1. トップ
  2. エピソード
  3. 「正直、ちょっと怖かったです」お店の入口に10分立ち続けた男性。店長に相談しても消えなかった不安

「正直、ちょっと怖かったです」お店の入口に10分立ち続けた男性。店長に相談しても消えなかった不安

  • 2026.9.12

かごを取らないお客さん

夜のシフトに入って一時間ほどたったころ、店内のお客さんが途切れました。

自動ドアが開き、薄いジャンパーを着た中年の男性が入ってきます。

「いらっしゃいませ」

いつものように声をかけましたが、返事はありませんでした。

男性はかごも取らず、出入口のマットの上で立ち止まりました。商品棚へ向かう様子もありません。

最初は、誰かを待っているのかなと思いました。

私はおでんの鍋の縁を拭き、備品を補充しました。

それでも、顔を上げるたびに男性は同じ場所にいます。

しかも、視線はこちらに向いたままでした。

さすがに気になり、私は少し迷ってから声をかけました。

「あの…何かお探しですか?」

男性は答えません。

聞こえなかったのかと思い、もう一度だけ声を張りました。

「商品、分からないものがあればお声かけくださいね」

それでも反応はありませんでした。

怒っているようにも、困っているようにも見えません。

ただ黙ったまま、こちらを見ています。

だんだん落ち着かなくなり、私はレジ横の時計を確認しました。

男性が入ってきたのは九時二十分ごろ。もう九時三十分になっています。

「何なんだろう…」

思わず小さくつぶやきました。

そのとき、常連の女性が店に入ってきました。男性は女性が通れるぶんだけ体を横へずらします。

私はいつも通り会計をしましたが、その間も男性の視線が気になって仕方ありませんでした。

女性が店を出ると、男性もそのあとに続くように、何も買わないまま外へ出ていきました。

「また来たら、すぐ呼んで」

シフトを終える少し前、事務所から出てきた店長に、私はさっきのことを話しました。

「さっき、ちょっと気になる人がいて…」

「どうしたの?」

「出入口のところから、その人は10分こちらを見ていたんです」

店長の表情が少し変わりました。

「10分?ずっと?」

「はい。声もかけたんですけど、何も言わなくて。買い物もしないで帰りました」

「近づいてきたりは?」

「それはなかったです。ただ、ずっとこっちを見てて…正直、ちょっと怖かったです」

そう言うと、店長は少し考えてからうなずきました。

「分かった。何時ごろだったか控えておこう。また来て同じことをしてたら、一人で対応しなくていいから。すぐ呼んで」

「はい。お願いします」

そう言ってもらえて、少しだけ肩の力が抜けました。

ところが、それからも同じ男性は何度か店に現れました。

買い物はせず、出入口の内側に立ち、レジのほうを見ています。数分で帰る日もあれば、もっと長くいる日もありました。

店長がいるときには伝えるようにしましたが、男性はこちらへ近づくことも、話しかけてくることもありません。

防犯カメラにも、出入口付近に立ち続ける姿は残っていました。

最後の日に伝えたこと

学校の都合でアルバイトを辞めることになった最後の日、引き継ぎに入った学生の子と二人でレジに立っていました。

ふと自動ドアを見たとき、あの男性のことを思い出しました。

迷いましたが、何も言わずに辞めるのも気になり、私はその子に声をかけました。

「あの、ひとつだけ。もし入口のところにずっと立ったままの人がいたら、無理に一人で対応しないでくださいね」

その子は驚いたように私を見ました。

「え…何かあったんですか?」

「ううん、何かされたわけじゃないんです。ただ、ずっとこっちを見てる人が何度か来てて」

「それ、ちょっと怖いですね」

「そうなんです。だから、変だなと思ったら店長を呼んでください。一人で何とかしようとしなくて大丈夫だから」

「分かりました。ありがとうございます」

その子はそう答えて、自動ドアのほうを一度だけ見ました。

あの店は今も同じ場所で夜通し開いています。男性がその後も来ているのかは分かりません。

結局、私には何も起きませんでした。それでも、何もされていないからこそ、あのとき感じた怖さをうまく説明できなかったことを今でも覚えています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ