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『八つ墓村』清水崇監督が語る、アレンジされ続ける金田一「原作をそのまま作っても成立しない」

  • 2026.9.22

ミステリー界の巨匠・横溝正史の同名小説を、Jホラーの旗手として世界的に知られる清水崇監督が映画化した『八つ墓村』が9月18日より公開となった。2026年は金田一耕助の初登場から80周年というメモリアルイヤーでもあり、本作の金田一役は尾上松也が務めている。そこでMOVIE WALKER PRESSでは、清水監督に直撃インタビューを敢行!横溝映画につきまとう〈市川崑の呪縛〉からも完全に解き放たれた、画期的な横溝映画リブートとして仕上がった本作の魅力をたっぷり語ってもらった。

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内定ゼロ、彼女ナシ。大学生・井川辰弥(奥智哉)のもとに舞い込んだ母の訃報。奇妙な探偵・金田一耕助(尾上松也)に誘われ、岡山県山奥に潜む「八つ墓村」を訪れる。封印された、ルーツと怨念の記憶が目を覚ます。村では、名家・田治見家の莫大な遺産の相続人である辰弥の帰還に合わせたかのように、不可解な連続殺人事件が発生。金田一耕助と共に、事件に巻き込まれてゆく。誰も知らない"八つ墓"の秘密がいま明かされる。

令和に『八つ墓村』を映画化

――誰も観たことがない『八つ墓村』になっていて驚きました。原作と野村芳太郎監督版『八つ墓村』(77)を踏まえつつ、清水監督にしか撮れない作品になっています。

「野村版の印象が強かったので、最初は自分が手を付けていいものかと思いました。いま、みんなが観たい『八つ墓村』ってなにか。プロデューサーや演出部にも相談しながらこれを入れようとか、それだといままでと同じになってしまうから嫌だとか話し合って作っていったんです。僕としては、いま、新たに作るならこれだろうという映画になった自信は持っています」

『八つ墓村』清水崇監督にインタビュー! 撮影/木村篤史
『八つ墓村』清水崇監督にインタビュー! 撮影/木村篤史

――時代設定を原作の昭和23年(1948年)ではなく現代にしたのも、いまの映画にするための変更ですか。

「野村版でも、公開当時の現代にしていましたが、この令和に『八つ墓村』を撮ると考えると、原作の時代設定だと、お話も金田一のキャラクターも成り立たないと思ったんです」

――現代の話となると、インターネットをどう扱うかという問題も出てきますね。

「そうなんですよ。ネットを駆使してプロファイリングする金田一を見たいわけじゃない。でも、主人公の大学生・井川辰弥が自分の父である田治見要蔵(滝藤賢一)が起こした事件を検索する台本も1回書いたんです。辰弥が要蔵の事件を検索して『これが俺の父さんなのか』と」

――完成した映画では、ネット検索は使っていませんでした。

「20年ぐらい前に、村人を無差別に32人も殺していたら、検索すればすぐに出るじゃないですか。それで、32人という数字を劇中で言わないようにしました。殺しの数字にちなんだ殺人や謎解きもやめようと」

突然発狂し、村人を虐殺していく田治見要蔵 [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
突然発狂し、村人を虐殺していく田治見要蔵 [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――それによって、殺人の順序や誰が殺されるかも原作と大きく変わっていきます。これまでの映像化作品を観ている人でも、次になにが起きるか予想がつきません。

「原作や野村版では、弁護士事務所で井川丑松という辰弥の母方の祖父が殺されるのが第1の殺人でした。次に死ぬのは、辰弥の義兄の田治見久弥だったんですよね。今回はそれを両方ともやめました」

――映画は、辰弥の母の井川鶴子(中島亜梨沙)の死から始まりますが、次に死を遂げるのは、久弥の主治医である久野医師(川瀬陽太)です。村で起きる最初の殺人ですね。

「久野医師は、村人に田治見家が元凶だと思わせる目印みたいな殺され方にしたかった。それで田治見家の屋敷の前で、晒し者のように、くの字に折って死ぬようにしたんです」

横溝映画のランドマーク・広兼邸

――田治見家の屋敷は、岡山県高梁市に現存する広兼邸で撮影されています。江戸時代後期に庄屋が建てた荘重な母屋と楼門は、村の権力者の住居に相応しい威容です。横溝映画では、野村版『八つ墓村』で初めて使用され、市川崑監督版『八つ墓村』(96)でも田治見家として登場しました。テレビドラマの横溝作品でも繰り返し使用されていて、ファンにはおなじみの建物です。

「広兼邸は使いたくなりますね。でも、『なんで田治見家は毎回広兼邸じゃなきゃダメなの?』っていう意見もあるので、いまならドローンも使えるから、これまでとは違った角度で見せられる。広兼邸の眺望のいい庭先に座った辰弥が、森美也子(堀田真由)と話をするシーンが僕は気に入っているんですが、あそこで怪異が起こるくだりがあったんです」

広兼邸も『八つ墓村』の魅力のひとつ [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
広兼邸も『八つ墓村』の魅力のひとつ [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――どんな怪異が?

「落ち武者の尼子義孝が…。これは言わないほうがいいかな。撮影したもののカットしました(笑)」

――野村版では、広兼邸でのロケに加えて、鳥取県日野郡に広兼邸をそっくり再現したオープンセットを建てて、クライマックスの炎上シーンを撮影していましたね。

「あのセットはよく出来ていますね。何回観てもすごい。当時はCGがないから本当に燃やして。今回の『八つ墓村』は、炎上する広兼邸から始まるんですが、これはCGです。冒頭をどう始めるか、いろいろ意見はあったんですが、プロデューサーからの発案で、“誰だかわからない女の目に、田治見家の屋敷が燃えているのが見える。それは彼女にだけ見えている幻想で、それが未来なのか、過去なのかわからない”というのがあったんです。おもしろいと思って、そのアイデアを使わせてもらいました」

尾上松也=金田一耕助の創造

――尾上松也さんが演じた金田一耕助は、市川版『八つ墓村』の豊川悦司さん以来、30年ぶりに映画へ登場した新たな金田一です。日本で最も有名な探偵を、どう捉え直しましたか。

「天然なのか、本気ですっとぼけているのか織り混ざっているところが可愛らしい。大人の魅力と子どもっぽいところが同居している人だと思うので、そういう金田一像をやりたかった。それから、ほかの人が気づかなかった人間の闇に、金田一だけ気づくのはなぜか。金田一の中にも闇があるということも、なんとなく表現したかったんですね」

尾上松也が演じる、現代的にリファインされた金田一耕助 [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
尾上松也が演じる、現代的にリファインされた金田一耕助 [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――松也さんは、その雰囲気もすばらしいのですが、声がいいですね。渥美清さんや石坂浩二さんの金田一と同じく、声に説得力がありました。

「その意見はうれしいですね。声に触れてもらえたのは初めてかもしれない。僕は、松也さんが、すっとぼけている感じがわざとらしくないのがよかったなって思うんですよね。石坂(浩二)さんの金田一もそんな感じがありましたね」

――映画の後半で、“横溝映画の一線”を越える瞬間があります。その時、『もう私の手には負えない』と金田一が腑抜けになってしまいます。

「松竹さんからの要望と僕が手掛ける限り、避けようのない矛盾点も生じて…金田一が、いままで見たことのない形で挫折というか、腰砕けになってしまうのをやってみたかった。これが一番、横溝ファンを敵に回すかもしれないところなんですけど(笑)。あそこで辰弥が『なにやってんですか、しっかりしてくださいよ』って支える事で2人の立場が入れ替わるんです。辰弥は、自分は一体何者なのかを知ろうとして挫折する受け身な青年なんですが、あの辺りから目覚めていく。あそこは難題だと思ったんですが、僕としては上手く乗り越えられたんじゃないかと思っています」

辰弥の成長譚にも注目 [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
辰弥の成長譚にも注目 [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――今回の金田一の衣装については?

「現代劇にするからには、さすがに羽織袴にチューリップハットってわけにはいかない(笑)。普通にとけこめるスタイルでありつつ、こだわった帽子は持っているんだろうなと。それで、生地の見本から選ばせてもらって、フランス在住の日本人デザイナーの方に頼んで金田一のコートもオーダーメイドしたんです」

――夜更けに、どこかへ向かう田治見家を取り仕切る双子姉妹の小梅・小竹(高島礼子)を尾行する場面では、金田一は従来のイメージに近いスタイルになりますね。

「そうそう、浴衣の上にコートを羽織る(笑)。ああいうチグハグさが僕は好きなんでしょうね。おじさんを見るとやりたくなる。『ミンナのウタ』(23)でも、マキタスポーツさんがバスローブで外に飛び出して行っちゃったりしますから」

耳を触り悩む金田一 [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
耳を触り悩む金田一 [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――金田一といえば、フケまみれの髪をかきむしるおなじみの仕草ではなく、耳たぶを揉むというクセを新たに付けていますね。

「頭をかくのはもういいだろう、尾上松也版ならではの痕跡を残したいと思ったんです。松也さんと相談するなかで、耳たぶを触る癖があると聞き、取り入れました。推理や考察に入り込んで途中から『耳たぶを両方さわりましょうか』と。その時は相当混迷しているのでしょうね(笑)」

原作と映画の関係

――『八つ墓村』は今回が11回目の映像化です。原作ファンからすれば、何度映像化されても原作の重要な要素が削除されてしまう不満があります。とはいえ、原作へ忠実に映像化すれば、それが映像作品としておもしろくなるかというと別問題ですね。

「そのまま作っても成立しないと思いますね。ただ、映画でもカットされることが多い里村典子を見たくなるという意見は、僕もわかります。原作だと辰弥は典子と恋仲になりますから。その典子が登場しないのは、クラリスのいない『ルパン三世 カリオストロの城』(79)みたいなものですよね」

原作をそのままやると映画では成立しないと説明する清水監督 撮影/木村篤史
原作をそのままやると映画では成立しないと説明する清水監督 撮影/木村篤史

――清水版『八つ墓村』に典子がどう絡んでくるか、原作ファンにも注目してもらいたいですね。

「典子ファンの要望にお応え出来ているか?はさておき…僕としては、永瀬莉子さんの典子は、過去の映像化よりも、かなり原作の典子像に近いんじゃないかと思いますけどね」

――滝藤賢一さんが演じる田治見要蔵によって村人が大量殺戮される20年前のシーンは、圧巻です。それぞれ殺し方に工夫が凝らされていました。

「そのへんはもう、ジェイソンやフレディと同じように。カップルが乗る車の屋根に要蔵を仁王立ちさせて撃つところは、僕がそれを見たいと思ったから。それに、好きな人はたぶん、これを見たいはずだと(笑)」

【写真を見る】車の上からカップルをズドン…田治見要蔵のトラウマ必至な大殺戮シーン! [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
【写真を見る】車の上からカップルをズドン…田治見要蔵のトラウマ必至な大殺戮シーン! [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――辰弥に村へ来てはならないと警告する濃茶の尼は、野村版では『たたりじゃ!』と連呼する老婆でしかありませんでしたが、原作では要蔵の村人殺しで夫と子どもを亡くし、気が変になったと説明されています。今回は彼女の被害者としての側面もクローズアップされています。

「そこまで描いているのがいままでなかったので、ちゃんと見せ場になるかなと思ったんです。そこになにかを感じ取ることが出来るのが金田一なので。ただ、名前は変えました。濃茶の尼って名前は、いまだと『なに?』ってなるじゃないですか。それで、ちょっと思い切ったことをやりたいと思って、現代でそういう怪しい女にするのなら、僕が直ぐに浮かんだのは、名古屋の通り魔殺人事件の『ひらひらさん』」

――2003年に名古屋で起きた連続通り魔事件では、犯人の女性が、精神に変調を来して、ひらひらした服を着て近所を徘徊していたことから、「ひらひらさん」と呼ばれていました。

「それで名前をちょっともじって、今回の映画では濃茶の尼ではなく、『フリフリさん』に」

原作には登場しないフリフリさん、どう物語に絡んでくる? [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
原作には登場しないフリフリさん、どう物語に絡んでくる? [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――原作では夫と息子を亡くしたという設定でしたが、今回は笹野鈴々音さんが両親を亡くしたゴスロリスタイルの女性として演じています。川で親子が遊んでいるのを、じっと眺めている『フリフリさん』の何気ないカットからも、あの事件が彼女になにをもたらしたかを感じさせました。

「それはよかった。あのカットを僕はどうしてもやりたくて、台本でも最後まで残していたんです。編集でいろんな人たちから、『ここ要ります?』って言われかねないと思っていたんですが、あそこは金田一の孤独と共鳴するところでもあるので」

――ところで、「フリフリさん」の父親の名前には豊川浩二とありましたが、あれは金田一を演じた某俳優2人の名前を合体させたものですか?

「さあ、どうでしょう。ちなみに、冒頭で辰弥のアパートにお母さんのことを訊きに来た生活安全課の2人の刑事の名前は、市川と野村です(笑)」

高島礼子が演じる、田治見小竹/小梅) [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
高島礼子が演じる、田治見小竹/小梅) [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――『八つ墓村』は400年前の尼子の落ち武者から、田治見要蔵、辰弥に至るまで男たちが矢面に立つ物語と思いがちですが、今回は、辰弥の母の鶴子に始まり、美也子、典子、双子の小梅・小竹、フリフリさんと、女性たちへの眼差しを随所で感じました。

「そうかもしれない。原作は辰弥の手記という形式になっているし、彼のルーツを探る旅であり、成長譚になっているんですが、僕は美也子にもそれをちょっと置きたかったんですよね。それで田治見家の屋敷の庭先で、辰弥と美也子がふたりきりで話すシーンを後々効いてくるようにしたんです」

――辰弥の名字も、原作やこれまでの映像化作品では、母の再婚相手の寺田姓を名乗っていましたが、今回は母方の姓である井川を名乗っています。

「これはプロデューサーたちと、原作ではこう名乗っていて、この版ではこうだというのを話していて、義理の父がいなかったとしたら、井川を名乗っているよねと言いながら、今回は田治見でも寺田でもなく、井川にしようと」

今作の辰弥は「井川」姓を名乗る大学生 [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
今作の辰弥は「井川」姓を名乗る大学生 [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――世間では、清水監督が原作を無視して好き勝手に改変していると思われているようですが、実際は、原作やこれまでの映像化を踏まえたうえで、慎重に置き換えていくアレンジを随所で見ることが出来ます。

「なんで僕だけ言われるんだろう。野村版も相当なんですけどね。屋敷が燃えるのも原作にはないし、吹っ飛んだ生首が腕を噛んだりするし。オープンカーで村に乗りつける、『悪魔の手毬唄』(61)の高倉健さんの金田一はどうなるんだ!(笑)」

新たな観客が〈横溝正史〉と出逢うために

――清水監督が『八つ墓村』を知ったのはいつですか。

「おぼろげな印象があるのは、幼稚園か小1くらい。『8時だョ!全員集合』の舞台上のコントで、志村けんさんが『たたりじゃー!』って言いながら、加藤茶さんを追いかけ回していました。あれで映画を観ていない子どもたちにも浸透したんですよね。学校でも流行って。だいぶ後から、『たたりじゃー!』って言ってたのは、野村芳太郎監督のこの映画のことだったのかとわかったんです。僕は野村監督の『鬼畜』(78)が未だにトラウマなんです。『震える舌』(80)もそうですけど。いまもご健在なら絶対ホラーを撮ってますよ(笑)」

――今回の『八つ墓村』にオファーを受けた時点では、すでに方向性は固まっていたんですか。

「企画としては6年前ぐらいからあったらしいんですけど、どうしたものかという状態で。脚本は尾ヶ井慎太郎さんとプロデューサーで進めてくれていたのがあって。まず、その時点で出来上がっていたものを読んでくださいということでした。そこに僕の意見を反映してもらいつつ、最終的には僕がギリギリの時間のなかで悩み抜いて最終稿にリライトさせていただきました」

――とはいえ、市川崑監督の『犬神家の一族』(76)と野村版『八つ墓村』から、横溝映画というと大作のイメージがつきましたが、それ以前は短期間で作られたプログラムピクチャーとして作られていましたね。

「そうなんですよ。最初に片岡千恵蔵さんがやったシリーズは、金田一はスーツにハットで、美人のアシスタントを連れて拳銃を持っていたり、『007』みたいですからね」

――野村版以外の過去の作品はご覧になりましたか?

「片岡千恵蔵さんの金田一で『八つ墓村』(51)を作っていますが、フィルムが残っていないので観られませんでしたね。そういえば、最近やっと1時間ドラマでやったものを観たんですよ」

若い層にまず観てほしいと熱く語る清水監督 撮影/木村篤史
若い層にまず観てほしいと熱く語る清水監督 撮影/木村篤史

――1969年にNET(現テレビ朝日)の「怪奇ロマン劇場」枠で放送された「八つ墓村」。金田一は医学博士という設定で金内吉男さんが、辰弥役は若き日の田村正和さんが演じています。

「あれはすごいですよね。観たのは撮った後だったんですが、ほか幾つかのテレビドラマ版より好きかもしれない。でも、どれを観ても『八つ墓村』は映像にするのが難しいと思いました」

第30回ファンタジア国際映画祭でワールドプレミアが行われた [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
第30回ファンタジア国際映画祭でワールドプレミアが行われた [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――本作の初号試写には、横溝正史さんの娘である野本瑠美さんがお越しになっていましたね。上映後も監督にずっと話しかけられていました。

「そうなんですよ。父の世界観と僕のクリエイティブとが融合されてすばらしかったと言ってくださったので、担保をもらったわけではありませんが(笑)、うれしかったですね。その隣には野村芳太郎監督のご家族も。まさか初号試写に、横溝先生と野村監督のご遺族が来てくださるとは思わなかったので緊張しました。先日は、カナダの第30回ファンタジア国際映画祭に、アメリカ在住の横溝先生のお孫さんにあたる野本温さん夫妻が、車で何時間もかけてカナダまで来てくださって観てもらえたんですが、それもうれしかったです」

――エポックメイキングな『八つ墓村』が完成しましたが、観客にはどう受け止めてもらいたいですか。

「なにも知らない、あるいはタイトルしか知らないような若い層にまず観てほしいんですよ。ここを入口に興味を持ってもらって、原作へ立ち返ってもらうのもいいし、映画の野村版、市川版、テレビには稲垣吾郎さんが金田一を演ったものもあるし、そんなふうに興味を広げてもらえるとうれしいですね。一番手強いのは、原作や野村版を知っている層でしょうけど(笑)、今回自ら手掛けて『映画って、映画好き程、“思い出補正”する傾向も強いんだな』と感じたり…もしたので、なるべくフラットに新たな目線で観ていただけたら嬉しいです。あまり自分では自作にこういうことは言わないんですが、おもしろいと思うんですけどね。気に入ってもらえるとありがたいです」

『八つ墓村』は公開中! [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA
『八つ墓村』は公開中! [c]2026「八つ墓村」製作委員会 [c]Yokomizo Seishi/KADOKAWA

――シリーズ化を期待したいのですが、今回のテイストで『悪魔が来りて笛を吹く』をやるとかどうですか。

「いやぁ、どうだろう。『犬神家の一族』はもういいんじゃないっていう感じがしているので、僕は『悪魔の手毬唄』に興味がありますね」

取材・文/吉田伊知郎

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