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朝ドラで“期待されていた人物”がついに登場…!視聴者から歓喜の声続出「待ってました!」

  • 2025.5.2
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『あんぱん』第5週(C)NHK

「人生は喜ばせごっこ」と題された『あんぱん』第5週。そのタイトル通り、誰かを喜ばせたいというやさしさと、現実とのギャップに揺れる人々の姿が描かれた。SNSでは、嵩(北村匠海)の再受験のくだりに多くの反応が寄せられ、辛島健太郎役で登場した高橋文哉に対し「待ってました!」「かわいかったなぁ……あれはずるいよ」「思いもよらんかった」の声が多数。だが、その興奮の一方で描かれていたのは、家のために恋を諦めようとする姉・蘭子(河合優実)の苦悩、そして“お国のために”という言葉にどうしても馴染めない主人公・のぶ(今田美桜)の葛藤だった。優しさだけでは乗り越えられない時代がやってくるなかで、それでも「やさしさを手放さない人たち」の姿が、あんぱんのように静かに、心に染みた週でもあった。

“カレーパンマン”の登場? 嵩と辛島の友情とすれ違い

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『あんぱん』第5週(C)NHK

第5週、ついに登場した辛島健太郎(高橋文哉)。その名前とキャラクターから、本作のモデル・やなせたかしの作品『アンパンマン』に登場する“カレーパンマン”を連想した人も多かっただろう。

実際、嵩(北村匠海)との関係性も、“アンパンマンとカレーパンマン”のような絶妙な距離感で描かれる。異なる個性を持ちながらも惹かれ合い、互いを必要とする関係。まさに親友の始まりのようだった。だからこそ、辛島が受験に失敗し、嵩だけが合格する展開は少し切ない。

物語は一筋縄ではいかない。嵩と辛島はすれ違いながらも、これからの人生のどこかで支え合い続ける存在になるのかもしれない。そんな余白を残す描き方に、今後を期待させられる。

選ぶ自由のない時代で、それでも迷う人々

この週は、それぞれのキャラクターが“岐路”に立たされる展開が多かった。

まず印象的だったのは、次女・蘭子(河合優実)の葛藤だ。心惹かれているのは石工の原豪(細田佳央太)だが、朝田家に舞い込んだ縁談相手は資産家の御曹司。家のためを思えば、そちらを選ぶべきだとわかっている。けれど、簡単に心は割り切れない。

その揺らぎこそが人間らしさであり、蘭子という人物の魅力を際立たせている。

そして、のぶ(今田美桜)の戦いもまた苦しい。女子師範学校での厳しい教育にのまれそうになりながらも、「お国のため」という言葉にどうしても違和感を抱くのぶ。黒井先生(瀧内公美)からは「覚悟がない者は去りなさい」と繰り返し叱責される。

同じく師範学校に通う幼なじみのうさ子(志田彩良)は、徐々に“国家の理想の女性像”に順応しつつある。対照的なのぶは、時代の波に飲み込まれずに立ち止まっている。

流れに乗れない人間の姿。だが、それこそが、のぶという人物の芯の強さを示す予兆でもあるように思えた。

あんぱんがつなぐ記憶

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『あんぱん』第5週(C)NHK

第5週のラスト、嵩が東京土産としてのぶに手渡したのが、美村屋のあんぱんだった。

あれは、かつて嵩が亡き父とともに食べた思い出の味。何気ない東京土産のようでいて、その小さな一個には、嵩の“ありがとう”や“ちゃんとやりきったよ”という想いが込められていた。

そして、それを家族と分け合って食べるという行為そのものが、「思い出を分かち合い、つなぎ直す」儀式のようにも見えた。物語のタイトル『あんぱん』に込められている“やさしさ”の本質が、この一瞬にだけ、ふわっと現れたのかもしれない。

このドラマがどこまで厳しい時代を描こうとも、根底にあるのは「やさしさを諦めない物語」なのだと、あんぱんを頬張る彼らの表情が教えてくれた。

一方で、時代は確実に動き始めている。

次週の予告では、日中戦争の勃発とともに、原豪が出征することが明かされた。蘭子が彼に向かって「絶対にもんてきてよ(戻ってきてよ)」と叫ぶシーンは、すでに涙腺を刺激してくる。

このまま史実に近い展開がなされるなら、嵩の弟・千尋(中沢元紀)にも悲しい運命が待っているかもしれない。“あんぱん”の記憶が、またひとつ、家族の手を離れていくのかもしれない。

だからこそ、第5週で描かれた“やさしさの記憶”は、大きな意味を持つ。それは、いつか誰かが失われたとき、残された者を支える力になるのだ。

それぞれが悩みながらも、誰かのために手を差し出そうとする『あんぱん』の登場人物たち。誰も完璧じゃない。ときには傷つけ合い、失敗し、それでも一緒にあんぱんを食べるように、また笑い合おうとする。

第6週からは、時代の暗さが色濃くなることは間違いない。だが、それでもこの物語が伝え続ける「やさしさの記憶」が、視聴者の心の奥にそっと灯り続けることを願ってやまない。


NHK 連続テレビ小説『あんぱん』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_