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最高視聴数を記録した“NHK夜ドラマ” 朝ドラでも見せなかった“新たな一面”を披露した名女優にも注目 

  • 2025.5.1
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『しあわせは食べて寝て待て』第3話より(C)NHK

桜井ユキが主演を務めるドラマ『しあわせは食べて寝て待て』が好評を得ている。第1話のNHKプラスにおける同時または見逃し配信での視聴数が、それまで最多だった『正直不動産2』を超えて、最高視聴数となったのがその裏付けにあるが、それ以上に視聴者一人ひとりに深く刺さっているのが一番の理由と言えるだろう。

原作者の水凪トリも認めるキャラクター解釈

“一生付き合わなくてはならない”病気の膠原病になってしまった麦巻さとこ(桜井ユキ)が、団地の人々との出会いや触れ合いによって、少しずつ人生が変化していく。食事で体調を整える薬膳との出会いがメインにありながら、自分ではどうにもできない状況をもちこたえる能力を指す「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉が紹介されたりと、忙しない日々で生まれた疲れをぽかぽかと身体の芯から癒してくれるような時間を届けてくれている。

SNSを見ていて、誰よりもドラマを楽しんでいるのが、原作者の水凪トリ。「俳優さんや制作陣の原作、キャラクターの解釈が素晴らしかったこと、これが今回皆様に楽しんで頂けるドラマに繋がったのだと思います。心から感謝いたします」とポストしているのはドラマへの最大の賛辞と捉えられる。

桜井と言えば、朝ドラ『虎に翼』で演じた“涼子様”こと華族の令嬢・桜川涼子で広く世間に認知されていった。その高貴で麗しいイメージは、桜井自身への印象としてもクールビューティーとして直結しているのがおそらくパブリックイメージと言っていいだろう。筆者もその一人だった。けれど、俳優というのはその役を演じているわけで、一面でないのは当然のこと。さとこを演じている桜井の自然で柔らかな笑顔、朝のどうにも起き上がることができない気だるさの芝居は、決して『虎に翼』では見られなかった表情や姿で、その演じ分けに惚れ惚れする。桜井がゲストに出演した『土スタ』にて、美山鈴として共演中の加賀まりこが「抑えた芝居が絶妙」と話していて、それが腑に落ちたのだった。同じくVTRで登場した土居志央梨は、桜井が「ギャップの権化」だと明かし、撮影裏では「ちょっと少年みたい」「アニメとか漫画の話をすっごい楽しそうにお話しされたりとか」と意外な素顔を話している。

桜井ユキと土居志央梨は『虎に翼』を通じて相思相愛の仲に

そんな土居も、『虎に翼』での“よねさん”こと山田よね役で俳優として大きく飛躍した一人だった。土居が今回演じているのは、団地に越してきたフリーのイラストレーター・高麗なつき。一見すると大人の快活な女性だが、仕事に関しては他人の評価が気になり、比較しては落ち込みやすいという、視聴者が共感しやすい身近なキャラクターだ。さとこと高麗は同じにおいをお互いに感じ、徐々に距離を近づけていく。

桜井と土居は『虎に翼』放送後としては今回が久々となる再共演で、公式サイトに対談が前後編で公開されるほどに、相思相愛の仲となっている。出会いはコンビニで目当ての蕎麦に同じタイミングで手を伸ばすというシーンだが、2人の距離感が近すぎると監督から指導があったというのだから相当だ。

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『しあわせは食べて寝て待て』第3話より(C)NHK

実は、朝ドラでのコンビはもう一つあり、さとこに「ネガティブ・ケイパビリティ」というワードを伝えた青葉乙女を演じる田畑智子と先述した加賀は、2000年放送の朝ドラ『私の青空』でヒロインとその母を演じている。25年前の母娘は、4月8日放送の『あさイチ』にて再共演。加賀がそのことについて触れていたが、『しあわせは食べて寝て待て』ではさとこを介した少し遠い役どころではあるが、どうだろうか。

全9話で放送となる『しあわせは食べて寝て待て』。少し気が早いかもしれないが、『正直不動産』のようにシーズン2が放送されるのはほぼ確定とも言える、人気シリーズになっていくのは確実だ。


ドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』 毎週火曜よる10時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:渡辺彰浩
1988年生まれ。福島県出身。リアルサウンド編集部を経て独立。荒木飛呂彦、藤井健太郎、乃木坂46など多岐にわたるインタビューを担当。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、ドラマ『岸辺露伴は動かない』展、『LIVE AZUMA』ではオフィシャルライターを務める。