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「私が面倒を見るって決まったわけじゃない」葬儀の席で聞こえてきた家族の本音。見ていた私が感じた違和感

  • 2026.9.15
「私が面倒を見るって決まったわけじゃない」葬儀の席で聞こえてきた家族の本音。見ていた私が感じた違和感

開式の少し前、叔母が入ってきた

叔父が急に亡くなったと聞いたのは、平日の朝だった。三十代の私は、子どものころから叔父と叔母の家によく預けられて育っていた。

手続きが立て込んだこともあり、葬儀の日取りは一度うしろにずれた。

その葬儀を翌日に控えた夜、親戚から電話があった。

「叔母さん、体調を崩して運ばれたって」

思わず聞き返すと、電話の向こうで少し間があった。

「明日は無理かもしれないって言ったんだけどね。本人は『行く』って聞かないのよ」

翌日、叔母は開式の少し前に、付き添いの人に支えられながら式場へ入ってきた。

顔色はよくなかった。上着の襟も少し曲がっていて、私は直そうと腰を浮かせたものの、声をかける前に叔母は親族席のほうへ歩いていった。

そこで立ち上がったのが、喪主を務める従兄だった。

亡くなった叔父と叔母の息子で、子どものころには私も一緒によく遊んだ人だ。

叔母の姿を見ると、従兄は険しい顔をした。

「…なんで来たんだよ。無理するなって言われただろ」

叔母はしばらく黙っていた。

「最後くらい、ここにいたいから」

小さな声だった。

従兄は大きく息を吐いた。

「また具合悪くなったら、みんな動かなきゃならないんだぞ」

叔母は返事をしなかった。

すると従兄は親族席から少し離れた後方を指した。

「もういいから。一般席で大人しくしてろ」

叔母が顔を上げた。

「ここじゃ、だめなの?」

その声に、従兄は一瞬黙った。

それでも最後には、低い声で言った。

「今日は向こうで座っててくれ。頼むから」

叔母はそれ以上何も言わなかった。

その席の隣で聞いた家族の会話

叔母が腰を下ろしたのは、いちばんうしろの列の端だった。

付き添いの人がその隣に座ったので、私はさらにその隣、叔母から二つ隣の席に腰を下ろした。

何か声をかけたかった。

けれど「大丈夫?」と言うのも違う気がして、結局何も言えなかった。

読経が始まる前、叔父の弟が親族席へ歩いていった。

そこで、喪主の妹に声をかけた。叔父と叔母の娘にあたる人だ。

「お母さん、このあとどうするんだ」

娘は叔母のほうを一度見た。

叔父の弟が続けた。

「これから一人になるだろ。しばらく誰かが一緒にいたほうがいいんじゃないか」

その言葉を聞いた途端、娘の顔がこわばった。

「それって、私が連れて帰れってこと?」

「いや、そう決めつけてるわけじゃない。ただ、今の状態じゃ心配だろ」

叔父の弟は声を落としていた。

けれど娘の声は少しずつ大きくなった。

「私だって、何でもできるわけじゃないよ」

「分かってるよ。だから、これからどうするかって話を」

「でも、私が面倒を見るって決まったわけじゃないでしょ」

叔父の弟はそこで言葉を止めた。

娘もそれ以上は言わなかった。

誰が悪い、という話では簡単に片づけられないのだと思った。叔父が亡くなったばかりで、これから叔母が一人になる。その現実を、家族の誰もまだ整理できていなかったのかもしれない。

ただ、その会話が聞こえる場所に叔母が座っていることだけが、私は気になった。

焼香の列が動いても、叔母は座っていた

やがて読経が始まり、会場から人の声が消えた。

焼香の案内が始まると、前の列から順番に人が立っていった。

けれど叔母は立たなかった。

膝の上で数珠を握り、正面を見つめたままだった。

私も自分の番を終え、席へ戻る途中で叔母の前を通った。

「叔母さん…」

呼びかけると、叔母はこちらを見た。

「うん。大丈夫」

それだけ言って、また正面を向いた。

式が終わると、廊下では親戚たちがいくつかの輪になっていた。

「あんな言い方しなくてもな…」

「でも、家族にもいろいろあるんだろうし」

そんな声が途切れ途切れに聞こえた。

それでも、叔母のところへ行って何かを言う人はいなかった。

叔母は一般席に座ったまま、付き添いの人が立ち上がるまで動かなかった。

そして私も、結局最後まで何もできなかった。

あの日、叔母が正面を見ながら何を考えていたのか。

それだけは、今も分からない。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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