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「小さい子が先でしょ!」ブランコの列を抜かした親子。順番を諦めた子どもたちを呼び戻した父親の一言

  • 2026.9.15
「小さい子が先でしょ!」ブランコの列を抜かした親子。順番を諦めた子どもたちを呼び戻した父親の一言

ブランコを待つ列

二年ほど前の夕方のことだ。私は下の子を連れて、歩いて行ける小さな公園にいた。

日が傾き、砂場のほうから「そろそろ帰るよ」と子どもを呼ぶ声が聞こえはじめる時間だった。

その公園のブランコは1台しかない。

夕方になると順番待ちができることも多く、その日も小学生くらいの子が3人、一列になって待っていた。

先頭の男の子が、ブランコを見ながら後ろの子に言った。

「もうちょっとで空きそう」

「ほんと?じゃあ次、ぼくらだね」

3人はそのまま列を崩さず、乗っている子が降りるのを待っていた。

そこへ、年長さんくらいの女の子を連れた母親がやってきた。二人は列の横を通り、そのままブランコの前へ向かった。

ちょうど一人の子がブランコから降りると、母親は娘の背中を軽く押した。

「ほら、空いたよ。乗っておいで」

先頭にいた男の子が「あれ?」という顔をして、それから遠慮がちに声をかけた。

「あの…ぼくたち、並んでたんですけど」

母親は男の子をちらっと見た。

「小さい子が先でしょ」

男の子は困ったように後ろの二人を振り返った。それでも、もう一度だけ口を開いた。

「でも、次ぼくらの番で…」

すると母親は少し強い口調で返した。

「だから、小さい子が先でしょ!」

3人とも黙ってしまった。

周りのベンチにいた大人たちも、そのやり取りには気づいていたと思う。ただ、誰もすぐには声をかけなかった。私も下の子の水筒を持ったまま、どうしたものかと見ていた。

やがて先頭の男の子が「もういいよ」と小さく言い、3人は砂場のほうへ歩きかけた。

「待ってたんだから、戻っておいで」

そのとき、少し離れたベンチに座っていた男性が立ち上がった。並んでいた子のうち、一人の父親だった。

父親は歩き出した子どもたちに声をかけた。

「待って。君たち、ずっと並んでたんでしょ。戻っておいで」

男の子が足を止めた。

「でも、小さい子が先だって…」

「うん。でも、順番に待ってたんだから大丈夫だよ」

子どもたちは顔を見合わせてから、もう一度ブランコの手前へ戻った。

父親はそのまま母親の近くまで行き、落ち着いた声で話しかけた。

「すみません。この子たち、さっきから並んで待ってたんです」

母親は少し表情をこわばらせた。

「でも、まだ小さいので…」

「小さいのは分かります。でも、みんな順番を待ってるので、そこは同じでお願いできますか」

父親は声を荒らげなかった。

母親は何も言わず、並び直した3人を見た。それから少し間を置いて、娘に声をかけた。

「……ごめん。一回降りようか」

女の子が驚いた顔をした。

「え、もう?」

「うん。後ろに並ぼう」

「まだ乗ってないよ」

「分かってる。でも、先に待ってた子がいるから」

女の子は少し残念そうだったが、母親に手を取られてブランコを降りた。母親は父親のほうを見て、小さく「すみません」と言った。

父親も「いえ」と短く返しただけだった。

母娘は3人の後ろへ回った。

父親は子どもたちに、

「ほら、戻っておいで。次だよ」

と声をかけた。

先ほどまで諦めた顔をしていた男の子が、「うん」と返した。

そのあとブランコは、空いたら次の子が乗る、いつもの順番に戻った。父親は自分の子がブランコに乗るところまで少し離れて見守り、それから元のベンチへ戻った。

帰り道、下の子が私の手を引きながら言った。

「あのお父さん、怒らなかったね」

「うん。順番だったよって、ちゃんと話してたね」

「怒らなくても分かるんだね」

私は少し考えてから、「そういうときもあるね」と答えた。

公園を出るころには、またブランコの鎖が規則正しく鳴っていた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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