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新“NHK夜ドラ”「お父さんの若いころを思い出す」主人公の“無邪気で親しみやすさ”に見せる面影『あおぞらビール』

  • 2025.6.23

仕事に追われ、スマホに縛られた日常を送る現代人にとって「自然のなかで、ビール片手に過ごす時間」は一種の理想だ。そんな願望をドラマとして叶えてくれるのが、NHK 夜ドラ『あおぞらビール』。初回から、川・キャンプ・グルメを三拍子そろえた"青春野遊びドラマ"が始動した。

自由人・森川の生き方にワクワク

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夜ドラ『あおぞらビール』第1週(C)NHK

物語の主役は、“Fラン大学”文学部に通う自由人・森川行男(窪塚愛流)。「人生の豊かさは、青空の下でビールを飲んだ回数で決まる」が信条のアウトドア青年だ。そんな彼が、就職活動に行き詰まった同級生・八木(藤岡真威人)を巻き込み、「ゴムボートで川を下る」という大胆な旅を提案する。

この無鉄砲なアイディアが意外にも説得力をもって描かれているのは、森川の“言葉の力”と、窪塚愛流の瑞々しい演技によるものだ。自由すぎるように見えて、彼の言葉には人生の本質に迫るような鋭さがある。

若者特有の不安と希望、そのはざまで一歩踏み出そうとする姿は、思わず応援したくなる。

五感に訴える“キャンプ描写”のリアル

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夜ドラ『あおぞらビール』第1週(C)NHK

ドラマのもう一つの主役は“自然”そのものだ。第1話では素手で捕まえたサワガニを油で揚げるシーンがあり、第2話では、手作りのトマトサルサとトルティーヤでタコスを楽しむ。料理の音や香りまで伝わってきそうな臨場感がある映像だ。

こうした丁寧な描写が、視聴者の五感に訴えかける。キャンプ初心者でも「やってみたい」と思わせるリアリティと、見ているだけで癒される映像美は、大人気のドラマシリーズ『ゆるキャン△』も彷彿とさせる“癒し×飯テロ”ドラマとしても注目されるべきだ。

主演の窪塚愛流はもちろん、藤岡真威人、南出凌嘉、豊嶋花といった若手キャストの演技にも勢いがある。とくに窪塚は、父・窪塚洋介譲りのオーラと所作の美しさを感じさせながら、どこか無邪気で親しみやすい森川像を作り上げた。SNS上でも「お父さんの若いころを思い出す!」と声が挙がっている。

一方、藤岡真威人が演じる八木の“不器用さ”も、現代の若者のリアルを映し出す。夢も正解も見つからないなかで、自然と向き合いながら何かを掴もうともがく彼らの姿が、どこか自分自身の過去と重なる人も多いのではないだろうか。

「就活」も「将来」も、ビール片手に語れば怖くない?

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夜ドラ『あおぞらビール』第1週(C)NHK

物語は“アウトドア珍道中”の様相を呈しながら進む。くせ者揃いの登場人物たち、ミステリアスなソロキャンパー(佐藤江梨子)、おしゃれキャンプ自慢のマウント女子が、主人公たちの旅に刺激を与えていく。予期せぬハプニングや心温まる出会いが、彼らの成長のスパイスになっていく。

今後も各話でどんな出会いが待っているのか、どんな自然の恵みを味わうのか、そのワクワクが視聴者の週末を彩ってくれそうだ。『あおぞらビール』は、「就活」や「進路」など、現代の若者が直面するリアルな悩みにも正面から向き合う。一方で、それを深刻になりすぎず、自然のなかで仲間と語らいながら乗り越えていく。そんな前向きなメッセージが、爽やかな空気とともに届いてくる。

この夏、「何かをやり遂げたい」「何者かになりたい」と思うすべての若者にとって、このドラマは心強い“道しるべ”になるかもしれない。


NHK 夜ドラ『あおぞらビール』毎週月~木 よる10時45分~11時00分
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_