ブラッド・ピット、ルイス・ハミルトンなしに映画『F1®／エフワン』は実現しなかった

映画『F1®／エフワン』にエグゼクティブ・プロデューサーとして参加し、全面的に協力した現役トップレーサーのルイス・ハミルトン。主演のブラッド・ピットが『Entertainment Weekly』で、これほどの完成度は彼なしに実現しなかったと明かした。

「ジョー（・コシンスキー監督）は、俳優をマシンに乗せて本物のコースに送り込み、実際にモータースポーツの頂点で撮影をしようと思いついたとき、誰か導いてくれる人、扉の向こう側、本当の姿を見せてくれる人が必要だとわかっていたんです。そして最初に声をかけたのが、ルイスだった」

「ルイスが加わったことで、毎週末のレースを見せてもらった。彼はレースの現場に僕らを連れて行き、チームの代表やドライバーたちを紹介してくれた。ストーリーを構築する中で、僕らは何度もミーティングを重ねた。ロンドンでは12時間も話し合い、僕らの質問攻めに付き合ってくれた。あれこれ聞くと自分の経験を教えてくれたんだ」

『トップガン マーヴェリック』のジョセフ・コシンスキー監督と製作のジェリー・ブラッカイマーがタッグを組んだ本作は、F1の世界で勝利を目指す人々の生き様を描く。ブラッドが演じるのは、かつて天才と称えられたベテランドライバーのソニー。過去にクラッシュ事故を起こして第一線から離れていたが、チームの成績不振にあえぐ旧友ルーベン・セルバンテス（ハビエル・バルデム）の求めに応じ、現役復帰する。

コシンスキー監督も別のインタビューで、ソニーのキャラクターの核心と、彼が運転を続ける理由を理解する上で、ハミルトンの尽力があったと語っている。「毎週末、命懸けでレースに挑む彼らの心の奥底に潜む原動力について話を聞くことができました。壁に衝突して、3度も脳震とうを起こしたそうですが、それでも彼は退院後すぐに車に乗り込み、レースに戻ったのです。彼らを突き動かすものは何なのか、そこが肝でしたが、ルイスはまさにその点を共有してくれました。非常に個人的で、魂に直結するような話でしたが、おかげでソニーのキャラクターに生かすことができました」

ハミルトンからは、核心的な話に加え、実質的なアドバイスも得たという。「ドライビング中には、耳を使うと教えてもらいました」。彼の聴覚は素晴らしく、壁や後続車との距離を判断し、エンジン音やギアの状態を聞き分けることで、どういった車がどういった走りをしているかも察知できるという。「彼らは、ヘルメットに伝わる振動からも情報を得ます。信じられない程の情報量を浴びているのです。コース上で車を操縦するだけではありません。絶えず情報を処理し、戦略を練っているのです」

Text: Tae Terai

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