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今期の朝ドラもついに残り“約1カ月半”… 新たに表れた“2人の天才”に高まる期待と変化する主人公たち

  • 2025.8.18

NHK連続テレビ小説『あんぱん』も第20週に入り、放送期間は残り1カ月半ほど。柳井嵩(北村匠海)は、本格的に漫画家への道を歩み出した。そんな嵩を支える主人公・のぶ(今田美桜)の人生も変化しつつある。

※以下本文には放送内容が含まれます。

今田美桜が表現するのぶと嵩の5年

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『あんぱん』第20週(C)NHK

『あんぱん』は、年数を飛ばすことが少ない朝ドラだが、第19週の途中でのぶと嵩が結婚してから5年の月日が経過した。2人の髪型や服装などにも変化があり、若者ではなくなった2人が描かれ始めた。朝ドラでヒロインを演じる俳優にとって、役柄のエイジングをどう表現するかは課題の一つだが、今田はこれを難なく表現している。

のぶは、代議士・薪鉄子(戸田恵子)の前で、自身の中にある汚れのない正義感からくる鉄子の言動への違和感の存在を感じさせる表情を見せる。しかし、若い頃のように真っ向から立ち向かうのではなく、根回しとも言える処世術で自分の意思を表現していた。怒りを表現するのではなく、対話で分かりあおうとする様子からは、のぶが大人として生きていることを実感させる。若い頃のようにメラメラと情熱を燃やすのではなく、自分の中の情熱を守りながら、調節して相手に伝える方法を模索するようになっている。素直すぎる表情から、ある種わきまえたような表情への変化なども含めて、年齢による変化と呼べるだろう。

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『あんぱん』第20週(C)NHK

しかし、そんなのぶのまわりくどくも清らかな正義感は、鉄子にとってまぶしいものだったのだろう。第20週で、のぶは鉄子の秘書をクビになってしまう。のぶと嵩には、「逆転しない正義」を見つけたいという共通の願いがあるとはいえ、のぶ自身の人生はどのような結末に繋がっていくのだろうか。

嵩がアンパンマンを生み出すまでに出会う人々

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『あんぱん』第20週(C)NHK

2人の人生が変化するにつれて、新しい人物も登場した。いせたくや(大森元貴)と手嶌治虫(眞栄田郷敦)だ。いせたくやは音楽家・いずみたくが、手嶌治虫は漫画家・手塚治虫が、モデルとなっている。

いせたくやは、嵩が行きつけの喫茶店でたびたび出会う演劇学校の学生で、卒業後はタクシー運転手をしていたようだが、現在は無職のようだ。モデルになっているいずみたくは、『見上げてごらん夜の星を』をきっかけに、音楽家として出世し、童謡『手のひらを太陽に』では、やなせたかしと共作している。彼がどのように音楽家への道を進み、嵩の作詞能力を世に出していくのかが見どころになるだろう。大森は、飄々とした態度を見せるいせたくやを軽やかに演じている。嵩とは正反対の性格の彼が、クリエイターとして嵩にどんな影響を与えるのだろうか。

手嶌治虫は、嵩よりも若くして漫画家として大成した人物。嵩は嫉妬と羨望の眼差しを向けていたが、行きつけの喫茶店で出会ったことで、強い嫉妬心を向けるようになった。手嶌を前にした時の嵩の表情はこれまで見たことがないものだった。手嶌は、優しくてどこか情けない部分もある嵩の荒々しい感情を引き出した人物と言える。そして、そんな北村の表情と対比するように、優しい声色で嵩の靴紐を結んだ眞栄田郷敦の穏やかさからは、現状の2人の間にある距離を感じさせた。史実によれば、後に共に仕事をすることになる2人だが、くすぶっている嵩と手嶌がどのような関係性を築いていくのかにも注目だ。

嵩が本格的に漫画家への道を歩み出したことで、昭和中期から後期にかけて日本のエンタメの礎を築いたクリエイターが歩んだ道を追体験することになる。そこには、戦争を体験したクリエイターたちの平和への祈りと生きていることの尊さが詰まっている。今を生きる私たちがしっかりと受け止めなければならない願いが込められているはずだ。


NHK 連続テレビ小説『あんぱん』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202