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中条あやみさんとめぐるアートの旅【vol.4 マリー・アントワネットの 「感性」に触れる展覧会へ】

  • 2026.11.6
〈作品〉フランソワ=ユベール・ドルーエ《コートドレスのマリー・アントワネット》1773年 ヴィクトリア&アルバート博物館蔵〈中条さん〉ワンピース¥323,400(アーデム/メゾン・ディセット) 靴¥297,000(マノロ ブラニク/ブルーベル・ジャパン) ピアス¥495,000 ネックレス¥693,000 リング〈人さし指〉¥550,000 〈中指〉¥484,000(すべてカジャビジュー) MANABU MIZUTA[NOSTY]

王太子妃時代 、17歳ごろのマリー・アントワネットの肖像画とあやみさん。彼女に思いをはせ、シックなブルーグレーのフラワープリントのワンピースをまとって展覧会をナビゲート。

ゆかりの品々が語る時を超えて妃が愛される理由

あやみさん:マリー・アントワネットは、好きなプリンセス像として必ず名前が挙がる存在ですよね。私もソフィア・コッポラの映画『マリー・アントワネット』でファンになって、宝塚の舞台『ベルサイユのばら』を観たり、関心をもってきました。これほど大々的な展覧会は初めてな気がします。

長谷川さん:本展はロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(以下V&A)の企画で、出品作200点以上とかなり大きな規模です。

あやみさん:3連の真珠のネックレスなど、初公開の出品作も多いとか。

長谷川さん:漆工芸品など、日本展独自に加えたものが24点あります。また本展の特徴は、彼女の“スタイル”が現代にも続いているという新たな視点です。今を生きる私たちとつなげて見ることで、学びがある。近・現代美術を主軸とする当館にとっても大切なポイントです。

あやみさん:シャネルなど、アントワネットのスタイルに影響を受けた現代のファッションの展示も、面白いですね。本展のアンバサダーとして、そうした魅力を伝えたいし、新たに学べることは楽しいです。日本の漆工芸の素晴らしさを知っていたことも発見でした。《香箪笥》なんて、今の日本人が見ても誇りに思えるほど、優れた職人技術の結集ですよね。

長谷川さん:漆工芸は、ダイヤモンドや真珠と同じレベルで好きだったようですよ。

あやみさん:今では技術的に作れなくなったものもありそう。そうした品を実際に見られるのも貴重ですね。

長谷川さん:江戸の漆工芸は細かい分業で、それぞれ特化した職人がいましたから、システムを再建しない限り、同じ品質には届きません。絹織物なども同じで、当時のフランスは国を挙げて職人を育て、システムを構築し、最高級の素材を集めて最高品質のものを作っていた。ヴェルサイユにそれらが集まり、アントワネットは最高級の手仕事を手にしていたわけです。本展には、時や場所を超えて超一級品が集まっているんです。

あやみさん:今のオートクチュールでも、職人の技術は大切に保護されてますね。

長谷川さん:フランス革命で職人技術はいったん断たれましたが、オートクチュールの時代に再構築されました。フランスの文化力の高さ、目指す品質の高さは、アントワネットの時代から継承されているんですね。「ファッションの都、パリ」というイメージ自体、ルイ14世がファッションを国の産業とした戦略があってこそできたものでした。

あやみさん:そうした国の力を示す存在が、フランス王妃でもあったんですね。

《マリー・アントワネット旧蔵の天然真珠とダイヤモンドの3連ネックレス》フランス製 18世紀後半 ハイディ・ホルテン・コレクション、ウィーン MANABU MIZUTA[NOSTY]

輝くばかりの見事な天然パール119粒は、アントワネットが故国に運ばせ、革命後に命をつないだ娘マリー・テレーズ・シャルロットとその係累が継承し、今日まで現存。世界初公開。

MANABU MIZUTA[NOSTY]

長谷川さんの説明を受け、「アントワネットの人生をたどるような展示ですね」とあやみさん。

《通称「サザーランド・ダイヤモンド」》オリジナルのネックレス:フランス製 1780年代に加工 ヴィクトリア&アルバート博物館(以下V&A)蔵 Hearst Owned



アントワネットの悪評を増長した「首飾り事件」。その元凶となった首飾りの一部とされるダイヤモンド。インドのゴルコンダ産と思われる最高品質の透明度は圧巻! 中央の石は約15カラット。歴代のサザーランド公爵夫人が、ヴィクトリア女王からジョージ6世まで約100年にわたり、英国王室の戴冠式臨席時に着用。

《香箪笥》日本製 18世紀前半 V&A蔵 Hearst Owned

日本の漆工芸を好んでいたアントワネット。旧蔵と目される品が時を超え、本展で里帰り。

インフルエンサーとしての再評価“人間”としてのアントワネット

あやみさん:V&Aにこれだけのコレクションがあるのにも、驚きました。

長谷川さん:革命により、フランス王室の一級品がイギリスに多数流出したんです。結果、略奪や破損からも逃れた。当時のイギリス貴族の間ではフランスの美術品をコレクションすることがひとつのブーム、ステータスでした。それらがのちに、サザーランド公爵夫人のダイヤモンドのように、寄贈などでV&Aや大英博物館などに収蔵されました。

あやみさん:来歴にもドラマがありますね。アントワネットのファンとしては、人となりがわかる展示はすごく楽しいです。長谷川 本展は“人物”にも焦点を当てていますからね。革命の意識が強いフランスとは違って、イギリスやアメリカなどの英語圏ではコッポラの映画の元になったアントニア・フレーザーの伝記をはじめ、ひとりの人間としての研究が進んできたんです。イギリスでは、ダイアナ妃と重ねて見る人も多いと聞きました。

あやみさん:確かに! アントワネットは「パンがなければケーキを食べれば」と言ったという虚構のイメージがひとり歩きしてますが、14歳で嫁いだ彼女がその若さで立たされた境遇、その後の成長、ファッションの影響力、女性として気丈に振る舞った強さ、家族を守ろうとした母性、運命的な悲しい最期…と、知れば知るほど、興味が湧いてきます。

長谷川さん:母乳で育児をしたフランス王妃だったり、家族の時間を大切にして子どもたちを自分で教育したりも。宮廷の因習を壊すなかで、ファッションで自己表現をしたとも言えます。王妃が発注することで職人技術を支え、さらに世界に発信するインフルエンサーとしての存在感も見えてきます。

あやみさん:生きざまがかっこいいです。自分をもっていて、周りも見えていた。人を見る目やルールにこだわらないところは、末っ子っぽい(笑)。常に誰かの目にさらされるなかで、「私って何?」と思う瞬間もあったと思うんです。ファッションは「今日は頑張るぞ」ってときにまとう、よろいだったんじゃないかな…。もしアントワネットが同時代を生きていたら、一緒に茶道をしたいですね。自分の“好き”を知っていた彼女なら、お道具にこだわってハマるはずだから。

長谷川さん:その発想はなかったです(笑)。本展には18世紀から現代まで、多彩な分野の作品が揃っていますから、ご関心に応じて自由に楽しんでいただきたいです。

ピエール=ポール・アモン《皇后ウジェニー》1850年代 東京富士美術館蔵 MANABU MIZUTA[NOSTY]

アントワネットが後世に残した影響を振り返るセクションで。右手の肖像画に描かれた皇后ウジェニーは、スペインからフランス皇帝ナポレオン3世に嫁いだ自らをアントワネットに重ね、イメージづくりの参考にしたとか。

MANABU MIZUTA[NOSTY]

モスキーノ、シャネル、ヴィヴィアン・ウエストウッドら現代のクリエイターたちのコレクションも。近現代に受け継がれたアントワネットの美意識、スタイルを鑑賞できるのも本展の魅力。

〈1770-1793〉 皇女からフランス王妃へ

《扇 マリー・アントワネットの婚礼の寓意》フランス製 1770-80年代 V&A蔵 Hearst Owned

ルイ16世との婚姻記念。

《ローブ・ア・ラ・フランセーズ》フランス製 1760年代(1770年代に加工) V&A蔵 Kieron Boyle / Hearst Owned

18世紀の宮廷スタイル。

《「ア・ラ・ポロネーズ」で着装したローブ・ア・ラ・フランセーズ》フランスあるいはイギリス製 1770年代 文化学園服飾博物館蔵 Hearst Owned

後ろをたくし上げた機能的なドレス。

ジャン=バティスト=クロード・スネ《マリー・アントワネットの肘かけ椅子》(4点組の1点) 1788年 V&A蔵 Hearst Owned

アントワネット好みの家具も。

〈1800-1940〉 受け継がれた美意識

ジャンヌ・ランバン《イヴニングドレス ローブ・ド・スティル》1922-23年頃 V&A蔵 Pip Barnard / Hearst Owned

18世紀のスタイルを再解釈したドレス。

ショーメ《ガーランドスタイル・ストマッカー》1906年頃 個人蔵(協力:アルビオンアート ジュエリー インスティテュート) Hearst Owned

リボンなどルイ16世時代の装飾様式を採用したデザイン。

〈そして、現在へ〉 進化する“MAスタイル”

マノロ・ブラニク《アントニエッタ》2005年 マノロ ブラニク・アーカイヴ蔵 Hearst Owned

ソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』のために製作された靴。

Hearst Owned

同映画の主演、キルスティン・ダンストが実際に着用したドレス(右手前3点)

アンドレア・グロッシ《トワル・ド・ジュイのアンサンブル》(コレクション「デウスランド[神の国]へようこそ」) 2019年 Hearst Owned

アントワネットの時代に発展したフランスのプリントコットン「トワル・ド・ジュイ」の現代版。ダッチェスサテン製。

エレガントな展覧会オリジナルグッズも!

Hearst Owned

一部完売も続出するほど人気なのが、本展でしか買えない特別なグッズの数々。マリー・アントワネットのイニシャル「MA」入りポーチや、オリジナルイラスト(写真上)のトートバッグなど、盛りだくさん。

今月のナビゲーターは…
長谷川珠緒さん

Hearst Owned

横浜美術館主任学芸員。ロンドン大学大学院にて美術史および歴史学修了。国立新美術館勤務を経て、2016年より現職。専門は近現代工芸。横浜美術館では「ファッションとアート―麗しき東西交流」「ヌード―英国テート・コレクションより」「原三溪の美術」などを担当。

今月のAYAMI’S LOVE

内側から発光するような輝きがお気に入り!

Hearst Owned

「今のマイベストジュエリーのひとつがCHROME HEARTS×MIKIMOTO。クロムハーツのジェシー・ジョー・スタークが『真珠の持つクラシックさと反骨的な美』に惹かれ、コラボが実現。マリー・アントワネット・スタイル展の取材会で素敵なドレスと合わせました」

中条あやみさん
PROFILE
1997年2月4日生まれ、大阪府出身。モデル・俳優。映画・ドラマ・雑誌・CMを中心に幅広く活動中。ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』『田鎖ブラザーズ』(共にTBS系)や、映画『あまろっく』『TOKYO MER』シリーズなどの話題作に出演し、フォトエッセイ『明日へのことば』(幻冬舎)を昨年刊行。開催中の「マリー・アントワネット・スタイル」展のアンバサダーを務める。

「マリーアントワネット展」~11月23日(月・祝)
休館日:木(11月19日は開館)
横浜美術館(神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)

Photos:MANABU MIZUTA[NOSTY]
Hair&Make-up:KEITA IIJIMA[mod's hair]
Styling:ERIKO MORISO
Text:MAYUMI YAWATAYA
Model:AYAMI NAKAJO
25ans(ヴァンサンカン)11月号掲載(2026年9月28日発売)

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