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支援を受ける本人や家族を守るための「成年後見制度」が悲劇を招くことも? 実際の事例から制度の仕組みと課題を問いかけるコミックエッセイ【書評】

  • 2026.9.9

【漫画】本編を読む

※本記事にはセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。

『連れ去られた母は、お骨になって帰ってきました。~成年後見制度の隠された真実~』(鶴屋なこみん:漫画、山口じゅり:シナリオ制作、長谷川学:原案、森脇淳一:監修/竹書房)は、認知症や障がいなどによって判断能力が不足している人々を支えるための「成年後見制度」をめぐり、実際に起きた事例をもとに、その運用によって逆に苦しむことになった本人や家族の姿を、裁判官として35年の経験を持つ弁護士・森脇淳一氏の監修をもとに描いたコミックエッセイだ。

成年後見制度とは、認知症や知的障がい、精神障がいなどによってひとりで何かの契約や財産管理を行うことが難しい人に対して「後見人」を立てて支援する法制度である。本人の財産や暮らしを守るための仕組みだが、本作で紹介される家族たちは、その制度を利用したことによって思いもよらない状況に直面していく。例えば、表題にもなっている軽度認知症の母親をめぐる事例では、娘と一緒に暮らしていた母親は、娘による虐待を疑われ施設へ移され、その後、親子は自由に会うことが難しくなってしまう。そうして、母親は生きて再び自宅へ帰ってくることはなかった。

読んでいて考えさせられるのは、「本人を守る」とは一体どういうことなのかという問題だ。財産を守ることだけがその人の幸せにつながるとは限らない。どこで暮らしたいのか、誰と会いたいのか、家族とどのように過ごしたいのか。本来尊重されるべき本人の意思と、制度の運用との間にズレが生まれたとき、支援してくれるはずの仕組みが本人や家族を苦しめる可能性があることを突きつけてくる。

もちろん、本書で描かれる事例だけをもって成年後見制度を否定することはできない。しかし、家族が認知症になったとき、あるいは自分自身の判断能力が低下したとき、この制度と無関係でいられるとは限らない。だから事後に「知らなかった」とならないよう、制度の仕組みや課題をしっかり知っておくことが大切であると伝えてくるのだ。

本作は自分の身に降り掛かってくるかもしれない実際の事例を通して「本人のための支援とは何か」をあらためて考えるきっかけをくれるだろう。

文=甲斐ハヤト

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