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「自分を撮ってるだけだよ」大浴場の前でスマホを向ける客。だが、係員の一言で態度が一変

  • 2026.9.13

入口の壁に、同じ貼り紙が3枚並んでいた

夏の休みに、家族で温泉のある宿に泊まった。

夕食のあと、妻と子どもを部屋に残して、私はタオルを持って大浴場へ向かった。

階段を下りた先の廊下に、男湯の暖簾がかかっている。

その手前の壁には、同じ内容の貼り紙が並んでいた。

大浴場付近での携帯電話の使用や撮影はご遠慮ください、という内容だった。

脱衣所や浴場内への持ち込みも控えるよう書かれていた。

そのすぐ近くに、四十代くらいの男性が壁にもたれて座っていた。

携帯電話を耳に当て、大きな声で話している。

「だからさ、今日はもう無理だって。明日でいいだろ」

少しいら立っているような声が、静かな廊下によく響いていた。

私が横を通ろうとしたところで、男性は「じゃあ、また明日な」と電話を切った。

これで終わったのかと思ったが、今度は携帯電話を顔の前に持ち上げ、腕を伸ばした。

自分と暖簾を一緒に写そうとしているようだった。

ただ、その向きでは後ろを通る人まで画面に入りそうだった。

ちょうど大浴場から出てきた年配の客もそれに気づいたらしく、足を止めた。男性の携帯電話を気にするように顔をそむけ、そのまま足早に通り過ぎていった。

私も迷ったが、そのまま黙って通り過ぎる気にはなれなかった。

「すみません。ここ、携帯電話は使わないように書いてありますよ」

男性は携帯電話を下ろし、私を見た。

「え?別に中を撮ってるわけじゃないよ。自分を撮ってるだけだから」

「でも、その向きだと後ろを通る人も写りそうですよ」

そう言うと、男性は面倒そうに眉を寄せた。

「ちょっと写るくらいだろ。減るもんじゃないだろ」

「写りたくない人もいると思いますよ。場所も場所ですし」

すると男性は、さっきより強い口調で言い返した。

「だから、減るもんじゃないだろって言ってるだろ」

これ以上続けても言い争いになるだけだと思い、私はそこで口を閉じた。

言い争う代わりに、フロントへ伝えた

私はいったん階段を上がり、フロントへ向かった。

夜のフロントには、若い係の人と年配の係の人が一人ずついた。私は大浴場の入口で見たことを、そのまま説明した。

「すみません。男湯の前で携帯電話を使っている人がいて…。撮影もしていたので、一度声をかけたんですが、聞いてもらえなくて」

年配の係の人が顔を上げた。

「今もそちらにいらっしゃいますか?」

「さっきまでは、暖簾のすぐ近くにいました」

「分かりました。確認してまいります」

私は少し迷ってから付け加えた。

「ほかのお客さんも通る場所なので、お願いします」

「お知らせいただいてありがとうございます」

係の人はすぐにカウンターを出た。

私も大浴場へ戻るところだったので、その少し後ろを歩いて階段を下りた。

暖簾の前まで戻ると、男性はまだ同じ場所にいた。今度は携帯電話の画面を見ながら、何か操作している。

係の人は男性の近くまで行き、静かに声をかけた。

「お客様、申し訳ございません。こちらでは携帯電話のご使用や撮影をご遠慮いただいております」

男性は顔を上げた。

「電話してただけだよ。中に持って入るつもりはないけど」

「はい。ただ、こちらは大浴場をご利用のお客様が通られる場所ですので、携帯電話はしまっていただけますでしょうか」

男性は壁の貼り紙に目を向けた。

「ここでも駄目なの?」

「恐れ入りますが、ご協力をお願いしております」

係の人は声を荒らげず、落ち着いた調子で答えた。

男性は少し黙っていたが、やがて携帯電話をポケットに入れた。

「…分かったよ」

「ありがとうございます」

それだけでやり取りは終わった。

私は係の人に軽く頭を下げ、そのまま暖簾をくぐった。

特別に難しいことが書いてあるわけではない。それでも、いろいろな人が利用する場所だからこそ、守ってほしいことなのだと思った。

その朝、大浴場の入口はいつもの静かな廊下に戻っていた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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