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「本当に、うちのじゃないですよ」荒れていた集積所。だが、住人たちの取り組みで状況が少しずつ変わった

  • 2026.9.15

回収されずに残る袋

今の集合住宅に移って四年になる。四十代に入ってから朝が早くなり、ごみを出しに一階へ降りるのが、一日の最初の用事になった。

だから集積所の状態は、よく目にしていた。

その集積所が、長いあいだひどい状態だった。分別されていない袋が回収されずに置き去りになり、何日もそのまま残る。

夏には、扉を開ける前から臭いが分かることもあった。

管理の人に伝えたことは一度や二度ではない。そのたびに手帳へ書き留めてくれたが、返ってくる答えは似たようなものだった。

「困りますよね…。ただ、誰が出したものか分からないんです」

「やっぱり、分からないですよね」

「置いているところを見た人もいないので、特定のお宅に言うのも難しくて」

管理の人も困っているのは分かった。袋に名前が書いてあるわけではないし、置くところを見た人もいない。責める先がないまま、回収されない袋だけが残っていった。

ある朝、集積所には分別されていない袋が3つ並んでいた。

ちょうど同じ階の人が自転車を出しに来たので、私は思わず声をかけた。

「すみません。これ、どなたのものか何か知りませんか?」

相手は袋を見て、すぐに首を振った。

「えっ、うちのじゃないですよ」

少し強い言い方に聞こえて、私は慌てて手を振った。

「あ、違うんです。責めてるわけじゃなくて。いつも残ってるから、何か知ってるかなと思って」

「いや、本当にうちのじゃないですよ。誰のかも分からないです」

「そうですよね。朝から変なこと聞いて、すみません」

相手は少し気まずそうに会釈して、自転車を押して出ていった。

その背中を見ながら、私も嫌な気持ちになった。誰が出したのか分からない以上、こうして聞いて回れば、疑われたと思う人が出てくるだけなのかもしれない。

掲示板に貼り出された当番表

その日から、私は誰の袋なのかを探すのをやめた。一人を見つけたところで、また別の日に同じことが起きるかもしれない。

それより、集積所の状態をみんなで少しずつ気にする仕組みがあったほうがいいと思った。

月末の住人の集まりで、私は思い切って手を挙げた。

「あの、集積所のことでひとついいですか」

何人かがこちらを向いた。

「また回収されない袋が残ってますよね。誰が出したか探すんじゃなくて、順番で朝の様子を見るようにできませんか」

すると、一人が少し困った顔をした。

「当番って、毎回掃除までするんですか?」

「いえ、そこまでじゃなくて。残っている袋があったら管理の方に知らせるとか、表示が外れていたら直すとか。それくらいでいいと思うんです」

「それくらいなら、できそうですね」

別の人も「一度やってみてもいいんじゃないですか」とうなずいた。

管理の人もしばらく考えてから口を開いた。

「では、負担にならない形で一度やってみましょうか。分別の案内も、もう少し見やすくしてみます」

翌週、掲示板に朝の確認当番の表が貼り出された。その隣には、燃えるもの、瓶と缶、古紙を大きな絵で分けた案内も並んだ。文字だけよりひと目で分かるように、管理の人が作り直したものだった。

当番が始まったからといって、すぐに何もかも変わったわけではない。それでも、回収されない袋を何日も見かけることは少しずつ減っていった。

春になり、私の当番の朝が来た。

扉を開けると、回収されずに残っている袋はなかった。床にもごみは落ちていない。

そこへ、ごみ袋を持った上の階の人がやってきた。中を見て、少し笑った。

「今日は何も残ってないですね」

「ほんとですね。前は扉を開けるのがちょっと嫌だったのに」

「このまま続くといいですね」

「ですね」

誰があの袋を出していたのかは、結局分からないままだった。

それでも、誰か一人を探して責めるのではなく、住人と管理側が少しずつ気にするようになったことで、集積所の様子は以前より落ち着いていった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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