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「高校では美術部、父は油絵を…」鈴木京香(58)がアートを愛するようになったきっかけと、今の楽しみ方

  • 2026.9.30
鈴木京香さん。

音楽教師と教え子たちの絆を描く映画『キリコのタクト~YELL~』。本作で、数々の合唱コンクールを制してきた音楽教師・原田貴理子を演じた鈴木京香さんは、キャリア初となる指揮者役に挑じました。役を通して知った指揮者の奥深さ、そして幼い頃から親しんできたアート、新しいものに興味を持ち続けることの喜びについて話を伺いました。


子どもの頃から絵画は身近な存在

鈴木京香さん。

――昨今は「推し活」が注目されていますが鈴木さんもされていらっしゃいますか?

推し活ということはしたことがないんですが、新作が公開されると必ず劇場へ足を運ぶようにしている、海外の映画監督がいます。好きな監督の映画を観に行くという予定があるだけでちょっと元気をもらえますよね。

――鈴木さんはアートにも造詣が深いですよね。興味を持ち始めたのはいつ頃ですか?

父が休日に油絵を描いていたので、子どもの頃から絵画は身近な存在でした。父が描いている姿をよく眺めていた記憶があります。

宮城の田舎で暮らしながらも、雑誌などで東京で流行っているものはこまめにチェックしていました。今こんなアーティストが話題らしいとか、こういったミュージシャンが来日するようだ、とか。そういった情報に触れていくうちに美術への興味が深まっていたんです。それで高校では美術部に入りました。

――本作の生徒たちのように熱心に取り組んでいたのでしょうか?

コンクールへの入賞を目指して、作品を描くことはありました。でも、美術は一人で作品と向き合うものなので、大勢で力を合わせる合唱とはまた違いますよね。それぞれが好きなものに熱中していたので、この映画の生徒たちのように、みんなが同じ方向を向いて一致団結する青春とは少し違っていました。そうした経験があまりないので、羨ましさも感じます。

合唱を聴いていると、青春をもう一度味わわせてもらえるような気がします。大人になった今、みんなで切磋琢磨できる活動は素敵だなと、改めて感動しました。何かに懸命に打ち込む姿は、それだけで美しいのでしょうね。

新しいものに興味を持てる自分を大切にしたい

鈴木京香さん。

――今後、プライベートで打ち込んでみたいものはありますか?

興味をもったことをやり始めて、飽きたら手放して、また楽しそうと思ったら始めて、という繰り返しです。極めることはないけれど、趣味はそれでいいと思っているんです。新しいものに興味を持てる自分を大切にしようって思ってるんです。極めなければいけないのは、私の場合は仕事なので、趣味に関してゆるくていいのかなって。なので、飽きてしまったことに対して反省しないようにしています。

――では今、興味を持っていることを教えてください。

アートを鑑賞するだけでなく、「もし自分の家に置くとしたら?」と想像することを楽しんでいます。どんなフレームに入れようか、今、家にある作品とどう組み合わせようか、と妄想を膨らませています。

海外のアートフェアへ足を運び、日本ではまだあまり知られていないアーティストと出会うことからも刺激をもらっています。実際にさまざまな作品を見ていると、自分がどんなものに心を動かされるのかが、少しずつわかってくるんです。「いいな」と感じる経験が積み重なり、理解が深まっていく。勉強して得る知識とはまた違う形で、世界がどんどん広がっていく感覚があります。

音楽については、これまであまり詳しくなかったんです。でも今回、初めて指揮をする役を演じたことで、「もっとたくさんの音楽を聴いてみたい」という気持ちが湧いてきました。自分が興味を持ったものに触れていくと、自分自身のことも、より深く理解できるようになりますね。

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――今回の役を通して、指揮者という仕事への見方も変わりましたか?

これまでは指揮者の方を見ても、恥ずかしながら「格好いい指揮をされるな」と、うっとりするだけでしたが、今は全知全能の神のような存在でなければ務まらないほど、大勢の音楽家を率いてまとめあげるのは難しいことだと感じます。

楽譜をどれほど深く読み込み、楽器の音色をどれほど細かく聴き分けているのか。知れば知るほど驚きましたし、私はこれまで、そのすごさを知らずにいたのだとも思いました。

仕事では反省することも多いですが、役を通して得た知識や経験によって、喜びが広がっていくことは、何ものにも代え難いですね。知らずにいるよりも、知ることで人生は豊かになるのだと、日々感じています。

演じた貴理子は、指導者として優れているだけでなく、とても素直で、どんな人にも同じ熱量で声をかけ、対話を成り立たせる力を持っている人です。

彼女のように、分け隔てなく人生を楽しむことを教えてくれる大人は、今の時代とても貴重ですよね。私も、そんな役割を少しでも現場で担えたらいいなと思っています。

鈴木京香(すずき・きょうか)

宮城県出身。高校時代にスカウトされてモデル活動をはじめ、1989年の森田芳光監督作『愛と平成の色男』で俳優デビュー。1991年、NHK連続テレビ小説『君の名は』でヒロイン役に抜擢されてお茶の間の注目を集める。
以降も映画やTVドラマなどで活躍を続け『119』にて日本アカデミー賞優秀助演女優賞、『血と骨』では日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた。その後も『グランメゾン・パリ』、『栄光のバックホーム』など多数の注目作品に出演。

文=高田真莉絵 撮影=志水 隆 スタイリスト=藤井享子(banana) ヘア&メイク=板倉タクマ(nude.)

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