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「今日も平和やな、これ読んどいて」勤務先に現れる常連客。だが、毎回渡される手紙の内容とは

  • 2026.9.4

勤務の日によく、小さく折った紙を渡された

ドラッグストアで働いていたころ、よく買い物に来られる年配のお客様がいました。

日用品をいくつか買う日もあれば、飲み物だけの日もあります。

私がレジに立っているときだけでなく、品出しをしているときにも、見つけると近くまで来られました。

そして決まって、手のひらに収まるほど小さく折った紙を差し出されるのです。

「今日も平和やな。これ、読んどいて」

最初は連絡先でも書いてあるのかと思いました。休憩中に広げてみると、紙には何本も折り目がついていて、8つに折りたたまれていました。

書いてあったのは、ほんの短い日記のような文章でした。

昼に定食屋へ行ったこと。出された水が冷たくておいしかったこと。帰り道で猫を見かけたこと。

近くにいた同僚が「何が書いてあるの?」とのぞきこんできたので、その日の内容を読んで聞かせました。

「定食屋のお水がおいしかったって」

「もっと大事なことが書いてあるのかと思ってた」

私も同じことを思っていました。

書かれていたのは、いつも小さな出来事だった

それからも、その方は店に来ると紙を渡してくれました。

傘を持って出たのに雨が降らなかった。魚が安かった。道端の花が咲いていた。

驚くような話は一度もありません。ただ、その日の出来事が二、三行ずつ書かれていました。

こちらから返事を書こうか迷ったこともあります。でも、お客様は感想を求めるわけでもなく、紙を渡すとそのまま買い物を続けたり、店を出たりします。

何か返したほうがいいのか分からず、結局、私は受け取って読むだけでした。

ある日だけ、紙を渡したあとに立ち止まりました。

「ちゃんと読んでるか?」

「はい、読んでますよ」

そう答えると、その方は「そらよかった」と笑って帰っていきました。

そのとき初めて、内容について何か言わなくても、受け取っていること自体でよかったのかもしれないと思いました。

最後の日に、私から伝えたこと

しばらくして、私はその店を辞めることになりました。

最後の勤務日にも、その方はいつもと変わらず店に来ました。差し出された紙を受け取ってから、私は思いきって声をかけました。

「私、今日でここを辞めるんです」

その方は少し驚いた顔をして、それから「そうか」とうなずきました。

「今まで読んでくれて、ありがとうな。元気でな」

私も「こちらこそ、ありがとうございました」と返しました。

帰宅して最後の紙を開くと、書かれていたのは、スーパーでみかんが安かったという、いつもと変わらない話でした。

特別なことは何も書かれていませんでした。

今でも、あの紙を渡していた理由は分かりません。ただ、誰かに今日あったことを渡して、誰かがそれを読んでくれる。そのやり取りを楽しみにしていたのかもしれません。

細かく折られた紙を見ると、ときどき、あの何気ない二、三行を思い出します。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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