1. トップ
  2. ファッション
  3. 【真夏の防災】災害への備え、ここが落とし穴

【真夏の防災】災害への備え、ここが落とし穴

  • 2025.6.22

真夏の被災生活で起こること

夏と冬では被災時に注力すべきことが大きく変わってきます。酷暑となる夏の被災生活での注意点を知っておきましょう。

とにもかくにも熱中症対策を! 病院には行けず、命が危険になることも

災害時には停電となり、冷房が効いていない状況で過ごすことになる、という国際災害レスキューナースの辻直美さん。
暑さに加えて、災害時のトイレは凄惨な状況で“トイレに行きたくない”という気持ちから水分をとるのを躊躇してしまう人が多くいるそうです。

「今の猛暑ではあっという間に熱中症に。救急車などのインフラも混乱している状況下だとすると、せっかく助かった命が危険にさらされます。さらに水分のとり方も重要で一気に飲んではダメ。ミネラルバランスを崩し、8割近く尿で出ていってしまいます。1時間に
60㏄ を目安にちびちびと飲み、最低でも一日500mLペットボトルを2本飲んでください」

さらに夏は「エコノミークラス症候群にも注意」と辻さんは警告します。

「水分を十分にとらないと血液はドロドロに。さらに被災時はじっとしていることが多くなるため、血栓ができやすくなるんです。さらに血栓が肺や脳に飛んで肺血栓、脳梗塞になることも」

また、災害時のがれき撤去なども被災者が行うこともあり、日よけグッズなども重要です。

非常時のフェムゾーンケアを侮るなかれ

「被災生活中にフェムゾーンの衛生ケアを後回しにしがち」と辻さん。
さらに「トイレを我慢すること」によって、「膀胱炎のリスクが高まる」と注意喚起をしています。

「女性は、男性と比べて膀胱から尿道までの距離が短いためフェムゾーンの衛生状況が悪いと膀胱炎にかかりやすいんです。腎盂腎炎になってしまうと透析が必要なケースもあり、停電下では生死にかかわります」

平常時のうちにシートやスプレーなど水を必要としないフェムゾーンケアのグッズを試して選んでおき、被災生活中の衛生ケアに役立てましょう。

蚊・ノミ・ダニに悩まされる場所に避難することも

「避難所生活の場合、ウィルス感染予防の換気のため、窓を開け放していることが多く、夏は蚊よけなどの虫対策は大切」と防災士の資格を持つ島本美由紀さん。

また、避難所のスペースは限られているため倉庫など普段使われていない場所を割り当てられることもあり、高温多湿な環境でノミ、ダニなどの虫がわく可能性も大。
集団生活下では蚊取り線香などにおいや煙がでるものは使いにくく、肌にスプレーする虫よけ剤が頼みの綱。

「蚊だけでなくダニなど様々な虫を避けられるスプレーもあるので試しておきましょう」

汚物・残飯の腐敗臭、体臭からのダメージは想像以上

「被災後に断水が続いている場合、大勢の人が使う避難所のトイレは、清掃が行き届かず、においもひどい状態で使えないことが多いです。そのため避難所で生活する場合も、自宅避難の場合も、災害トイレを使うことになり、汚物のにおい対策が要になります」と辻さん。

「トイレの回数は一人あたり1日8回が目安で、最低でも10日分は対策をしておくべき」。

災害トイレをたくさんストックできない場合はペットシーツとビニール袋、そして汚物を入れ保管する消臭袋で代用できると補足します。

また、断水下では体を洗うことができないため、夏の避難生活では、消臭スプレーやドライシャンプー、拭き取りシートが必須に。

「におい対策のスプレーなどは、平常時から取り入れて使い慣れておくといいでしょう。命が助かることがもちろん先決ですが、被災後も生活は続きます。水が使えない避難所のトイレはトラウマになるほどの場所もありますし、自分や家族の体臭もお風呂に入れないときのダメージは大。におい対策をしておくことでメンタル面も健康面でも負荷が大分変わるはずです」

ゴミ収集が来るまでにはかなり時間がかかり、それまでは同じ場所に保管しなければなりません。におい対策はマスト。

食べ終わった缶詰や食器も洗えないため、悪臭はもちろんハエやコバエの温床に。

夏でも、お風呂やシャワーに入ることは叶いません。
体臭対策は自分と、まわりの人のためにも大切です。

薄着や、女性らしい下着の着用は 性被害に遭う可能性が高まります

「限られた空間で多くの人が集団で生活することになる避難所では、年齢性別を問わず性被害を受けやすくなる」と辻さんは警鐘を鳴らします。

「まず、パニック状態になっている災害時には、暴力や性暴力が増えるということを知っておきましょう。そして、避難所で生活する場合、普段よりも服装に気を付けることが重要です。

暑いからといって肌の露出の高い恰好は控え、ピンクなど女性らしい色も避けましょう。ワンピースやスカートといった服装も在宅避難なら問題ないですが、襲われやすいので避難所ではおすすめしません」

被災地で実際に多くの被害例を見てきた辻さんは、「とにかくできるだけ刺激をしないこと」と話し、レースのブラジャーやショーツなどセクシーな下着は避け、ブラトップやボクサーパンツなどシンプルでメンズライクなインナーを着用することを推奨します。

「さらに避難所でトイレに行くとき、やむを得ず夜間に出歩く際は、必ず防災用の笛や防犯ブザーを携帯すること。そして、必ず二人以上で行動するように心がけましょう」

肌の露出の多いノースリーブ、ワンピースなど女性らしい印象の服装は避けて。

避難所で普段着用しているレースなどのブラジャーやショーツを干すのはご法度。

イラスト/植松しんこ 文/坂口みずき

大人のおしゃれ手帖2025年6月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

元記事で読む
の記事をもっとみる