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“約7年”の時を経てそれぞれが主演級に… 名作青春映画のドラマ化に寄せられる“期待と覚悟”

  • 2025.6.23
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(C)SANKEI

當真あみが主演を務めるドラマ『ちはやふる-めぐり-』が、7月9日よりスタートする。広瀬すず主演の映画『ちはやふる』から10年後の世界を描く本作は、映画からキャストを一新。令和の高校生たちがバトンを受け継ぎ、青春を懸けて競技かるたに挑むオリジナルストーリーを『ちはやふる』の原作者・末次由紀と共に紡いでいく。

10年の時を繋ぐ役割にあるのが、映画版から続投となる上白石萌音。梅園高校の非常勤講師でかるた部顧問の大江奏(上白石萌音)との出会いをきっかけにして、主人公・藍沢めぐる(當真あみ)は競技かるたの魅力に目覚め、仲間とともに成長していくこととなる。

青春映画の傑作、広瀬すずの代表作に数えられる『ちはやふる』

2016年に『ちはやふる-上の句-』『-下の句-』、2018年に完結編『-結び-』の三部作で公開された映画『ちはやふる』は、日本の青春映画の傑作の一つに数えられる。かるたは、平安時代などの和歌を集めた「百人一首」を基にした競技として、日本の伝統文化に近いところにありながら、一般的にはあまり深く知られていない。それを初心者にも分かりやすく、情熱的に、そして美麗に描いたのが本作だった。

ほとばしる情熱だけでなく、音を超えた刹那も、千年先の永遠も、ミクロとマクロの視点でうまく表現したのが、筆者が『ちはやふる』を称賛したいポイントの一つ。それが原作から、ある種解き放たれたと言っていい『-結び-』で集大成的に描かれていたのも、本作が優れた作品とされる所以だろう。

中でも見応えがあるのが、全国大会のシーンだ。綾瀬千早(広瀬すず)は『-上の句-』で北央学園の須藤暁人(清水尋也)、『-下の句-』で“クイーン”こと若宮詩暢(松岡茉優)、『-結び-』で藤岡東高校の我妻伊織(清原果耶)と対決をする。劇中には「個人戦こそが団体戦」という原田秀雄(國村隼)のセリフが何度も登場するが、離れていてもチームとして気持ちが繋がっているということが、千早を軸に『-下の句-』では綿谷新(真剣佑)、『-結び-』では真島太一(野村周平)との関係性から表されている。

『ちはやふる』は、端的に言えば高校生達の友情・恋愛・成長を描いた作品だが、それを情熱を懸ける競技かるたに昇華させた表現の仕方がとにかくうまい。試合後は全カロリーを消費して白目をひんむく広瀬すずのコメディ演技も印象的ではあるが、全神経を集中させてその一瞬、刹那を生きる千早としてのダイナミックな姿は、今でも広瀬すずの代表作の一つとして語られている。

ドラマ『ちはやふる-めぐり-』は、後進に希望を与えるバトンリレー

だからこそ、ドラマ『ちはやふる-めぐり-』にかかる期待のハードル、プレッシャーは計り知れない。『-めぐり-』には主演の當真をはじめ、現在朝ドラ『あんぱん』に出演中の原菜乃華、映画『カラオケ行こ!』の齋藤潤、ドラマ『柚木さんちの四兄弟。』の藤原大祐といった“これから”の世代が並んでいる。『-結び-』の新キャストとして登場した清原果耶や佐野勇斗を含め、映画完結から約7年でそれぞれのキャスト陣は、主役を張るほどの成長を遂げており、『-めぐり-』からは“次の10年”を思った配役でもあることを感じさせる。

『-結び-』には「後進には希望を」というセリフがあり、こうしてバトンが繋がれることは作品のメッセージ性とリンクしている、意義深いことでもあるように思える。さらに言えば、『-結び-』のラストには瑞沢高校の顧問を担当する千早の“未来”が描かれていた。『-めぐり-』はそれとは異なる世界線、もしくはそれ以降の未来になると思われるが、奏だけでなく千早や太一の登場も期待してしまうのは仕方のないことだろう。

ただ、放送に先駆けて公開されているティザー映像を見て、そんな邪な期待は勢いよく弾かれていった。そこにあるのは、煌めくほどの青春とほとばしる情熱。10年先、1000年先へと届く物語が今、幕を開ける。


ライター:渡辺彰浩
1988年生まれ。福島県出身。リアルサウンド編集部を経て独立。荒木飛呂彦、藤井健太郎、乃木坂46など多岐にわたるインタビューを担当。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、ドラマ『岸辺露伴は動かない』展、『LIVE AZUMA』ではオフィシャルライターを務める。