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映画『ウィキッド 永遠の約束』の衣装を徹底解説。ドレスに込められた意味とは?

  • 2026.3.8
映画『ウィキッド 永遠の約束』は3月6日より日本公開。
映画『ウィキッド 永遠の約束』は3月6日より日本公開。

どんな衣装デザイナーにとっても、『ウィキッド』のようなスケールの作品は胸が躍る挑戦となるだろう。ポール・タゼウェルの場合、彼に課されたのは『ウィキッド ふたりの魔女』と『ウィキッド 永遠の約束』を同時に手がけるという任務だった。

タゼウェルは、この撮影を「刺激的だった」と振り返る。「美術セットを最大限に活かし、キャラクターの一貫性をしっかりと保つことができました。ただ同時に、物語全体の展開を明確に把握しておく必要もありました」。彼の仕事は大きな成果をあげ、2025年に日本公開した『ウィキッド ふたりの魔女』は第97回アカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞した。

第2作『ウィキッド 永遠の約束』は、第1作『ウィキッド ふたりの魔女』のラスト直後から物語が始まる。西の悪い魔女として悪名を着せられたエルファバ(シンシア・エリヴォ)はオズの森へと逃れ、一方グリンダ(アリアナ・グランデ)はエメラルドシティでオズの魔法使いのもとで働いている。

「第1作では、2人の若い女性が大人としての人生を歩み始め、自分がどのように世界を見たいのかを選択していく姿を描きました」とタゼウェルは言う。「第2作では、その選択によって生まれた結果を、彼女たちがどのように受け止め、理解していくのかを描いています」

WICKED FOR GOOD

タゼウェルの仕事は、そうした視点の変化を反映し、本作におけるふたりの主人公の人物描写をさらに深めている。エルファバが森の奥へ、そして自分自身の内面へとますます引きこもっていくにつれ、彼女の象徴的な黒いマントは次第に傷み、より擦り切れた風合いへと変化していく。

「彼女のチュニックは『ウィキッド ふたりの魔女』のラストで着ていたドレスですし、ダスターコートも、実は第1作で着ていたレインコートなんです」とタゼウェルは語る。

それらが徐々に劣化していく様子は、「社会から押し付けられてきたものを彼女がすべて脱ぎ捨て、とても正直かつ本質的なあり方で自分自身を見出していく姿」を表しているのだという。

Wicked

物語の後半、エルファバが別のオーバーコートをまとい、キアモ・コ城へと向かう場面でも、その装いには多くの意味が込められている。「このルックでは、物事がどのように変化していくのか、そして彼女が本当の自分へとたどり着いていく様子が表現されています」とタゼウェルはほのめかす。

「そのコートはフィエロの血統に由来するもので、ベルベットのケープに施された黒から青へのグラデーションと、民族的なスパイラル模様によって、それが表現されているのです」

エルファバが纏うコートと帽子
Wickedエルファバが纏うコートと帽子

エメラルドシティでの立場の重要性と注目度の高さを踏まえ、グリンダの衣装には異なるアプローチが求められた。「彼女が大人の女性へと成長する一方で、エメラルドシティにとっての“善”の駒としても存在し、善の象徴へと仕立て上げられていく様子も描かれています」とタゼウェルは語る。そのため、彼女のルックは権威にふさわしいものにしたいと考えたという。

ディオール(DIOR)マリー・アントワネットが出会ったようなイメージです」と彼は言う。「彼女にはある種の権力が備わっている一方で、柔らかくフェミニンな質感も持ち合わせている。チュールやオーガンザを重ねた、レイヤードを多分に使ったデザインになっています」

グリンダの青のバブルドレス
Wickedグリンダの青のバブルドレス

第2作の冒頭で、グリンダが初めてシャボン玉の中から降り立つ場面では、彼女は青とライラックのフェアリーテイル風ガウンをまとっている。そのシルエットは、映画『オズの魔法使』(1939)でビリー・バークが演じたグリンダが着用していたドレスに着想を得たものだという。

「彼女をとてもクラシックな形で表現することが重要だと感じました」とタゼウェルは語る。「ドレスの色においても、ミュージカル版『ウィキッド』のグリンダの青いドレスへのオマージュを込めています」

しかし、物語が進むにつれ、彼女の装いはややシンプルになっていくとタゼウェルは言う。たとえば、タンポポの刺繍とビーズ装飾が施されたピンクのスカートスーツなど。「より力強いラインを意識し、彼女の本質へと立ち返ることを重視しました」

Wicked

タゼウェルは、グリンダの結婚式の場面では、よりコンテンポラリーなファッションの方向性を打ち出したという。「アリアナと私は、グリンダがウエディングドレスとして何を着るべきか、そしてそれがどのように彼女のキャラクターの進化を示し続けるのかについて、深く話し合いました」

最終的に選ばれたのは、クリーンなラインのフルスカートのドレス。アシンメトリーのネックラインに蝶の刺繍が施され、ドレスの裾には立体的な蝶が渦を描くようにあしらわれてる。仕上げとして、25メートルものロングベールと蝶のティアラが添えられた。それは、グリンダの変容を象徴するメタファーでもある。

フィエロ(ジョナサン・ベイリー)とグリンダの結婚式
Wickedフィエロ(ジョナサン・ベイリー)とグリンダの結婚式

もちろん、タゼウェルが衣装を手がけたのはエルファバやグリンダだけではない。ミシェル・ヨー演じるマダム・モリブルについても、第1作で彼女の装いを支配していた権力、威厳、シュールレアリズムというテーマが再び用いられている。しかも、すべてエメラルドの色調で統一され、エメラルドシティにおける彼女の支配を象徴している。

「彼女は非常にスタイルのある女性です」とタゼウェルは言う。「魔法の力を持ち、天候を操ることができる人物なので、その要素を衣装の装飾に反映させました。物語を通して、気象学的なモチーフや、雲や煙がドレスを渦巻いているデザインを見ることができます」

さらにタゼウェルは、深いグリーンのベルベットのドレッシングガウンのひとつに、銀糸や金糸のブリオン刺繍を施し、稲妻を思わせる意匠を加えた。「まるで彼女の身体の中心から稲妻が炸裂しているかのようなイメージです」

マダム・モリブル(ミシェル・ヨー)
Wickedマダム・モリブル(ミシェル・ヨー)
マダム・モリブルの衣装
Wickedマダム・モリブルの衣装
マダム・モリブルの衣装
Wickedマダム・モリブルの衣装

一方、オズの魔法使い(ジェフ・ゴールドブラム)については、より大袈裟で、ときにはキッチュなディテールに寄せたデザインを採用した。何しろ彼はショーマンだからだ。「彼こそが、エメラルドシティの壮麗な偽りの美のすべてを生み出した人物であり、それを自身の装いにも体現しています」とタゼウェルは語る。

そのため、オズの魔法使いの衣装は人気サーカス団の演目に着想を得たもので、華麗なパターン、ドラマチックな幅広ラペルのコート、そしてもちろん、たくさんのシルクハットが含まれている。マダム・モリブル同様、エメラルドのディテールは彼の権力の象徴だ。

「黒いドレッシングガウンにはエメラルドグリーンのラペルが施されていますが、そのシルエットはエメラルドシティを掌握する威厳ある人物の姿を忠実に表現しています」とタゼウェルは語っている。

オズの魔法使い(ジェフ・ゴールドブラム)
Wickedオズの魔法使い(ジェフ・ゴールドブラム)

ジョナサン・ベイリー演じるフィエロについては、「最大限、魅力的に見せたかった」とタゼウェルは語る。また、彼はボーウェン・ヤン演じるファニーなども含め、オズの住人たち全員の衣装を担当した。それぞれのキャラクターには、独自の物語や感情を表現する必要があった。しかし、最も楽しかったのは、『ウィキッド 永遠の約束』で最も注目を集める4人組、ドロシー、ブリキの木こり、カカシ、臆病なライオンの衣装を考えることだったという。

ハリウッド史上最も有名とも言えるキャラクターたちに挑むにあたり、タゼウェルはオリジナルの『オズの魔法使』の4人組を思い出せるような存在としつつも、一捻り加えたいと考えた。

「そのイメージを遊びながら操作できるのは、本当に楽しかったです」とタゼウェルは語る。「彼らが誰で、映画の中でどう関わっているのか、そして4人は友達であるということが一目でわかる必要があります。しかし同時に、オリジナルであるライマン・フランク・ボームの1900年の児童小説『オズの魔法使』を反映させることも重要だと思いました」

ブリキの木こりの衣装(イーサン・スレーター)
Wickedブリキの木こりの衣装(イーサン・スレーター)

ドロシーの田舎の娘らしい素朴な衣装は、映画『オズの魔法使』でジュディ・ガーランドが着用したものや、バウムの原作小説でのキャラクターの衣装に敬意を表している。では、映画で描かれていないものは何か? 「私たちの映画には、ルビーの靴は登場しません」とタゼウェルは語る。「オリジナルの『オズの魔法使』の本には、ルビーの靴は存在しなかったのです」

同じく、イーサン・スレイター演じるブリキの木こりの衣装も原作に忠実だった。「身体のシルエットや頭頂部の漏斗形の部分について、オリジナルの挿絵を参考にしました」と彼は語る。一方、臆病なライオンについては、第1作でのディラモンド教授や他のオズの動物たちと同様に、完全にアニメーション化されたキャラクターに衣装を与える必要があった。

タゼウェルは「楽しくて刺激的な作業でした」と振り返る。「オズの世界観を保ちながら、かつリアルに機能する最適な形を見つけるために、相当な試行錯誤をしました」

グリンダのドレス
Wickedグリンダのドレス
エルファバのコート
Wickedエルファバのコート
グリンダのドレス
Wickedグリンダのドレス

『ウィキッド ふたりの魔女』と『ウィキッド 永遠の約束』という大規模プロジェクト全体を振り返り、タゼウェルは「これほどまでにハリウッド級の仕事は他にない」と語る。

「デザイナーとして、このような世界を創造する機会に恵まれて、本当に幸運だと感じています」と彼は言う。「こんなにも大きな作品に参加できたことは特権でした。とても大きな物語のスケールのなかに、人間関係や感情の丁寧な機微があります。それは、人が互いをどう見つめ、どう共感や愛をもって関係性を築くかということにも関わるのです」

Text: Christian Allaire Adaptation: Hanae Iwasaki

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