1. トップ
  2. エピソード
  3. 「今月も少しだけ貸してほしい」母への援助を続けた姉。だが、困っていた姉妹が決めたルールとは

「今月も少しだけ貸してほしい」母への援助を続けた姉。だが、困っていた姉妹が決めたルールとは

  • 2026.9.12
「今月も少しだけ貸してほしい」母への援助を続けた姉。だが、困っていた姉妹が決めたルールとは

通帳のページが、毛羽立っていた

姉の家の食卓に、開いたままの通帳が置かれていた。

ページの端は少し毛羽立っていて、何度も同じところをめくったことが分かる。

姉は湯呑みを置くと、小さくため息をついた。

「また母から電話があった」

「…また、お金?」

「うん。『今月も少しだけ貸してほしい』って」

姉は通帳を私のほうへ押した。

摘要欄には母への振込が並んでいた。三万円、五万円、また三万円。日付の横には姉の字で小さな丸がついている。

「これ、全部?」

「この3年だけで20回。途中から怖くなって、数えるようになったの」

返ってきた分には二重の丸がついていた。ただ、何も印がない行も少なくない。

「私のところにも電話きたことあるよ。『お姉ちゃんには言わないで』って」

姉が苦笑した。

「私には逆のこと言ってたよ。『妹には心配かけたくないから』って」

「…それ、心配かけたくない人の頼み方じゃないよね」

そう言うと、姉は一度笑った。でも、すぐに視線を落とした。

「分かってるんだけどね。電話で困ってるって言われると、じゃあ知らないって切れなくて」

その頃の姉は、下の子の学費が重なる時期で、パートを一つ増やしたばかりだった。

それでも母から連絡が来るたびに、自分の生活費をやりくりして振り込んでいた。

「姉ちゃんまで困ったら、意味ないよ」

「うん…私も最近、それは思ってた」

「助けない」ではなく、「ここまで」にした

翌週、私はノートを持ってもう一度姉の家を訪ねた。

「ねえ。もう、そのたびに財布から出すのやめない?」

姉は困ったように眉を寄せた。

「でも、本当に足りないときだったらどうするの?」

「何もしないってことじゃないよ。私たちが無理しない額を、先に決めておこう」

私はノートを開いた。

母への援助に使う専用の口座を一つ作り、二人で毎月決めた額だけを入れる。母から頼まれても、出すのはそこにある分まで。それ以上は出さない。

入れる額は、それぞれの収入や家庭の事情に合わせて決め、一年に一度だけ見直すことにした。使った金額も、必ず二人で確認する。

姉はしばらく黙ってノートを見ていた。

「それで母に『足りない』って言われたら?」

「そのときは、一緒に断ろう」

「一緒に?」

「姉ちゃん一人に言わせない。私も同じこと言うから」

その言葉を聞いて、姉の表情が少しだけゆるんだ。

「……そっか。私、一人で何とかしなきゃって思ってたんだ」

月末、母からまた電話があった。

「今月、ちょっと厳しくてね。少しだけお願いできない?」

姉は私と決めた通りに答えた。

「今月出せるのは、決めてある分までだよ。それ以上はごめんね」

電話の向こうで少し間があった。

「前は出してくれたじゃない」

「うん。でも、これからは私たちも無理しないようにしたいの」

しばらくして、母は「……分かった」と答えた。

もちろん、それだけですべてが変わったわけではない。母から頼まれることはその後もあったし、こちらが断れば気まずくなる日もあった。

それでも、「その場で言われたほうが出す」という状態は終わった。

そのやり方を始めて、今年で10年になる。

今でも姉とは年に一度、「今年はこのくらいでいいよね」と確認している。母とも普通に会い、誕生日には二人で顔を出す。

あの日、食卓に置かれていた通帳のように、姉だけが何度も同じページをめくることはなくなった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ