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中古車が500万円まで高騰したスズキ「ジムニーノマド」。発売から1年半、いま中古車サイトで検索してみると…

  • 2026.10.8
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

2025年に発売されたスズキ「ジムニーノマド」。一時は新車が買えず、中古車が500万円前後まで高騰する異例の事態となりました。しかし現在、市場には1300台以上の中古車が並び、未使用車が支払総額300万円前後と新車に近い価格で流通しています。

なぜこれほど早く相場は落ち着いたのでしょうか。そこには極端な供給不足の解消と、需給バランスの正常化という興味深い市場の動きがありました。

1300台超の衝撃。新車価格並みに並ぶ「未使用車」の現在地

記事執筆時点(2026年9月末)、大手の中古車情報サイトでジムニーノマドを検索すると、全国で1300台を超える車両が掲載されています。

その内訳を見てみると、走行距離が数十kmにも満たないような、ほとんど走っていない登録済未使用車や低走行車が数多く並んでいることに気づくでしょう。

実際の掲載価格に目を向けると、車両本体価格275万円に対して支払総額が296万円、あるいは車両本体価格286万円に対して支払総額が300万円など、支払総額290万〜300万円台前半で乗り出せる車両が複数確認できます。現在の中古車平均価格も約328.8万円となっており、かつての状況を知る方からすれば驚くほど穏やかな相場に見えるはずです。

発売直後は価格が高騰して手が届かないと言われていた人気車種が、なぜここまで普通の価格で流通するようになったのか、不思議に思われる方も多いかもしれません。その答えを探るためには、まず発売当初の異常とも言える熱狂を振り返る必要があります。

なぜ500万円に?「約42ヶ月待ち」が引き起こした異常なプレミアム

時計の針を少し戻し、当時の状況を見てみましょう。ジムニーノマドは、2025年1月30日に日本で発表され、同年の4月3日に発売を迎えました。当時のメーカー希望小売価格は、マニュアル車が265万1000円、オートマチック車が275万円という設定でした。

ところが、発表されるやいなや全国の販売店に注文が殺到します。当初設定されていた月間の販売目標は1200台でしたが、わずか数日で約5万台もの注文が入り、スズキは2025年2月初旬に異例の受注停止を発表せざるを得なくなりました。

この「約5万台」という注文数は、月販目標である1200台で単純計算すると約41.7ヶ月分に相当します。実際の納期とは異なるものの、発売前の数日間だけで約3年半分の目標に達してしまった計算となり、当時の需給バランスがどれほど極端に崩れていたかがお分かりいただけるでしょう。

その結果、新車の注文すらできない深刻な供給不足に陥りました。行き場を失った需要は中古車市場へと向かい、400万円台、一部では新車価格の約1.8倍となる500万円前後で販売される車両まで現れたのです。

当時これほどの高値で取引されていたのは、車そのものの価値が突然上がったわけではありません。「いつ手に入るか分からない車に、待たずにすぐ乗れる」という時間的な価値や極端な希少性に対して、多額のプレミアムが支払われていたと考えられます。

相場を冷ました最大の要因。「月産3300台体制」への決断

しかし、そのような極端な高値相場は長くは続きませんでした。中古車の価格が落ち着きを取り戻し始めた最大の転換点は、メーカーによる本格的な増産にあると言われています。

途方もない数のバックオーダーを抱えたスズキは、生産能力の大幅な拡大に踏み切ります。そして2025年7月からは、月間の生産台数を約3300台規模へと引き上げました。これは当初の月販目標である1200台に対して約2.75倍にあたる数字であり、需要に応えるための強力な生産体制が構築されたことを意味しています。

生産台数が増加したことで、これまで待たされていた既存の顧客への納車が着実に進んでいきました。それに伴い街中でジムニーノマドを見かける機会も増え、「どうしても今すぐ欲しいなら高額な中古車を買うしかない」という焦燥感は徐々に薄れていったと推測されます。

やがて納車が進むにつれて、下取りや買い取りを通じて中古車市場へ流通する車両の数も増えていきました。需要に対して供給量が増えれば価格競争が起こるのが市場の原則です。この強力な供給力の向上こそが、中古車相場に上乗せされていたプレミアムを少しずつ適正なものにし、相場全体を冷ます最初のきっかけになったと考えられます。

受注再開と安全装備の進化が「旧型の未使用車」に与えた影響

増産に続いて相場に決定的な影響を与えたのが、注文受付の再開と商品改良の実施です。

2026年の初頭には新たな注文受付が再開され、現在は通常の注文へと移行しています。これにより、「高いお金を出して中古車を買わなければ手に入れられない」というかつての前提は終わりを告げました。普通に新車が注文できるようになれば、中古車に100万円以上多く払ってまで今すぐ買う必要があるのかと、冷静に判断される方が増えるのは自然な流れと言えるでしょう。

さらに2026年には商品改良も行われ、現在の新車価格は292万6000円となっています。新しいモデルでは、デュアルセンサーブレーキサポートIIや車線逸脱抑制機能、全車速追従機能付きのACC(AT車のみ)など、安全装備を中心とした商品力が大きく引き上げられています。

最新の機能を持った新車が適正な価格で注文できるとなれば、あえて旧型仕様の未使用車を高額で買う理由は見当たりにくくなります。中古車を扱う販売店としても、在庫をスムーズに販売するためには新車に対して価格的なメリットを提示する必要があり、これが相場全体を押し下げるさらなる圧力として働いたと見られています。

これは「暴落」ではない。需要と供給が導き出した正常化のプロセス

現在の中古市場にある支払総額290万円から300万円前後の車両と、現行モデルの新車における車両本体価格292万6000円を比べると、数字のうえでは非常に近い水準に見えます。もちろん新車を購入する際には登録の諸費用やオプションの代金が加算されるため一概には比較できませんが、発売直後の400万円から500万円級だった相場を思えば、価格差は劇的に縮小しました。

2026年9月末時点での「中古車在庫1300台超」という事実は、欲しい方がいるのに売れる車がないという状態から、新車の供給が増えて市場に1000台単位で流通する状態へと変化したことを明確に示しています。
こうした経緯を辿っていくと、ジムニーノマドの中古車価格が落ち着いたのは、人気がなくなって値崩れを起こしたという単純な話ではないことが分かります。

数日で約5万台の注文が入った熱狂的な市場が、増産による納車の進行や受注の再開、そして機能のアップデートを経て、経済の基本である健全な需給関係へと戻りつつあるのです。それこそが約1年半に及ぶ価格変動の正体であり、ジムニーノマドを取り巻く現在の市場におけるありのままの姿と言えるのではないでしょうか。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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