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WBC選手に「戦犯」とSNS投稿…実は犯罪?観戦前に知るべき「批判」と「誹謗中傷」の境界線とは【弁護士解説】

  • 2026.3.6
大会でミスをしたスポーツ選手に対し「戦犯」と投稿するのは犯罪?(画像はイメージ)
大会でミスをしたスポーツ選手に対し「戦犯」と投稿するのは犯罪?(画像はイメージ)

野球の国際大会「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)が3月5日に開幕しました。日本はきょう6日夜、台湾と対戦します。ところで、野球に限らず、スポーツの大会期間中、SNS上では、試合中にミスをしてしまった選手を名指しし、「戦犯」「あいつのせいで負けた」という内容の投稿が散見されます。もしWBCの出場選手に対し、このような言葉をSNS上に投稿した場合、罪に問われる可能性はあるのでしょうか。批判と誹謗(ひぼう)中傷の境界線などについて、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

名誉毀損罪や侮辱罪に問われる可能性

Q.スポーツの大会でミスをした選手を名指しし「戦犯」「あいつのせいで負けた」といった言葉をSNSに投稿した場合、侮辱罪や名誉毀損(きそん)罪に問われる可能性はありますか。また、単なる感想や批判と、誹謗中傷を分けるポイントはどこにあるのでしょうか。

佐藤さん「SNS上で誹謗中傷した場合、誹謗中傷の内容によって、名誉毀損罪や侮辱罪などの罪に問われる可能性があります。

名誉毀損罪は、公然と“事実を摘示し(示し)”人の社会的評価を下げた場合に成立し、法定刑は『3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金』です(刑法230条1項)。ただし、『公共の利害に関する事実』『目的が専ら公益を図ること』『真実または真実相当性が認められた』の3つの条件を満たした場合には、名誉毀損罪で罰せられることはありません(刑法230条の2)。

一方、侮辱罪は、公然と人を侮辱した場合に成立します。事実を示さず、『ゴミ』や『消えろ』などの言葉をSNSで発信すれば、侮辱罪に当たる可能性があります。法定刑は、2022年6月の刑法改正により重くなり、『1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料』です(刑法231条)。

スポーツ大会において、『戦犯』『あいつのせいで負けた』などの投稿をする場合、一般的には、試合に負けたことへの憂さ晴らしなど、私的な理由で投稿しているものと考えられ、『公益を図る目的が認められる』ことは考えにくいです。

従って、特定の選手に対して、プレー内容などの事実を示し、社会的評価を下げるような内容の投稿をすれば、名誉毀損罪に問われる可能性があります。事実を示すことなく、単に『○○選手、戦犯』などと投稿した場合も、侮辱罪に問われる可能性があります。

こうした刑事責任のほかに、民事上も不法行為として、相手が被った精神的損害(慰謝料)などについて、賠償責任を負う可能性があります。

試合に関する『感想』『意見』『批判』と、違法な『誹謗中傷』との線引きは難しく、事案ごとに個別に判断されます。一般論としては、感想や意見としての域を逸脱した場合に、違法性が認められる可能性が生じます」

Q.スポーツ選手を巡り、「戦犯」「あいつのせいで負けた」以外にも法的責任を問われる可能性のある具体的な表現はありますか。

佐藤さん「スポーツ選手だけに限りませんが、『死んでほしい』『死ね』『ゴミ・クズ』『消えろ』といった言葉は違法性が認められる可能性が高いです。特に、試合に負けたり、選手が観客の思う理想のプレーができなかったりした際、実際、選手に対し、こうした言葉が投げ掛けられることがあります。発信者としては一時的な憂さ晴らしのつもりでも、一つ一つの言葉が、選手に与える精神的ダメージは計り知れず、選手が発信者を特定し、100万円近い金額で示談が成立した事案も存在します。

他にも、選手の家族についてまで『死んでほしい』などの誹謗中傷がなされる事案、『ブス』など選手の容姿を攻撃する事案などもあります。いずれも、具体的な表現内容によって、刑事・民事共に、違法性が認められる可能性があります。匿名での投稿であっても、現在は法改正により以前より容易に投稿者が特定されるようになっています。

SNSに投稿する際は、投稿した先に生身の人がいることを忘れないこと、いったん立ち止まって冷静になることが大切です」

Q.SNS上のひどい誹謗中傷をリポスト(拡散)しただけでも、法的な責任を問われる可能性があるのでしょうか。

佐藤さん「法的責任を問われる可能性があります。自分の意見などをつけず、単純にリポストのみした事案で、元のポストが一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準にしたとき、他人の社会的評価を低下させるものである場合、原則として、リポストについて民事上の不法行為責任を負う旨、判断した裁判例も存在します。

実際に責任を問われるかどうかはケースバイケースですが、安易な拡散行為にも気を付けましょう」

* * *

スポーツの観戦時、自分が応援するチームが負けると、SNS上でミスをした選手を批判したくなるかもしれませんが、投稿の内容次第では相手やその関係者の気持ちを深く傷つける可能性があります。ミスを責めるのではなく、全力でプレーする選手への敬意を忘れずに観戦を楽しみたいものです。

オトナンサー編集部

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