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イッキ見必至…! 長期シリーズなのに中だるみしない“韓国ドラマの傑作”の凄まじい魅力

  • 2025.5.1
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(C)SBS

韓国は日本以上の格差社会と言われることがあるが、韓国ドラマを見ていても、経済的な格差を背景にした物語が多いことに気づく。さらに、韓国は超学歴社会でもあり、韓国の親たちの子供を良い学校に入れようとする執念も、日本以上に凄まじい。

そんな韓国社会の実情が反映された代表作の一つは『ペントハウス』だろう。本作は富裕層が生活する100階建ての超高層マンションを舞台にしたミステリーサスペンスだ。一人の少女が高層階から転落する事件をきっかけに、上流社会に生きる人々の欲望渦巻く裏側を赤裸々に描いたことで、韓国では社会現象となるヒットを記録し、シーズン3まで制作される人気シリーズとなった。

二転三転する展開で、先読みを許さない高度なストーリー展開で見る人を引き込み、魑魅魍魎な上流社会の実態を赤裸々に見せつける本作は、超格差社会をサバイバルせねばならない韓国社会の暗部を切り取ったと作品と言える。

声楽のライバル同士が娘のことで火花

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(C)SBS

セレブだけが住むことができる超高層マンション「ヘラパレス」。ある日、その高層階からソラという少女が転落死する。その2か月前、声楽家として成功を収めヘラパレスに暮らすチョン・ソジン(キム・ソヨン)と、高校時代にソジンのライバルで今は不動産仲介業に甘んじているオ・ユニ(ユジン)は、娘を通じて再会する。かつて自分から夢も男も全てを奪ったソジンを許せないユニは、娘のロナ(キム・ヒョンス)をなんとしても声楽の名門チョンア芸術高校に進学させてみせると宣言。

ユニは様々な裏工作を試み、ロナも必死に良い成績を収めたにもかかわらず不合格になってしまう。一方で、身分を偽りチョンア芸術高校に入学したソラは、ソジンの秘密を知ったために彼女にとって不都合な存在となり、不審な転落死を迎えることに。そして、欠員が一人出たチョンア芸術高校に、ロナが補欠入学することになる。

ここから、ソラを殺したのは誰なのかをめぐるサスペンスが展開していく。ソジンは同じヘラパレスに住むチュ・ダンテ(オム・ギジュン)と不倫関係にあることをソラに知られてしまう。ソジンを見返したいユニは、ソラが死んだおかげで娘のロナを入学させることができた。どちらも、ソラを殺す動機を持っているのだ。

物語は、ソラ殺害の犯人は誰かという大きな謎に、ソジンの夫や不倫相手との関係、またソジンの夫とユニの関係、ヘラパレスに住む他のセレブ、ソリョンなどとの関係が絡み合い、複雑な人間模様を形成しながら進んでいく。

不倫、いじめ、権力、金、ドロドロした韓国ドラマの得意要素をまるごと煮詰めたような物語

本作で描かれるのは、ヘラパレスに住民たちの豪華な暮らしと、シングルマザーで苦労するユニの対比だ。ユニは、かつて優秀な声楽の生徒だったが、ソジンのせいで夢を絶たれ、女手一つで苦労して家計を営んでいるのに、ソジンは何一つ不自由のない豪華な暮らしをしている。この因縁の関係が娘たちの関係にも影響し、親子2世代にわたる因縁が描かれることになる。

また、ソジンの不倫相手ダンテの妻は、財閥令嬢のシム・スリョン(イ・ジア)で、夫の浮気が許せず、ソジンと対立するユニとロナの親子の協力関係となるなど、利害関係や「敵の敵は味方」という理屈のもとで勢力図が形成されていくのが、本作の面白いところだ。さらに、ソジンの夫・ユンチョルは学生時代にはユニの恋人だったという点でも因縁があり、ドロドロした愛憎関係が展開していく。

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(C)SBS

一方、庶民の出でチョンア芸術高校に入学することになったロナは学校でいじめに遭う。学園ないでのいじめの描写は、韓国ドラマではおなじみのネタだが、本来庶民が入れない学校であるため、いじめの内容も壮絶を極める。

さらに政治家の不倫問題なども関わってきて、事態は複雑に絡み合い謎が深まっていく。単純にユニたち主人公サイドが搾取され、ソジンたちが搾取する側とだけ描かれているわけでもなく、やられたらやり返すという展開の中で、勢力図も入れ替わっていくので、長期シリーズながら中だるみせずに気になる展開がずっと続くので、気づいたら一気見していたという人も少なくないだろう。

超格差社会、韓国を象徴する高層マンション

本作は少女の転落死から始まるミステリーサスペンスだが、死んだと思われていた人間が実は生きていたというどんでん返しもあり、視聴者を常に驚かせる。そして、悪いやつが粛清されるとも限らないのがすごいところで、「憎まれっ子世にはばかる」という言葉通りに悪いことをした奴が堂々と生き延びたりする展開にもなったりする。そういう意味では、誰が生き延びるのか、予想しながら視聴するのも楽しいだろう。

舞台となる超高層マンションは、韓国の経済的ヒエラルキーを象徴している。超高層マンションのどのフロアに住むのかで序列が決まるような世界で、だれもが上を目指そうとする。その中で殺し合いを含めた人の陥れを企てる連中の魑魅魍魎な部分をスリリングに見せたことが本作を魅力的な作品にしている。

華やかな世界でありながら、その裏側はドロドロであるという韓国ドラマが得意とする展開がたくさん詰まった作品と言える。いじめに権力闘争、不倫や嫉妬、様々な負の感情がうごめくこのダークなドラマは、人間の業が深く描かれていると言えるだろう。


『ペントハウス』
ABEMAにて5月15日まで全話無料配信中
番組URL:https://abema.tv/video/title/472-218

ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi