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「このことは1日も忘れないからな!」幼稚園の発表会でクレームを言いに来た保護者。園長が取った対応とは

  • 2026.9.5

発表会の前、鉄琴は一台だけだった

幼稚園に勤めていたころの話です。

発表会が近づき、どのクラスも合奏の練習をしていました。私は隣のクラスの担任で、そのクラスが遊戯室で練習している様子をよく目にしていました。

そのクラスで使っていた鉄琴は一台だけ。合奏では担当する子が決まっていて、いつも同じ子が鉄琴の前に立っていました。

ところがある日、その担当の子が休みました。

発表会までは時間も限られています。練習を止めるわけにもいかず、同僚の先生は、その日だけ別の子に鉄琴をお願いしました。

「今日はここ、お願いしていいかな」

声をかけられた子は、返事をするより先に立ち上がりました。

慣れない手つきで鉄琴を叩きながらも、音が鳴るたびにうれしそうな顔をしていました。

私も、そのときは特別なことだとは思っていませんでした。

次の日の朝、門のところから

翌朝、園庭の門のほうから、一人の保護者がまっすぐこちらへ歩いてきました。

子どもの腕を引き、そのまま同僚の先生の前で足を止めました。

「うちの子も鉄琴がやりたかったのに!このことは1日も忘れないからな!」

大きな声でした。前日の練習について、家で子どもから何か聞いたのだろうと思いました。

かなり強い思いを抱えて来られたことだけは、その様子から伝わってきました。

同僚の先生は、言い返すことなく話を聞いていました。

少し離れた場所にいた私も、どう声をかければいいのか分からず、その場に立ったままでした。

腕を引かれていた子は、遊戯室の隅に置かれた鉄琴をじっと見ていました。

そのあと、私たちは園長に事情を報告しました。園長は少し黙って話を聞いたあと、こう言いました。

「そんなに鉄琴がやりたかったのね」

誰かを叱ることはありませんでした。

その日の午後、普段は運ばない鉄琴が、その子のいる部屋まで運ばれました。

園長は隣に座り、ずっと付き合っていました。

最初、子どもは遠慮するように小さく音を鳴らしていました。

それが少しずつ強くなり、やがて曲とは関係なく、気に入った音を何度も行ったり来たりするようになりました。

「せんせい、このおと、すき」

「こっちのおとも、すき」

その間、子どもはずっと楽しそうに笑っていました。

廊下に出たとき、同僚の先生がぽつりと言いました。

「私、何も言えなかった」

迎えの時間になると、朝来られた保護者が部屋の入口で足を止めました。中では、子どもがまだ鉄琴を叩いていました。

保護者は何も言わず、しばらくその姿を見ていました。

園長は、誰が正しいのかをその場で説明するのではなく、その子がやりたかったことに向き合いました。今でも鉄琴の音を聞くと、あの日の午後の光景を思い出します。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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