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「最後の手紙で泣くんじゃないの?」→「俺は泣かんぞ」と言っていた伯父。披露宴も終盤、伯父を見ると

  • 2026.9.20

「俺は泣かんぞ」と笑っていた伯父

いとこの結婚式に呼ばれたのは、秋のはじめでした。親戚が集まるのは祖母の法事以来で、受付に並んだときから、私は少し緊張していました。

円卓で隣になったのは、母の兄である伯父です。昔から口数が少なく、祖母の葬儀でも人前ではほとんど涙を見せなかった人でした。

「久しぶりだな。元気だったか」

「はい。伯父さんも変わらないですね」

「いやいや、もう年だよ」

伯父が笑ったので、私もようやく肩の力が抜けました。

乾杯のあと、親戚がいとこの子どもの頃の話を始めると、テーブルはすぐに笑い声に包まれました。いとこが三輪車でわが家の花壇に突っこんだ昔話には、伯父も声を立てて笑っていました。

その流れで母が、伯父に冗談っぽく言いました。

「最後の手紙で泣くんじゃないの?」

すると伯父は、すぐに首を振ります。

「俺は泣かんぞ。そういうのでは泣かん」

「はいはい」

母が笑うと、伯父は「本当だって」と言いながら料理に目を戻しました。

2度の「ありがとう」に、伯父が目を伏せた

披露宴も終盤になり、会場の照明が落ちました。

新婦になったいとこが、両親への手紙を広げます。少し震える声で思い出を振り返ったあと、顔を上げました。

「お父さん、お母さん。今まで本当に、ありがとう」

いとこはそこで一度言葉を止め、目元をぬぐいました。

そして最後に、もう一度だけ小さな声で言いました。

「……ありがとう」

会場のあちこちから、鼻をすする音が聞こえてきました。

ふと隣を見ると、さっきまで「泣かん」と言っていた伯父が、前を向いたまま指の背でそっと目じりをぬぐっています。

私は伯父の手元へナプキンを寄せました。

「伯父さん、泣かないんじゃなかったんですか」

伯父は少し黙ってから、こちらを見ずに答えました。

「……うるさいな」

「泣いてますよね」

「ちょっと目にきただけだ」

そう言いながら、伯父はもう一度鼻をすすりました。

私はそれ以上からかわず、前を向きました。

手紙の中で聞いた「ありがとう」は2度だけ。それでも、その短い言葉だからこそ胸に残るものがあったのかもしれません。

披露宴がお開きになったあと、会場の出口では新郎新婦が参列者を見送っていました。

伯父もいとこの前で足を止めます。

「今日はよかったな。おめでとう」

「ありがとう」

いとこが笑うと、伯父は少し照れたようにうなずきました。

帰りぎわ、クロークの前で私が声をかけました。

「伯父さん、けっこう泣いてましたね」

「まだ言うのか」

「だって、泣かないって言ってたから」

伯父は困ったように笑ってから、コートを受け取りました。

「……まあ、今日は仕方ないな」

それだけ言うと、少し照れくさそうな顔で先に歩いていきました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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