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“圧巻の演技”に視聴者震撼…名俳優だからこそ成立した哀しきドラマに「こんな役ができる俳優、他にいない」

  • 2025.5.1
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(C)AbemaTV,Inc.

冷酷な殺人鬼として描かれてきた神城真人(成宮寛貴)。これまで、彼がなぜここまで残酷な行動に出るのか、その背景は謎に包まれていた。しかし『死ぬほど愛して』第5話でついに明かされる。"神城真人"の正体は、本物の真人ではなく、まったくの別人だったのだ。SNS上では「ここまで悲しい過去だったとは」「ただの悪役じゃない」といった声が続出。生き延びるために、顔も名前も変え、命すら奪って生きた男。5話は、その切なすぎる「始まり」を描いた回だった。

生き延びるために“他人”になった男

1995年、阪神淡路大震災。幼い俊紀は両親を亡くし、妹と離れ離れに。孤独な施設生活を送るなかで、やがてオレオレ詐欺に手を染めるようになる。

そんな俊紀の前に現れたのは、施設で共に育ったかつての仲間、本物の神城真人だった。パチンコの大当たりで3000万円を得た真人を前に、俊紀は一線を越えてしまう。酒を飲ませ、眠らせ、事故に見せかけて火を放ち、「俺がお前の代わりに生きる」と誓った俊紀は、自らの顔を整形し、神城真人として生きる決意を固める。

それは、単なる金銭目的ではない。生き延びるために自分を捨てるという、哀しい覚悟だったのだ。

俊紀が金を求め続けた理由。それはおそらく、意識不明の妹を救うためだった。岩手で苦しい生活を強いられていた妹は、悪い男に捕まり、夜の仕事に身を落としてしまった。

救いたい。再び家族になりたい。その一心で俊紀は、他者を騙し、奪い、ときに命を奪う道を選んだ。しかし気づかぬうちに、救うための手段が、俊紀自身を壊していったのだろう。ホストとして働くなかでも、先輩ホストのトラブルで暴力に走り、人を傷つけることを厭わない自分に気づく。最初は妹のためだったはずなのに、次第に"生き延びるために人を傷つける"行為が、俊紀の日常になっていく。

彼は自分を守るために、人間らしさを手放してしまったのだ。

取り返しのつかない裏切り

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(C)AbemaTV,Inc.

俊紀=真人の人生において、唯一の救いとなりうる存在がいた。それが、南沢夕陽(久間田琳加)の叔母・彩(青山倫子)だ。

ホスト時代、暴走して取り返しのつかなくなった俊紀を助け出し、彼に「教養を持て」「良い男になりなさい」と語りかけた女性。その後、図書館で本を読む俊紀のシーンがあることから、彼は彩の言葉を真剣に受け止め、必死に「人間らしさ」を取り戻そうと努力した様子が伝わってくる。

しかし、その彩すら、俊紀は手にかけてしまったということか。恩人を殺すという禁忌、これは単なる金目当てには思えない。俊紀にとって、もはや「人間らしい感情を持つこと自体」が、耐えられない痛みになっていたのかもしれない。

救いを求めながら、救いを壊してしまう。彼の生き様は、哀しみそのものだ。

止まらない堕落のはじまり

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(C)AbemaTV,Inc.

「妹を救いたい」「生き延びたい」俊紀がそう願う気持ちは、偽りのない本物だったのだろう。しかし、俊紀は自身でも気づかないうちに、本当に大切なものを見失い、感情を逸してしまったように思える。人を信じ、愛する心。人として守るべき一線……そういったものすべてを、失ってしまったような。

成宮寛貴は、この「壊れていく俊紀」を絶妙なグラデーションで演じ切っている。SNS上でも「やっぱり成宮はすごい」「こんな役ができる俳優、他にいない」と絶賛の声が相次いだ。

5話は、俊紀=真人の「終わりの始まり」を描いた回だった。ここから彼は、果たしてどこへ向かうのか。どこへ行けるのか。"心を失った男が、どこへたどり着くのか"を見届ける物語でもある『死ぬほど愛して』。本編のセリフにもあるように、視聴者は俊紀=真人が「何をしたいのか」ともに見失いかけているのかもしれない。


ABEMA『死ぬほど愛して』
[放送日時]3月27日(木)夜11時より ABEMAで配信開始
[出演者]成宮寛貴、瀧本美織ほか
[番組トップページ]https://abema.tv/video/title/90-2024

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_