歳なんですけど、惹き込まれて惹き込まれて、上映時間があっという間でした。若者の日常や恋愛模様から青春時代を思い出して、今の自分まで輝き出すような気持ちになって。この作品に出会えて感謝しています。土佐弁が使われていたのも、高知がしっかり描かれていたことも本当に嬉しい!

望月:ありがとうございます。作品は初めて見ていただいたんですか?

来場者:初めてです!このリバイバル上映があると聞いて、ずっと楽しみにしていました。だから今日この時間が嬉しくて嬉しくて。私だけでなくここに居る皆さんが最初から最後までスクリーンに惹き込まれていたと思います!

賛同するように拍手が沸き起こり、感動がおさまらない様子に望月監督や髙橋プロデューサーもとても嬉しそうで、会場の距離がグッと近くなったように感じました。質問したい方がどんどん増えていくなか、作品の舞台となった追手前高校の卒業生からの質問も。

望月:原作を読み込んで主人公である杜崎拓の一人称の物語ということを意識して作りました。なので、里伽子を含めた他の登場人物の気持ちがわからないのは当たり前。私たちの日常生活でも他人が考えていることなんてはっきりとわからないですよね?そんな普通の、当たり前の世界を描いたつもりです。

安藤:ラストシーン以外は里伽子の本当の心の内が全く見えない。同じ女性としてもすごく魅了されました。同時に、起承転結がはっきりあるわけではない日常をアニメにするのは当時とても斬新だったように思います。

髙橋:当時のアニメシーンとしても、ジブリ作品としても前例がなかったのでは?

望月:下手をすると、何も起こらないつまらない作品になる可能性もあったと思います。ただ、『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』などの名作から、特に非日常な大きな事件がなくても日常を描くことだってアニメになるんだという意識がどこかにあったと思います。

『海がきこえる』の“海”ってなんだろう?

望月:一番印象的だったのは追手前高校です。アニメにはよく学校が出てきますが、変わり映えのしない校舎になってしまいがち。追手前高校の廊下の広さや天井の高さを見て、これなら舞台になると思いました。短い制作期間の中で、こういう出会いがあって、この作品は運がよかったと思っています

髙橋:高知の街や学校など、実際の風景をそのまま絵にするのは最初から決めていたんですか?

望月:リライトしないで写真をそのまま絵にするのは、時間がないから生まれた崖っぷちの作戦でした。

安藤:今では実際の風景がアニメの背景になって、聖地巡礼までが普通になっていますよね。『海がきこえる』はそんな一つの手法が生まれたパイオニア的な作品。貴重な制作秘話を聞けて感無量です!

望月:不思議なタイトルですよね。原作も海を舞台に描いているわけではないし、すごく深い意味での“海”なのかもしれません。

安藤:すごくロマンティックな表現になっちゃうんですけど、海って変わらずにずっとそこにあるじゃないですか。そんな作品だと思いました。いつ見てもキラキラ、たゆたゆと漂っていて。この作品と出会う度に青春に戻れる、普遍的な作品だなって。

髙橋:東京が舞台だったらもっと古い作品になっていたかもしれませんね。すごいスピードで街並みが変わっていくので。高知だから今見ても普遍的だと思えるのかも。

本来予定していた時間をオーバーするほど盛り上がり、トークイベントは終了しました。制作から30年以上経った今、そして舞台となった高知だから生まれた会場の温度感とトーク内容に、また『海がきこえる』に出会って自分にとっての“海”を探してみたくなる、そんな時間になりました。


【『海がきこえる』作品情報】

1993年/日本/72分
https://filmarks.com/movies/54072

原作:氷室冴子
脚本:中村 香
監督:望月智充
音楽:永田 茂
主題歌:坂本洋子
制作:スタジオジブリ若手制作集団
声の出演:飛田展男、坂本洋子、関 俊彦

<あらすじ>
東京の大学に進学した杜崎拓(もりさきたく)は、吉祥寺駅の反対側ホームにある人影を見た。中央線下り列車に姿を消したその人影は確かに武藤里伽子(むとうりかこ)に見えた。だが里伽子は高知の大学に行ったのではなかったのか。高知へと向かう飛行機の中で、拓の思いは自然と里伽子と出会ったあの2年前の夏の日へと戻っていった。――里伽子は勉強もスポーツも万能の美人。その里伽子に、親友の松野が惹かれていることを知った拓の心境は複雑だった。拓にとって里伽子は親友の片思いの相手という、ただそれだけの存在だった。それだけで終わるはずだった。高校3年のハワイの修学旅行までは…

【Filmarksリバイバルとは】

・Filmarksリバイバル上映
https://filmaga.filmarks.com/writers/premium-ticket/
公式X:https://twitter.com/Filmarks_ticket(@Filmarks_ticket)

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