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初回放送から“NHKならでは”のクオリティ!映画・アニメ・BSドラマ…“大人気シリーズ”の地上波放送が話題【ドラマ10】

  • 2025.6.24

NHKドラマ10『舟を編む ~私、辞書つくります~』が、また一つ、“地味だけど心に残る名作”の扉を開いた。第1話の舞台は、大手出版社のファッション誌編集部。しかし、ヒロイン・岸辺みどり(池田エライザ)は、突如として辞書編集部へ異動させられる。そこにいたのは、「なんて」という言葉ひとつに執拗に反応する、謎めいた男・馬締光也(野田洋次郎)だった。

RADWIMPS・野田が演じる“地味だがリアルな”男

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ドラマ10『舟を編む ~私、辞書つくります~』第1話 6月17日放送(C)NHK

かつて三浦しをんの小説をもとに映画化・アニメ化・BSドラマも制作され、今回地上波放送が決定した『舟を編む』。それぞれの版で異なる魅力があったが、ドラマは、みどりの視点から描かれる新たな物語。みどりが辞書編集という未知の世界に戸惑いながらも、少しずつ言葉の奥深さに魅せられていく姿が、静かに、しかし力強く描かれる。

第1話では、「ヤバい」という言葉の使い方が象徴的なシーンとして登場する。文脈やイントネーションによって意味がまったく変わるこの言葉に、辞書としてどう定義を与えるか? それはまさに、言葉の生き物としての一面を体現していた。

みどりもまた、自分が使っていた「なんて」という口癖のなかに思わぬ意味を発見し、「たかが言葉、されど言葉」というテーマが浮かび上がる。

注目すべきは、RADWIMPSの野田洋次郎が演じる馬締の存在感だ。映画『キネマの神様』や『トイレのピエタ』でも印象的な演技を見せてきた野田だが、本作では「間」の使い方や微細な表情の変化を駆使し、馬締というキャラクターをまさに“実在する人間”として立ち上げている

演技経験は決して豊富とは言えないが、そのぶん、つくられすぎていないリアルな質感がある。辞書に目を輝かせる姿、会話における沈黙の取り方、そして少しずつ距離を詰めていくみどりへのまなざし。それらが、彼の身体表現によって雄弁に語られていた。SNS上でも彼の演技は「役柄にピッタリ!」「こういう演者さんは貴重」と評判だ。

言葉が持つ可能性に気づくドラマ

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ドラマ10『舟を編む ~私、辞書つくります~』第1話 6月17日放送(C)NHK

また、NHKならではのクオリティの高さも際立つ。照明、セット、空気感の演出すべてに“丁寧さ”が宿っており、“辞書”というモチーフの静けさや重厚感と相まって、視覚的にも上質なドラマ体験となっている。

この第1話を観終えて感じるのは、決して言葉の大切さだけではない。SNSで手軽に言葉を放てる時代にあって、「その言葉、本当に伝わってる?」「言葉の使い方、合ってる?」と、やさしく問いかけてくるような作品なのだ。

人を笑わせる言葉、人を傷つける言葉、人を奮い立たせる言葉。『舟を編む』は、言葉の持つ可能性をあらためて見つめ直すことを促してくれる。

今後、辞書「大渡海」が完成していく過程で、みどりと馬締の関係性にも変化が訪れるだろう。言葉の“意味”を定義する仕事に向き合うふたりが、どんな言葉で互いを理解し、寄り添っていくのか。次回以降も楽しみに待ちたい。


NHK ドラマ10『舟を編む ~私、辞書つくります~』毎週火曜よる10時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_