1. トップ
  2. カルチャー・教養
  3. 木にも「筋肉のような仕組み」があり、形を調整していた

木にも「筋肉のような仕組み」があり、形を調整していた

  • 2026.9.9
木にも「筋肉のような仕組み」があり、形を調整していた
木にも「筋肉のような仕組み」があり、形を調整していた / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

斜面に生えた木が、根元は傾いているのに幹の途中から空へ向かって立ち直っているのを見かけることがあります。

植物が光や重力の向きを感じて姿勢を整えることは知られていましたが、自分の曲がりを感じ取って能動的にまっすぐに戻す仕組みについては、直接の決定的な実験証拠が足りませんでした。

今回の研究には前置きがあります。同じ研究機関がおよそ15年前に、植物が自分の形を整える仕組みを持つことを見つけていたのです。当時は動物だけの性質と思われていました。

フランスの国立農業・食料・環境研究所などの研究チームは、その仕組みの中身を、ポプラの若木の実験で突き止めました。若いポプラは曲がった幹の外側に「引張あて材」という特別な木部を作り、自分で曲がりを戻していたのです。

木は自分の曲がり具合を感じ取り、曲がりに応じて材を作ります。海外メディアはこれを、木の筋肉になぞらえました。

単なるばねの戻りではないと言える理由は、重力と光の感知を止めた装置の中で若木がどう動き、どこに材を作ったかにあります。

研究内容の詳細は2026年9月2日に『New Phytologist』にて発表されました

目次

  • 重力と光の感知を止めた「球」の中で、木は立ち直った
  • 「曲がりの感覚」と「重力の感覚」の釣り合いで材ができる

重力と光の感知を止めた「球」の中で、木は立ち直った

重力と光の感知を止めた「球」の中で、木は立ち直った
重力と光の感知を止めた「球」の中で、木は立ち直った / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

難しいのは、幹が元へ戻る動きに、曲げたばねが戻るような受動的な戻りも混ざりうることです。動きだけを見ていては、能動的に戻しているのかどうかを見分けにくい問題でした。

そこで研究チームは、光と重力の方向の感知を必要なときに止められる新しい装置を設計しました。

装置は、あらゆる方向から光を当てた球の中に水平な回転台を置いたものです。若いポプラをまず横に寝かせて幹が光へ向かって上に曲がるまで待ち、その曲がった木をこの回転台に載せて、重力の手がかりを消しました。

若木は、回転台の上で成長しながら少しずつ垂直に近づきました。横向きに置かれた姿勢に逆らう動きです。

その幹には、片側だけに引張あて材ができていました。この材の押し引きが、幹の伸びる向きを変えていたのです。

「曲がりの感覚」と「重力の感覚」の釣り合いで材ができる

「曲がりの感覚」と「重力の感覚」の釣り合いで材ができる
「曲がりの感覚」と「重力の感覚」の釣り合いで材ができる / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

引張あて材はやがて反対側へ切り替わり、二つの側が動物の拮抗する筋肉のように働いて幹を整えていました。

木が曲がりをどれほど敏感に感じ取っているかも、この実験から見積もられました。曲がりの度合いと反応の関係を数値で解析した結果です。

引張あて材の形成をめぐる教科書的な理解を、今回の結果は改めるものだと研究チームは述べています。材は、重力の感覚と自分の曲がりの感覚の釣り合いで作られていました。

研究チームはこれを、木の木質部で働く本物の「感覚と運動の回路」だと述べています。木材の品質にも関わる話で、引張あて材の切り替えがうまく連携しないと、内部に過剰な張力が残ることがあるそうです。

自分の形を整える仕組みが、植物の知られた手立てに加わりました。光を浴びる工夫、塩分ややせた土への対処、病原体への備えといった手立てです。

今回実験で調べたのは、ポプラの交雑種の若木です。

曲がった幹を戻す働きは、光や重力への反応だけで動いているのではなく、木が自分の曲がりを感じ取ることで駆動されていました。木は動かないもの、というイメージが少し揺らぎます。

参考文献

Newly identified 'muscles' shape trees in way once thought uniquely animal
https://newatlas.com/environment/newly-identified-muscle-trees/

元論文

Proprioception drives tension wood formation for autotropic straightening and postural control in trees
https://doi.org/10.1111/nph.71238

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ