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【60代エンタメ】中村芝翫主演『リア王』開幕!「能舞台×和装」で魅せるシェイクスピアの新境地【新橋演舞場】

  • 2026.9.10

中村芝翫さんが、シェイクスピア四大悲劇のひとつ『リア王』に挑みます。9月6日、東京・新橋演舞場で初日を迎えた本作は、演出家・井上尊晶さんとのタッグによるシェイクスピア劇シリーズの第3弾。舞台や衣裳に“和”の要素を大胆に取り入れ、新橋演舞場ならではのスケール感で描き出す新たな『リア王』です。初日に先駆けて行われた囲み取材を、舞台写真とともにレポートします。 

©松竹
リア王・中村芝翫さん

焼けた能舞台に洋装×着物、新橋演舞場に現れた「和風シェイクスピア」

中村芝翫さん演じる老いた王・リアが、3人の娘に国を譲ろうとしたことから、愛情と権力をめぐる悲劇が幕を開けます。親子の情、裏切り、忠誠、孤独、そして人間の愚かさ。400年以上前に書かれた作品でありながら、現代を生きる私たちにも鋭く問いかけてくる物語です。
 
今回の舞台で大きな特徴となっているのが、従来の『リア王』とはひと味違う“和”の世界観です。
 
物語は、戦火による爆撃で廃墟と化した新橋演舞場から始まります。焼けただれた能舞台が姿を現し、衣裳や小道具にも和の趣がふんだんに取り入れられています。
 
さらに、背景には日本の季節の移ろいが描かれるなど、日本の美意識とシェイクスピアの悲劇が融合した舞台となっています。

©松竹
リア王・中村芝翫さん

リア王を演じる芝翫さんも、その独創的な演出には驚いたといいます。
 
「私はふだん歌舞伎の人間ですので、洋装でかっこよく『リア王』ができるんだなと胸を高鳴らせて稽古場にいったら、戦火に焼かれた能舞台に衣裳は着物でした」
 
女性陣はドレスの上に打掛を羽織り、男性陣はシャツや地頭姿など、洋と和を組み合わせた衣裳になっています。
 
リア王の長女ゴネリルを演じる松下由樹さんは、シェイクスピア作品への出演は今回が初めて。
 
「このように和装で演じるのもとても嬉しく、また緊張もしております」と、その言葉に高揚感をにじませました。

花道があり、提灯が下がる新橋演舞場の空間とも相まって、「新しい『リア王』になる」と芝翫さん。
 
なかでも芝翫さんが注目してほしいと話すのが、物語終盤の幕切れです。新橋演舞場という劇場だからこそ生まれる演出にも期待が高まります。

©松竹
前列左から 小倉久寛さん、松下由樹さん、中村芝翫さん、村田雄浩さん、後列左から 二反田雅澄さん、井上小百合さん、三浦涼介さん、朝月希和さん、大野拓朗さん

権力と愛を失った老王の末路。中村芝翫が魅せる美しく残酷な「リア王」

リア王を演じる芝翫さんは、今年、歌舞伎俳優として大きな節目となる襲名10年目を迎えます。そんな芝翫さんが演じるリア王は、老いと孤独に翻弄されながら、次第に自らの運命と向き合っていく人物。
 
次女リーガンには朝月希和さん、末娘コーディリアには井上小百合さんが扮します。3人姉妹はそれぞれ、父・リア王との関係の中で異なる運命をたどっていきます。

リーガンを演じる朝月さんは、稽古を重ねる中で、「シェイクスピアの描く、人間の芯をつくような台詞」に考えさせられたそうです。

©松竹
左から、リーガン(朝月希和さん)、ゴネリル(松下由樹さん)

井上さんは、400年以上前に書かれた作品でありながら、そこに描かれている人間の姿に強く心を動かされたと言います。
 
「人間の浅はかさや愚かさ、でも美しくて尊くて儚い部分が描かれていて、『人間って何なんだろう』と考えていた1ヶ月間のお稽古でした」

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末娘コーディリア・井上小百合さん

コーディリアは、3人の娘の中で唯一、父に対して偽りのない言葉を伝える女性。実直で嘘がつけない人物だけに演じる難しさもあったそうですが、「まっすぐ世の中を見てみようと考えるに至りました」。

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左からコーディリア(井上小百合さん)、リア王(中村芝翫さん)

一方、リア王を取り巻く人物たちも、それぞれに強烈な存在感を放っています。
 
兄を陥れるエドマンドを演じるのは大野拓朗さん。弟の策略に翻弄されるエドガーには三浦涼介さんが扮します。

©松竹
父と兄を騙し、のしあがろうとするエドマンド・大野拓朗さん

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弟に翻弄されるエドガー・三浦涼介さん

三浦涼介さんは「稽古を経て改めて、シェイクスピア作品の偉大さ、演じることの大変さを感じています。この素晴らしい劇場に入ってお稽古を数日重ねてまいりましたが、ワクワクドキドキが増してきました」と語ります。
 
一方、大野さんも手応え十分の様子。
 
「セリフを発するだけでも腹筋が筋肉痛になるほど、すごくパワーを必要とする作品です。1カ月以上にわたる稽古を通して、ようやくシェイクスピア劇との向き合い方がわかってきました」

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左から、ゴネリル(松下由樹さん)、エドマンド(大野拓朗さん)

「人間って何なんだろう」――哀しくも美しい問いかけ

そして、エドガーとエドマンドの父・グロスター伯爵を村田雄浩さん、リア王に忠義を尽くすケント伯爵を二反田雅澄さん、リア王の道化を小倉久寛さんが演じます。
 
グロスター伯爵を演じる村田さんは、「私にとっては3度目のシェイクスピア作品。まさか新橋演舞場でシェイクスピア作品に参加させていただけるとは」
 
『リア王』について「シェイクスピア作品において最大の悲劇ではないか」と述べ、自身が演じるグロスター伯爵も「かなりの悲劇度を担っている」と、その役どころを分析します。

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グロスター伯爵・村田雄浩さん

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忠臣ケント伯爵・二反田雅澄さん

忠義のあまり、リア王に苦言を呈するケント伯爵を演じる二反田雅澄さんは「シェイクスピアは台本を読んでいても難解なところがたくさんありますが、演出の井上尊晶さんが細かく丁寧に僕たちに教えてくれました。ケント伯爵はとにかくまっすぐな男で、言わなくてもいいことを言っちゃってしまうような男。まっすぐに演じたいと思っています」と気合十分です。

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左から、グロスター伯爵(村田雄浩さん)、エドガー(三浦涼介さん)

70歳を過ぎてシェイクスピア初挑戦!ベテラン小倉久寛が魅せる新境地

©松竹
リア王の道化・小倉久寛さん

印象的だったのが、道化役を演じる小倉久寛さんの言葉です。
 
70歳を過ぎ、50年ほど芝居を続けてきた小倉さんですが、今回が初めてのシェイクスピア作品。
 
「こんなに長くお芝居をやらせてもらっているのに、初めてのことがいっぱいあった」と笑顔を見せながらも、立ち稽古の初日に芝翫さんが膨大なセリフをほぼ入れてきていたことに驚き、「このリア王についていかなきゃいけないのか」と大きなプレッシャーを感じたことを明かしました。
 
芝翫さんを中心とする座組が、シェイクスピアの難解な言葉と真正面から向き合ってきたことが伝わってくるエピソードです。

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左から、道化(小倉久寛さん)、リア王(中村芝翫さん)

翻訳は、イギリス史研究を土台にシェイクスピア作品に取り組む石井美樹子さん。
 
芝翫さんは、「今回は翻訳の石井先生を含めて、座組一丸となって1ヶ月以上の稽古を重ねてまいりまして、大変に手応えがございます」と充実した表情を見せます。
 
「私ならでは、そして新橋演舞場ならではの『リア王』を、多くのお客様に観ていただけますよう願っております」

©松竹
左から、ケント伯爵(二反田雅澄さん)、オールバニー公爵(中村松江さん)、リア王(中村芝翫さん)、コーディリア(井上小百合さん)、エドガー(三浦涼介さん)

開場101年目を迎えた新橋演舞場から始まる、新たな『リア王』。芝翫さんが語る「新橋演舞場ならではの演出」とともに、その世界を劇場で体感してみてはいかがでしょうか。

公演概要

【日程】 2026 年 9 月 6 日(日)初日 ~ 22 日(火・祝)千穐楽
【出演】
中村芝翫さん
松下由樹さん
三浦涼介さん
朝月希和さん
井上小百合さん
大野拓朗さん
二反田雅澄さん
小倉久寛さん
村田雄浩さん ほか
【演出】井上尊晶さん
【翻訳】石井美樹子さん
【公演期間】2026年9月6日(日)~
【会場】東京・新橋演舞場
【チケットのご購入】
◎チケットホン松竹 (受付時間 10:00~17:00) 0570-000-489 または03-6745-0888
◎チケット Web 松竹(24 時間受付/発売初日の受付は 10:00~) http://www1.ticket-web-shochiku.com/t/

この記事を書いた人 杉村道子

カルチャー系を中心にインタビュー記事を執筆しています。趣味は歌舞伎、落語、ミュージル、ストレートプレイに小劇場と、ひたすら雑食舞台鑑賞。年に何本見ているのか、最近は怖くて数えていません。

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