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9年前の不朽作・仕事と恋愛に悩める“30代女子”、深田恭子の魅了される演技が光る“名作品”【火曜ドラマ】

  • 2025.8.26

SNSで『のだめカンタービレ』の千秋真一(玉木宏)や『ホタルノヒカリ』の高野誠一(藤木直人)のような面倒見が良く、普段は冷たいが実は優しい男性キャラが出ている作品が見たい!というポストがバズっていた。2016年にTBS火曜22時枠で放送された『ダメな私に恋してください』もそういった男性が登場する作品だ。

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ディーン・フジオカ(C)SANKEI

喫茶店での住み込みから始まる恋物語

『ダメな私に恋してください』は、中原アヤによる漫画が原作のドラマ。資格なし、特技なし、貯金なしで貢ぎ体質の三十路女の主人公・柴田ミチコ(深田恭子)が、偶然再会した前の職場の上司・黒沢歩(ディーン・フジオカ)がマスターを務める喫茶店で住み込みで働くところから始まる物語。

頼りがいがあり、厳しくも優しい黒沢に惹かれていくミチコだが、黒沢は喫茶店の近隣にある花屋を営む幼馴染・春子(ミムラ)に片想いをしていた。失恋したことで、ミチコは黒沢から離れて別の恋愛に目を向けるが、なかなかうまくいかない。黒沢への恋心と自分の年齢への焦りなどに揺れる不器用なミチコの生き様が魅力だ。

恋に翻弄される大人たちが魅力

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深田恭子(C)SANKEI

ミチコは、仕事に恋に悩む30代の女性。黒沢に片思いして、体当たりでアプローチするもなかなかうまくいかない。職場の年下の同僚・最上(三浦翔平)から思いを寄せられ、付き合ってみるも、自分のなかにあるトラウマから相手を疑ってしまい、うまくいかない。ミチコの不器用ながらも根性があり、物事に一直線に進んでいく姿を、深田恭子が丁寧にかわいらしく演じている。「なぜ、そうなる?」とツッコミたくなるコミカルな場面も多く、それを軽くいなしたり、時に面倒を見たりしながらお世話する黒沢とのやり取りも魅力的だ。

黒沢は、ミチコの前では面倒見の良くも厳しい上司で、ミチコを相手にした時は、ミチコのアホな行動に軽く呆れたり、助言したりといった場面が多い。ディーン・フジオカの声色や一見厳しそうな表情などが黒沢のキャラクターにぴったりだった。また、ミチコではなく、片思いをしている春子の前では、穏やかな表情を見せることも多く、春子と黒沢の兄・一(竹財輝之助)を前にした時の複雑な表情は、ミチコを前にした時とは大きなギャップがあり、黒沢の内面の複雑さが真摯に表現され、黒沢という人物がより立体的になっていた。

コミカルなやり取りではテンポ感を見せつつ、ふたりでじっくりと向き合う場面では視聴者に深く響かせる芝居を見せ、ミチコと黒沢が別の人物と対峙した時には他の一面が見える。大きな展開がある物語ではないが、それぞれの感情が丁寧に描写されているからこそ、しっかりとした見応えのある作品になっている。

30代になり、仕事と恋愛にどのように向き合い、自分の気持ちに折り合いを付けていくのか。9年前の作品でありながら、現代にも通じるテーマを持つ作品でもある。


ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202