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【芳根京子さんインタビュー】「公演中は“母のお弁当”が心の支えに」

  • 2025.6.6

名匠・小津安二郎監督をモデルに、彼を取り巻く個性豊かな女性たちとの関わりを描く舞台『先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~』。舞台への出演は6年ぶりとなる芳根京子さんが、稽古を控えた今の心境(取材は4月)や憧れの“大人世代の女性”について語ってくれました。

映像では経験できない時間を過ごしたい

6月に上演される『先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~』は、名匠・小津安二郎監督をモデルに、昭和の映画界を描いた舞台作品。芳根京子さんにとっては、6年ぶりの舞台出演です。
 
「前回の舞台『母と惑星について、および自転する女たちの記録』がとても濃密で、やり切ったという感覚が長く続いていたんです。でも2年くらい前から、また舞台に挑戦したいと思うようになって。正直、舞台というものに対して、自分が得意か不得意か理解しているわけではないんです。でも、チャレンジすることで、自分の経験値が上がることもよくわかっているので。素敵な作品の話をいただけたらまたやりたいな、と思っていたタイミングでこのお話をいただいて。6年前の舞台でも共演したキムラ緑子さんとご一緒できることもあって、安心して飛び込めそうだな、と出演を決めました」
 
描かれるのは、中井貴一さん演じる“先生”こと「小田監督」と、彼を取り巻く5人の女性たちとの関わり。芳根さんは、監督が娘のようにかわいがっている食堂の看板娘・幸子を演じます。
 
「幸子は明るくハキハキした女の子。ちょうど今、出演しているドラマ『波うららかに、めおと日和』も昭和のお話なので、『今年の上半期は令和にはいないわ』と思いながら(笑)、昭和という時代を目いっぱい楽しむ期間にしたいですね。稽古期間も含めて、きっと映像の作品とは違う時間をたくさん過ごせると思うので。今、私が脚本を読んで『こうなっていくのかな』と想像しているものが、どんなふうに裏切られるのか……。1か月、2か月経ったときの自分の心の変化も楽しみです。ちょっと話が飛んじゃうんですけど、今、南部鉄器にハマっていて(笑)。使っていくうちにどんどん色が変わっていく様子を楽しんでいるんですけど、きっと舞台もそういうことなんだろうなあって。今回の作品も、大切に育てていけたらいいですね」

本気で怒ってくれたマネージャーが“恩人”

父のいない幸子にとって、“先生”は父親代わりであり、いわば恩人。芳根さん自身にも、恩人と呼べる存在の人がいるそう。
 
「デビューから、7年間付いていてくれたマネージャーさんです。10代のときは大げんかもしたけど、自分が大人になるにつれて、怒るってすごくエネルギーを使うことだと気づいて。目をつぶったほうが楽な瞬間は多いのに、マネージャーさんは本気で怒ってくれたんです。時間が経ったいま、『あのときの言葉でやる気になったな』『人としてのベースを作ってもらえたな』『ちょっとやそっとじゃ負けないメンタルは、あのときに厳しく指導してもらえたからだな』とわかってきて。そんな人が、ひとりでも人生にいてくれるのはすごくありがたいことだと大人になって実感しています」
 
演出を手がけるのは、映像作品でも活躍する行定勲さんです。
 
「女性が美しく描かれている作品が多い印象なので、今作で5人の女性たちがどう描かれるのかも楽しみ。どうやって腑に落とせばいいんだろう……? と疑問を感じたら、モヤモヤが残らないようにたくさん質問したいです。そのためには作品以外の話もして、私のことを知ってもらうことが大切だと思っていて。私も監督について知ることで演出の意図を察しやすくなるでしょうから、なんでもない空き時間にも、積極的にお話したいです」

木村多江さんのような、素敵な大人になりたい

映像では座長を担うことも増えた芳根さんですが、今回の舞台では「先輩たちの背中をしっかり追いかけたい」と話す芳根さん。憧れの女性像を尋ねてみると、『大人のおしゃれ手帖』でもおなじみの木村多江さんの名前が。
 
「私は本当に多江さんのことが大好きで! ドラマでご一緒して以来、食事に行ったり、話を聞いていただいたりしていて、ちょうど昨日も連絡を取ったところです(笑)。多江さんはいつも『元気?』と聞いてくださって。私も多江さんのような女性になりたいです」
 
公演中は、体調管理も重要な課題。家族の力を借りることで、乗り切ろうと考えているそう。
 
「私は疲れると食事を後回しにしてしまうことが多くて。でも生のお芝居でたくさんの方に観ていただくには、きっといつもと違うエネルギーを使うことになる。いままであまり家族に頼ることはなかったんですけど、途中で潰れるわけにはいかないので。まわりの先輩からも『頼れるうちは頼りなよ』と言ってもらって、勇気を出して母に『助けてほしい』と言ったらすごく喜んでくれて。ちょっと恥ずかしいんですけど、お弁当を作ってもらったりして(笑)。高校生ぶりに母のお弁当を食べられるのが嬉しいし、舞台中も母が心の支えになるだろうと思っています」
 
前回の舞台は「楽しむ余裕がなかった」という芳根さんですが、今回は舞台の醍醐味を感じ、その後の糧にすることも目標に。
 
「さっき、(公演会場である)PARCO劇場へ入ってみて『ああ、ここに立つのね』と。まだポワポワした感覚ではあるんですけど、淡々と過ごすのではなく、その日その日に起きることをちゃんと受け止めていきたい。せっかく飛び込むからには、勇気を出していろんなことにトライしていきたいです。私は人見知りで、舞台挨拶ですらお客さんに対して人見知りになっちゃうくらいなんですけど(笑)、でも実際に舞台に立つからにはしっかり楽しみたいし、楽しんでもらいたいです」

PROFILE 芳根京子(よしね・きょうこ)

1997年生まれ、東京都出身。2013年、ドラマ『ラスト♡シンデレラ』で俳優デビュー。2016年、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』でヒロインに抜擢される。2018年、映画『累-かさね-』『散り椿』での演技が評価され、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の出演作に、映画『雪の花 ともに在りて』『カラオケ行こ!』『峠 最後のサムライ』、ドラマ『波うららかに、めおと日和』『まどか26歳、研修医やってます!』『Re:リベンジ-欲望の果てに-』など。

[舞台]パルコ・プロデュース2025 『先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~』

昭和30年代。テレビ時代を迎え、映画はその黄金期を終えつつあった。「先生」と呼ばれる日本映画界の名匠・小田昌二郎(中井貴一)は新作の撮影を始めたが調子が出ない。娘のように可愛がる食堂の看板娘・幸子(芳根京子)の婚約の報告を受け、さらに撮影を引き延ばす小田。脚本家の野崎(升毅)や名女優・谷葉子(柚希礼音)も心配顔だ。皆の前では粋な振る舞いをする小田だったが、「これが最後の1本になるかもしれない」という恐れが、関わりのあった女たちの幻を引き出す。元芸者・花江(キムラ緑子)、戦争未亡人・和美(土居志央梨)、銀座のホステス・千代(藤谷理子)。いつしか小田自身も記憶の中に 引きずり込まれて……。

作:鈴木聡
演出:行定勲
出演:中井貴一 / 芳根京子 柚希礼音 土居志央梨 藤谷理子 久保酎吉 松永玲子 山中崇史 永島敬三 坂本慶介 長友郁真 長村航希 湯川ひな / 升毅 キムラ緑子
日程:
2025年6月8日(日)~29日(日) 東京・PARCO劇場
2025年7月5日(土)~7日(月) 大阪・森ノ宮ピロティホール
2025年7月11日(金)・12日(土) 福岡・J:COM北九州芸術劇場 大ホール
2025年7月15日(火) 熊本・市民会館シアーズホーム 夢ホール
2025年7月19日(土)・20日(日) 愛知・東海市芸術劇場 大ホール

撮影/天日恵美子 スタイリング/杉本学子[WHITNEY] ヘアメイク/猪股真衣子[TRON] 取材・文/工藤花衣
芳根さん衣装:セットアップ¥28,600、インナー¥14,300/ともにアメリ(アメリ ヴィンテージ 03-6712-7965)、その他/スタイリスト私物

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

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