1. トップ
  2. “抜群にうまい”大河女優、新米医師の葛藤を“真摯”に表現『19番目のカルテ』

“抜群にうまい”大河女優、新米医師の葛藤を“真摯”に表現『19番目のカルテ』

  • 2025.8.1

7月13日からTBS日曜劇場で放送が始まった『19番目のカルテ』。富士屋カツヒトによる同名漫画を原作とした作品で、主人公の総合診療医・徳重晃を松本潤が演じている。そんな彼に影響を受ける新米の整形外科医・滝野みずきを小芝風花が演じる。

※【ご注意下さい】本記事はネタバレを含みます。

魚虎総合病院に新設された総合診療科が舞台

undefined
日曜劇場『19番目のカルテ』第2話より (C)TBSスパークル/TBS

『19番目のカルテ』は、魚虎総合病院に新設された総合診療科を舞台にした物語。総合診療科とは、複雑な症状やどの科でも症状の解決に至らないという問題を解決するために新設された診療科である。院長の北野栄吉(生瀬勝久)の独断で決められたこともあり、魚虎総合病院の医師たちは総合診療科の必要性に疑問を持っている医師も多かった。

そんな魚虎総合病院にやってきたのが、総合診療医の徳重晃だ。整形外科に入院中の横吹順一(六平直政)の肩の痛みやその他の症状から心筋梗塞を言い当てて、周りを驚かせる。また、いくつもの病院、いくつもの診療科をたらい回しにされ続けてきた黒岩百々(仲里依紗)の全身の痛みを繊維筋痛症であると指摘した。原因のわからない痛みを「気のせいじゃないか」「精神的なものではないか」と疑われていた黒岩は、自分の痛みの原因が分かったことを泣いて喜ぶ。得体の知れない痛みに苦しんでいるのに、それを誰にもわかってもらえないという苦しみや怒りの辛さとそれが解決された喜びを仲里依紗が丁寧に表現していた。

整形外科医として働いていたみずきは、徳重の診察の様子と患者の反応を見て、総合診療科に憧れを抱くように。一方で、予算不足、人手不足の中、丁寧に患者を診察する徳重のやり方に反論する者も。今後は、徳重がどのように患者の病を紐解いていくのか、そのやり方が魚虎総合病院をどのように変化させていくのかが見どころとなるだろう。

理想と現実の狭間で葛藤する新米医師の等身大の姿を、小芝が真摯に表現

undefined
日曜劇場『19番目のカルテ』第2話より (C)TBSスパークル/TBS

小芝が演じるみずきは、新米整形外科医だ。できる限り患者の症状に寄り添いたいと思いつつも、診療報酬や人手不足のあおりを受ける魚虎総合病院では、整形外科長・成海辰也(津田寛治)から圧力をかけられることも。専門外の症状は診断ができず、他の科に患者を回すことにも罪悪感を抱いている様子だ。徳重と出会う前のみずきは、医師としての理想と病院の現実の狭間で葛藤しているように見える。眉間にしわを寄せるみずきの癖は、周りへの嫌悪感というよりも、自分に対する憤りが表現されているように見える。ドラマ『GO HOME〜警視庁身元不明人相談室〜』や大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』でも見られたように、こういった葛藤を表現するのが小芝は抜群にうまいのだ。

 

undefined
日曜劇場『19番目のカルテ』第1話より(C)TBSスパークル/TBS

表情で自分への憤りを表現していたみずきだが、心筋梗塞の症状で苦しむ横吹の様子や心筋梗塞だと診断した徳重の様子を見て、喉の痛みなら耳鼻咽喉科に回せばいいと思い込んでいた自分の考えを重く反省することになる。葛藤しつつも、医者としての自分の逃げを自覚したのだ。第1話は、徳重の医者としてのスタンスを丁寧に描きつつ、徳重と関わっていくことになるみずきの医者としての意識の変化、徳重と歩むためのスタート地点を丁寧に描いた回と言える。

新米医師として奮闘するみずきの様子を小芝が真摯に演じているからこそ、物語のスタートとして意義のある第1話になったと言えるだろう。みずきがどのように変化していくのかにも期待したいところだ。


ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202