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“異例のラスト”を飾った月9ドラマ、11年ぶりに復活した“大人気シリーズ”「悪くない」最終回に相次ぐ共感の声

  • 2025.6.24

11年ぶりの復活を果たした月9『続・続・最後から二番目の恋』が最終回を迎えた。小泉今日子演じる吉野千明と、中井貴一演じる長倉和平。恋人でも夫婦でもない“隣人”という関係性を続けてきたふたりがたどり着いた結論は、決して劇的ではない。むしろ、しみじみと「このままでいいですか」と確かめ合うような、静かで優しいものであった。しかしその穏やかさこそが、視聴者の胸を大きく打った。SNSでは「歳を重ねるのも悪くない」「この時間が愛おしかった」といった声が相次ぎ、“恋愛の完成形”とも称されたラストに多くの共感が寄せられている。

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(C)SANKEI

言葉にならない感情を“呼吸”で演じるふたり

本作がここまで愛された理由のひとつに、主演二人の演技力があることは間違いないだろう。中井貴一と小泉今日子。ともに年齢を重ね、言葉にしなくても伝わる感情のディテールを丁寧に演じることができる俳優だ。

最終話、カフェ・ナガクラのテラスで交わされた会話が印象的に響く。和平が「起きたときに、すっぴんのあなたがいる暮らしがしたい」と語るシーンは、その声のトーン、目線、間の取り方ひとつひとつが極めて繊細で、「演技」というより“本当にそこにいる人”のようだった。

一方の小泉今日子も、「でもちょっと怖いんですよ……あなたと暮らしたら素敵だなって。ちゃんと大好きです。でも、誰かを失うのは怖い」と照れながら語る。笑顔の奥にある揺れる気持ち。若さではなく、経験からくる誠実な感情の吐露。そのありのままの姿が、観る者の心に響く。

千明と和平が体現するのは、恋愛というより“愛着”や“信頼”のような感情かもしれない。ともに年齢を重ねたからこそわかる、「誰かの隣にいること」の価値。それを表現できる俳優が、この二人で本当によかったと感じる。

結婚ではなく“同じ時間を生きていく”という選択

千明の「このままでいいですか?」という問いに、和平が「じゃあ約束しましょう。シラフの約束」と返す場面は、恋愛ドラマとしては異例のラストかもしれない。

結婚という制度に頼らなくても、ともに暮らすことで生まれる安心感や喜びは確かにある。そのことを、二人は言葉少なに証明してくれた。指切りを交わし「まずは一緒に旅行から始めよう」と笑い合う二人の姿には、これからの未来を柔らかく肯定していく力があった。

恋でも結婚でもない、「隣にいること」が愛である。このドラマが積み重ねてきたテーマが、ここにひとつの答えとして提示されたように思う。

最終回では、千明と和平のラブストーリーだけでなく、周囲の人物たちの人生も丁寧に描かれていた。なかでも印象的だったのは、成瀬(三浦友和)の「あなたみたいな良い女が独身だと、目に毒なんですよ」という言葉だ。

“独身=寂しい”という偏見に対して、独身という選択を前向きに、魅力的なものとして差し出してくれたこのセリフは、多くの視聴者に勇気を与えたのではないだろうか。恋愛が“若者のもの”だけではないことを、明快に示す一言でもあった。

また、千明の友人である荒木啓子(森口博子)と水野祥子(渡辺真起子)の会話では、年齢を重ねた独り身の女性が直面する現実、たとえば「高齢だと賃貸物件を借りにくい」といった問題まで触れられた。

最終的に、「もし困ったら千明の家に一緒に住もう」と語り合うシーンは、血縁でも恋人でもない、“助け合いながら生きる”という新しい共同体のかたちを提案していたように思える。

鎌倉の時間を生きた人々へ、あたたかなフィナーレ

千明と和平を中心に、長倉家の兄弟たち、娘のえりな、友人たち、カフェの常連客に至るまで、多くのキャラクターがこの物語のなかで年月を重ねてきた。

それぞれが仕事や恋に悩みながらも、少しずつ前に進んでいく姿に、視聴者は「自分の人生の隣にあった物語」として寄り添ってきた。鎌倉という土地が生み出すあたたかさ、そして“そこに帰ってくればいつでも誰かがいてくれる”という空気が、このドラマの本質だったのではないだろうか。

最終回はまさに、“続編”ではなく“人生の一部”として完結した印象がある。誰かの人生にとって「このままでいい」と思える瞬間が、どれほど愛おしいものか。それを見せてくれた、最高のラストだった。

きっと、彼らにはまた会える気がする。鎌倉のテラスで、きっとあの二人は、朝ならコーヒーを、夜ならお酒を酌み交わしているに違いない。


ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_