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「タグもついてるじゃない」5千円の服を返品したい女性。だが、どうしても返品できない理由とは

  • 2026.9.15
「タグもついてるじゃない」5千円の服を返品したい女性。だが、どうしても返品できない理由とは

たたまれたカットソーから、香りが立った

洋服の店で働いていた頃の話だ。週末の午後は特に店が混みやすく、私はレジに入って、途切れない列を順番に進めていた。

そこへ、一人の女性がたたんだカットソーをカウンターに置いた。

タグはついたままで、値札には5千円と印字されていた。

「すみません。これ、サイズが合わなかったので返品したいんですけど」

「かしこまりました。少々確認いたしますね」

品物を預かって広げたところで、私は手を止めた。

首元にはファンデーションのような色がうっすら残っている。さらに、たたみ目を開いた瞬間、香水の匂いがはっきりと感じられた。

店では、着用した跡や匂いが残っている商品については、返品や交換を受けられない決まりになっていた。

言いにくさを感じながらも、私はできるだけ穏やかに伝えた。

「申し訳ございません。こちら、首元にお化粧の跡と、お香りが残っているようでして…」

すると、女性の表情が変わった。

「え?一度合わせただけよ」

「はい。ただ、この状態ですと、返品をお受けするのが難しくて…」

「だから、一度合わせただけよ。外には着て行ってないわ」

さっきより声が大きくなった。

「本当に一度合わせただけよ。それなのに返品できないっていうの?」

三度目は、列の後ろまで届きそうな声だった。

「タグだってついてるじゃない。これで駄目って、おかしくない?」

「申し訳ございません。タグだけではなく、商品の状態も確認する決まりになっておりまして…」

「じゃあ、私が汚したって言いたいの?」

責めるような声に、頭の中が真っ白になった。

「いえ、そういう意味ではなくて…」

うまく言葉が続かない私を見て、女性は少し身を乗り出した。

「もういいわ。責任者の人、呼んでもらえる?」

列はすっかり止まっていた。後ろに並んだ人たちが気まずそうに視線をそらすのが、視界の端に入った。

店長は、商品の状態を見て同じ答えを返した

売り場の奥から店長が出てきた。

「代わるね」

私に小さくそう言い、背中に軽く手を添えて位置を代わった。私はカウンターの奥へ一歩下がった。

店長はカットソーを広げ、首元や生地の状態を確認した。

「お待たせしました」

「この人、返品できないって言うんですよ。一度合わせただけなのに」

女性はすぐに店長へ訴えた。

店長は商品を確認してから、落ち着いた声で答えた。

「申し訳ございません。こちらはお化粧の跡と香りが残っていますので、返品はお受けできません」

「でも、本当に一度しか着てないんですよ?」

「申し訳ありません。当店では、着た回数ではなく、お持ちいただいたときの商品状態を確認して判断しております」

女性は眉を寄せた。

「じゃあ、どうしろっていうの。5千円もしたのに」

「恐れ入りますが、今回はそのままお持ち帰りいただくことになります」

「…本当に駄目なんですか」

「はい。申し訳ございません」

女性はしばらく商品を見ていた。

それから小さく息を吐くと、カットソーを袋へ戻した。

「分かりました。もういいです」

さっきまでの大きな声はなくなっていた。

女性は袋を持ち、そのまま出口のほうへ歩いていった。

店長はすぐに隣のレジを開け、待っていた人たちへ声をかけた。

「大変お待たせしました。こちらでもお会計承ります」

止まっていた列が二つに分かれ、少しずつ動き始めた。

私も自分のレジへ戻ったが、まだ指先が少し震えていた。次のお客様の商品を袋に入れる手が、いつもよりぎこちなく感じた。

会計を終えた年配の女性が、袋を受け取るとき、私に小さな声で言った。

「大変でしたね。ちゃんと説明してたの、聞こえてましたよ」

「ありがとうございます」

その一言を聞いて、張りつめていた気持ちが少しだけほどけた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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