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「俺、保険に入ってません」赤信号で追突された30代女性→ 過失割合は0:100なのに…直面した"厳しい現実”

  • 2026.10.8
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「俺、保険に入ってません」

自分に過失のない、いわゆるもらい事故なら、修理費は全額相手が支払ってくれる。そう考える人がほとんどではないでしょうか。

契約者のAさん(30代・女性)も、事故の直後まではそう考えていたといいます。しかし、車を降りてきた相手から告げられたのは、“自分が無保険であること”でした。

今回は、損害保険会社で事故対応を担当していた私が相談を受けた、無保険の相手との追突事故のお話です。

信号待ちの車に起きた追突事故

事故が起きたのは、Aさんが赤信号で停止していたときでした。後ろから来たBさん(20代・男性)の車が、Aさんの車に追突したのです。

過失割合は0:100(Aさん:Bさん)。幸いAさんにケガはありませんでしたが、車の後部が大きく凹んでしまいました。

Aさんいわく、事故直後に車から降りてきたBさんは、ひどく動揺した様子だったそうです。事故のあとはお互い動揺するものだとAさんは受け止めていました。しかし、Bさんの口から出たのは「無保険」という言葉でした。

Aさんは、まさかそんなことがあるのかと思いながら、Bさんと連絡先を交換しました。Bさんは終始「弁償しますんで」と話していましたが、Aさんは信用しきれない気持ちだったといいます。

Aさんに起こりうる「2つの可能性」

Aさんの車の修理費概算は25万円。加えて修理期間中は代車も必要です。

私はまず、過失のない事故ではAさんに代わってBさんと直接交渉できないことを説明しました。Aさんに賠償責任がない以上、保険会社は相手との交渉を代行できないためです。相談には乗れるものの、弁護士特約を使わなければ、交渉するのはAさん自身になります。

そのうえでAさんに、今後起こりうる2つのことを伝えました。

1つ目は、Bさんの態度が変わる可能性です。事故の直後は、車に詳しい人でなければ修理費の見当はつきません。数万円程度だろうと思って「払います」と請け合い、概算を聞いて態度が変わるケースは、残念ながら少なくありません。

2つ目は、支払いが滞る可能性です。支払いを渋られて長引くケースや、そのまま連絡がつかなくなるケースもあります。弁護士などを通じて請求し続けることはできますが、時間はかかり、全額を回収できるとは言い切れません。

説明を聞いたAさんは、「そんな…」と一呼吸おいてから、こう続けます。

「私は被害者なのに、ですか?」

1年以上続いた「月2万円」

私は、Bさんの対応次第ですぐ弁護士特約を使えるよう準備したうえで、まずはBさんの反応をうかがうよう、Aさんと打ち合わせました。

そして、Bさんへ連絡したAさんは、その様子を次のように語ります。

「予想どおり、『そんなに修理費用がかかるんですか?』とBさんに言われました」

Aさんは「でも」と続けます。

「Bさんは自分で払い続けるそうです。申し訳ないですけど、あんまり信じてはいませんが」

正直、私自身も半信半疑でした。払い切った相手も当然過去にはいましたが、稀と言っていいほど少ないからです。そこで弁護士特約の使用はいったん保留にし、Bさんの支払いを見守ることにしました。代車代については、これ以上の請求をするとBさんに支払ってもらえる可能性も低くなると判断。修理工場も事情を聞いて代車を無料で貸し出してくれたため、代車請求自体は取り下げることにしています。

その後もBさんは毎月2万円ずつAさんに支払い続け、1年と少しで修理費の全額を払い終えました。途中で支払いをやめようとする相手も多い中で、Bさんは自分の賠償責任を最後まで果たしたと言えます。

それでも、Aさんが修理費をいったん自分で負担し、全額が戻るまで1年以上待ったことに変わりはありません。そしてケガを含むもっと大きな額であれば、たとえBさんに支払う意思があっても、現実的には難しかった可能性さえあったのです。

自分の契約の中で備えられること

相手が任意保険に入っているかどうかは、事故が起きるまで分かりません。

また、自賠責保険はケガなどの人身損害の賠償のみであり、車の修理費は含まれません。相手が無保険であれば、車の損害は相手本人の支払い能力だけを当てにすることになります。

損害保険料率算出機構の統計では、共済を含めて、任意保険に加入している車は88.6%(2025年3月末時点)。つまり1割あまりの車が、任意保険に入らないまま走っている計算です。

理不尽ではありますが、無保険車との事故では自分の保険で備えることでしか対策できません。

無保険車との事故に備えられるのは、主に以下の2つです。

1つは、車両保険。相手が無保険でも自分の車両保険で修理費を受け取ることができ、支払った保険会社が相手に請求します。

しかし、車両保険を使えば原則として等級が下がり保険料が上がります。そのため「無過失事故特約」(名称は保険会社によって異なります)を付けることも検討したいところです。無過失事故特約では、相手の車と運転者または所有者を確認でき、なおかつ自身に過失がない事故であれば、等級を下げることなく保険を使用できるのが一般的です。適用の細かな条件は保険会社ごとに違うため、自分の契約に付いているかとあわせて確かめておきましょう。

もう1つは、人身傷害保険です。事故でケガをしたとき、治療費や休業損害などが、相手との過失割合にかかわらず、約款の基準で算定された額で支払われます。相手の支払い能力に左右されず、自分の契約でケガの損害をまかなえる点が強みです。人身傷害保険を付けていない場合は、無保険車傷害特約が備えになります。補償対象は死亡と後遺障害に限られ、自分の過失分も補償されませんが、無保険車との事故で深刻なケガを負った場合の負担を減らすことができます。

無保険は、誰のためにもならない

Bさんは、最後まで払い切りました。それでも、全額が戻るのを待ったAさんの1年間と、毎月2万円を払い続けたBさんの1年間は、Bさんが任意保険に入っていれば生じなかったものです。無保険車との事故は、被害者だけでなく、無保険の本人にとっても良い結果にはなりません。

「任意保険」とは言いますが、それは自賠責保険が「強制保険」であることに対する呼称にすぎないからです。Aさんのような事故を見ていると、その本質は「任意」とは言い切れないのではないでしょうか。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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