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「外食のほうがマシ」と言った俺が、閉店後の厨房で隠れてやっていたこと

  • 2026.11.4
ハウコレ

閉店後の厨房で、彼女のスタッフは卵の割り方から教えてくれました。外食のほうがマシと言ったあの日、本当に言いたかったことは別にあったのです。

帰ってきた彼女が、店のにおいをまとったまま台所に立ちました。洋食屋を開いて5年、彼女は家でも必ず料理をします。疲れた顔を見せないのが、昔からの彼女のくせです。その背中を、俺はソファから見ていました。

言い方を間違えた一言

前の週、彼女はエプロンを着けたままソファでうたた寝をしていました。
台所で立ったまま、残り物を口に運んでいる姿も見ています。
店でも家でも料理をして、彼女が座っている時間はほとんどありません。
今日くらいは休んでほしいと思ったのに、口から出たのはこの言葉でした。
「外食のほうがマシ」
「お店の料理より、家のごはんがいいって言ってたよね」
彼女にそう返され、俺はとっさに言い足しました。
「今日は外で食べよう」
「じゃあ、1人で行ってきて」
そう言われて、休んでほしいとは言い出せなくなったのです。
上着をソファに戻して、彼女が2人分のオムライスを作るのを黙って待ちました。

閉店後の練習

次の日、彼女が買い出しに出ている間に店へ顔を出し、スタッフに声をかけました。
彼女の看板のオムライスを、俺に教えてほしいと頼んだのです。
「店長、家でも作ってるんですか」と驚いた顔をされました。
スタッフは少し考えてから、うなずいてくれたのです。
合鍵は、仕込みの練習をしたいと言ってスタッフが借りてくれることになりました。
閉店後の厨房で、卵を何個も無駄にしました。
スタッフは、彼女が卵を返すときの手首の角度まで細かく教えてくれます。
帰りが遅い理由を聞かれても、「ちょっとね」としか答えられません。
2回目の練習で、ようやく形になったのです。

カウンターに置いた皿

定休日、スタッフに彼女を呼んでもらいました。
ガラス戸が開いて、彼女が厨房の俺を見て目を丸くします。
言うつもりだった言葉は、すっかりどこかへ行ってしまいました。
卵が少し破れた皿を、カウンターの彼女の前に置きました。
「食べてみて」
スタッフが奥へ下がり、カウンターの前は2人だけになったのです。
彼女のエプロンのひもを、指先でいじってしまいます。

そして...

彼女がスプーンを手に取りました。
オムライスを一口食べて、彼女が言ったのは一言だけでした。
「ソースのかけ方が違う」
笑ってもいないし、怒ってもいない顔でした。
「家では、俺が作る。だから家では座っててほしい」
外食のほうがマシなんて、本当は1つも思っていませんでした。
許されたのかどうかは、まだ分かりません。
「外食のほうがマシ」と言った俺は、彼女にとっての外食になりたかったのです。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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