野菜高騰と気象に関係はある？　今後の見通しについて解説

野菜の価格の高騰が長期化しています。普段の食事で欠かせない野菜の値上がりにより、家計に大きな影響が出ている家庭も多いでしょう。野菜の高騰には様々な要因がありますが、その一つに気象も挙げられます。

この記事では、気象が野菜の価格にどのように影響するのか、そして今後の見通しについて紹介します。

高騰している野菜について

農林水産省では、とくに消費量の多い14種類の野菜（2026年からブロッコリーが追加され15種類に）を「指定野菜」として定めています。

これらの野菜は、誰もがいつでも野菜を食べられるように、価格の安定を目的として指定されています。

農林水産省が2025年2月28日に発表した「野菜の生育状況及び価格見通し」によると、3月の野菜の価格見通しは以下となっています。

価格が平年並みなのは、きゅうり・なす・ピーマンの3種類のみで、それ以外の野菜は平年の価格を上回っています。

中でも、キャベツやはくさいは特に高騰しています。東京中央卸売市場での2025年2月における野菜の価格は、キャベツは平年比約200％～300％、はくさいは平年比の約300％～400％です。

野菜と気象の関係

野菜の生育は、気温や降水量、日照の変化などの気象条件によって品質や収穫量に影響が生じます。

これらの気象条件は、平年より高すぎても（多くても）、低すぎても（少なくても）野菜には悪影響です。

たとえば、普段より降水量が多いと農作物の生育障害や、土壌の排水不良をもたらし、病害も発生しやすくなるため、収穫量に大きな影響を与える可能性があります。一方、少雨の状態が続くと、水不足が発生して農作物の生育に影響を与えます。

また、高温が続くと野菜の葉焼けや着色不良、害虫による被害が起こりやすくなります。冬に大寒波が襲来して低温が発生すると、栽培作物の生育障害や枯死なども発生します。

それ以外にも、日照不足や、春や秋の霜なども野菜の生育に影響をもたらします。

ただし、平年より高温であっても、影響のある野菜もあれば影響を受けない野菜もあるなど、野菜の種類によって影響を受けやすい気象条件は異なります。

また、台風、集中豪雨による水害、ひょう、雷、激しい突風などの気象現象や気象災害も、野菜の生育に大きな影響をもたらす要素です。

野菜高騰の原因

近年の野菜高騰の原因として、異常気象による生育不足が挙げられます。

野菜の価格は、需要や供給のバランスによって決まります。天候によって農作物の育ち具合やでき具合が変わると供給量が増減し、価格も大きく変動します。

たとえば、安定した天候で野菜の供給量が多くなると安くなる一方、異常気象が発生すると生育不良によって野菜の供給が減るため、相対的に需要が増して価格も高くなります。

なお、2025年3月現在、高騰している4種類の野菜は以下の気象条件が影響しています。

2024年は、8月から9月にかけて全国的に記録的な高温となり、さらに12月から翌年2月は東日本太平洋側や西日本太平洋側を中心に記録的な少雨となりました。

キャベツは10月の天候不順も影響していますが、10月は全国的に平年より気温が高く、西日本や東日本の日本海側を中心に雨が多く降りました。また、日照が少なかったことも生育に影響を与えています。

また、野菜が高騰している要因として、気象以外にも燃料費や肥料、人件費の高騰などもあります。様々な要因が複合的に影響することで、野菜の高騰につながっています。

今後の見通し

高騰している野菜について、今後の見通しをまとめました。

また、これらの野菜の高騰は、ほかの野菜の高騰につながることもあります。

たとえば、ほうれんそうは平年並みの出荷数量が見込まれています。しかし、ほかの葉物野菜の出荷数量が減少傾向で推移することが見込まれることで、引き合いが強まって価格は平年をやや上回ることが予想されています。

また、現在高騰している野菜に共通しているのは、去年の夏の猛暑によって生育不良が起こっていることです。2025年の夏も最新の季節予報によると、猛暑になると予想されています。

春野菜の供給量が増えることで一時的に価格が下がっても、再び記録的な猛暑になると価格が下がりきらない可能性もあるでしょう。

なお、野菜の生育状況や価格の見通しは、農林水産省が毎月1回公表しているので、定期的にチェックしてみることをおすすめします。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー／気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。