1. トップ
  2. エピソード
  3. 「わかった」と声で返した僕が、用件のあとに毎回つけ足していたもの

「わかった」と声で返した僕が、用件のあとに毎回つけ足していたもの

  • 2026.9.9
ハウコレ

妻は用件にだけ答え、後半につけ足した言葉には触れませんでした。それでも僕は後半を削らないまま2年を過ごしていました。

文字の入力欄に打ったメッセージを、僕はまた送信せずに消しました。

用件だけのメッセージは、いつも送る前に消えていきました

妻に文字で連絡しようとすると、画面に残るのは用件だけです。帰りが遅くなること、ごはんがいらないこと。それを並べた言葉を読み返すと、そこから先を打ち足せなくなります。何か添えようとして書いては消すのを繰り返し、結局は送信を押さないまま画面を閉じていました。声なら、途中で考え直す隙がありません。用件の勢いのまま、最後まで言い切れます。

妻が仕事に追われていた時期に届いた一言が、始まりでした

音声に切り替えたのは2年前です。妻から「長い文章、今は読む余裕がなくて」と届いたことがあり、読ませずに済む形にしたつもりでした。ただ、理由はそれだけではありません。声にすれば、用件の後ろに続けて「そっちも、無理しないで」と置いても、書き直す時間が生まれません。文字の欄では身構えてしまう言い方が、勢いのままなら残せました。話し終えたあとに残る間は、そこへ入る前に息を継いでいる時間です。

返ってくるのは、いつも「了解」だけでした

音声を送ると、妻から返ってくるのはいつも用件に対する「了解」でした。「そっちも、無理しないで」と入れた部分について、何か返ってきたことはありません。もしかすると、最後まで聞いていないのかもしれないとは思っていました。それでも後半を削れませんでした。用件だけにすると、本当に連絡事項だけになってしまう気がしたからです。「用件だけなら、文字で送ってくれる?」と文字が届いた回も、僕は「わかった」と声で返しています。最後まで聞いてほしいとは書けませんでした。書けば、聞かせるために入れているのだと認めることになります。

そして...

妻が用件のあとまで聞いているのかは、今も分かりません。最後まで聞いてほしいとも、まだ言えていません。それでも音声を送るときは、「そっちも、無理しないで」のような一言を、今も用件のあとに残しています。文字で同じことを送ろうとすると、入力欄には用件だけが残ります。足そうとして消した言葉を、声ならまだ言えています。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ