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料理家・山脇りこさん「ひとり旅」のすすめ

  • 2025.6.2

子どもから手が離れるなど、ライフステージの変わり目が訪れる50代。
そろそろ〝私が主役〟になって、自分のしたいことに目を向けてみてもいいのでは?
自分の新たな可能性、フィールドに、一歩踏み出すチャンスです。

今回お話を伺ったのは・・・
料理家
山脇りこさん
料理家・エッセイスト。「きょうの料理」(NHK)をはじめ、テレビやラジオ、雑誌などで活躍中。

旅のエッセイ『50歳からのごきげんひとり旅』(大和書房)がベストセラーに。

50から再び始めた気ままなひとり旅

年に数回、国内外を旅するのが趣味で、ひとり旅の始め方や楽しみ方を綴ったエッセイ本が話題になった料理家の山脇りこさん。
 
ひとりで旅するようになったきっかけは、49歳のときに誘われた台湾のグループ旅でした。
 
「当時、忙しくしていて、下調べもせずついて行くだけで。たまたまひとりでホテルに戻ることになった際、一緒にいた友人に〝大丈夫?〟と真顔で聞かれたんです。
 
なんだかいつの間にか〝頼りない人〟と思われていることに、戸惑ってしまって(笑)」20
代の頃はひとりで海外へ行っていたこともあったけれど、結婚してからは家族や友人がほとんど一緒。それが楽ちんに感じていたそう。
 
「でも、さまざまなことを経験し、気持ちに余裕が出てきた今だからこそ、またひとりで旅してみたい! という思いが湧き上がってきたんですよね」
 
50代を迎え、まず始めたのが家族と予定を合わせて行く旅先に、ひと足先に訪れてみること。
 
「前乗りすることで、だれにも気がねなく興味のある場所に行けますし、あとから夫が来ると思えば安心して過ごせました」
 
さらに国内の初ひとり旅は、仕事や旅で行き慣れた京都へ。
 
「何度も訪れたことがあるのに、夕食のお店にひとりで入る勇気が出なくて、建物の前を行ったり来たり。結局、デパ地下で買ってホテルで食べたのも今ではいい思い出です(笑)。でも翌朝、ホテルから清水寺までランニングをしたら、それがとても気持ちよくて。昼間とは違う街の雰囲気に出合えるので、今では旅のルーティンになっています」

ポイント1. ひとりだからこそ、気分が上がるスタイルで

以前は帰りも身軽でいるために、もうすぐ捨てる予定の服や靴で出かけ、帰りに処分していました。でもこれだと気分が下がる一方。
気持ちが明るくなるものを着ています。

ポイント2. 荷物はなるべく少なく。扱いやすい斜めがけバッグもおすすめ

何泊であっても、ひとりで持って階段を上れるくらいのコンパクトさが大事。
ロンシャンの斜めがけバッグは側面のファスナーを開けると縦幅が広がるので荷物が増えたときに便利。

ポイント3. 足もとは歩きやすくて、お気に入りのものを

足もとは大事! 私自身靴が大好きなので、そのときいちばん気に入っていて、歩きやすいものを選んでいます。
こんなショートブーツやフラットなサンダルもよく履いています。

ポイント4. 初めてのひとり旅におすすめなのは慣れた場所

家族や友人と、また仕事で行ったことのある場所は安心感大。
ひとりで訪れてみると、街の違う表情が見つかります。県庁所在地や公共交通機関で回れるところも◎。

気兼ねなく旅することで晴れやかな自分に

「いろいろ自由に旅しているけど、じつはかなりの〝ビビり〟なんです」と山脇さん。
 
海外に行く際は、旅慣れた今でも必ず何かあったときのために、靴底に20ドル札を入れているのだとか。
 
「案外人見知りな性格で、ひとりでごはんを食べるのは未だに苦手。現地で人とささやかな情報交換をすることはあるけれど、積極的にコミュニケーションをとるわけでもありません。でもそれでいいと思っています。
気苦労から解放されたいし、ひとりにどっぷり浸り、滞在先で原稿を書くこともあります。見知らぬ場所で考えを巡らせたりする時間を楽しんでいます」
 
さらに、単独の旅を続ける理由を聞くと、いつでも〝ごきげん〟でいるためという回答が。
 
「私はこれまで、どこかで家族にはきげんが悪い自分を見せても許してもらえると思っていたんです。けっして人には見せない姿も、そのままぶつけてしまったり。
でもこれから先の人生をずっと一緒に過ごす大事な人だからこそ、きげんよく接したいと思うようになりました。だからいつでも朗らかでいるために、自分とゆっくり向き合う時間も必要。そのために、軽やかな気持ちで、気ままに旅することを続けていきたいと思っています」

山脇さん的ひとり旅のルール

① 気ままに歩く
行きたい場所や店を飛び回るように巡るのではなく、その間を歩いて移動しています。気の向くままに歩き、街の暮らしをのぞかせてもらっている感覚で楽しんでいます。

② 公共の交通機関で動ける場所
誰かと相談したり、譲り合ったりすることなく、自由に寄り道をしながら歩くのも醍醐味。レンタカーがないと難しそうなところは行かず、バスか電車、地下鉄を頻繁に利用します。

③ 疲れたら早めに休む
張り切りすぎて旅先で具合が悪くなるのは避けたいので、旅中はこまめに休憩をとるようにしています。カフェでも公園でもどこでもOKなので、パッと入って、ひと息つきます。

④ 無理な冒険はしない
大人でもひとり旅は用心深く、無理は禁物。予測不能なハプニング旅は求めず、特に海外では公共交通機関で行きにくいところは無理をして行かないのが賢明。夜も出歩きません。

⑤ へこまない、怒らない
せっかくの旅をより楽しくしたいので、ポジティブに過ごすように意識しています。たとえば、旅先で雨が降ったら、あいにくとは思わず、雨の日の素敵なポイントを探します。

山脇さんの旅の楽しみ方

思いつくまま歩いて、旅先の街を暮らすように過ごしている山脇さん。
ごきげんに旅をするために欠かせないものや習慣を伺いました。

旅先で朝ランニングを楽しんでいます

旅先での朝ランはすっかり習慣に。そこに暮らしている人やものを早送りで見られるのが良いところ。

ラン用ではなく街歩きもできるスニーカー、ナイロンパーカー、小さめボディバッグがあると快適。

2日目、同じ服でも印象を変えられるアイテムを

荷物が増えないよう、洋服は最小限にしています。
そのぶん、同じ服を着ていても雰囲気を変えたり、訪れる場所に合わせてサッと首もとにスカーフを巻いたり、付け襟をプラス。

訪れる場所が舞台になった本を携えて読んでいます

旅のおともに本は必須。
訪れる土地の歴史や暮らしなどが書かれているものを選びます。『銀河鉄道の夜』に出てくる岩手を訪れたりと、小説の舞台になっているところに行くのも楽しみに。

旅先にあると便利なグッズをポーチにひとまとめ

イヤホンはbluetoothと有線のものを持っていき、どこでも使えるようにしています。
快適に過ごすためにサングラスやアイマスクのほかに、IKEAで購入した携帯スタンドもあると便利。

旅先で家族や友人に絵葉書を書く時間を

旅先で絵葉書を購入し、ひとこと添えて同じ家に住む家族や友人に送ることで、ちょっとしたお土産に。ときには自分宛に向けて投函。
帰る頃には届いていて、見ながら思い返す時間も好き。


撮影/中島千絵美 文/佐久間千絵
 
大人のおしゃれ手帖2025年5月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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