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「香典返しは、念のため20人分ほど用意しておいたよ」身内だけの葬儀。だが、祖母が多めに準備していた理由に納得

  • 2026.9.4
「香典返しは、念のため20人分ほど用意しておいたよ」身内だけの葬儀。だが、祖母が多めに準備していた理由に納得

身内だけで送るはずだった、その前の日の夜

高校生のころ、祖父が亡くなりました。

葬儀は大きくせず、身内だけで静かに送ろうと早くから決まっていました。知らせたのも親戚だけだったと思います。

私が知っている祖父は、縁側で新聞を読んでいるか、朝早くから軽トラックで畑へ出ていく人でした。

家に大勢の人が集まるようなことも、ほとんどありませんでした。

葬儀の前日の夜、居間へ行くと、祖母と叔母が畳の上に小さな箱を並べていました。

白い紙で包まれた、同じ大きさの箱です。祖母は一つずつ数えながら、端をきれいにそろえていました。

「香典返しは、念のため20人分ほど用意しておいたよ」

叔母が箱を見ながら言いました。

「そんなに要るかしら」

「余ったら、うちで使えばいいから」

祖母はそう答え、また箱を数え始めました。

親戚の人数を考えても、私には多すぎるように思えました。

身内しか来ないのに、どうしてこれだけ必要なのだろう。そう思いながら、私も横で箱を並べるのを手伝いました。

翌朝、玄関の外に知らない人たちがいた

葬儀の朝、玄関の引き戸を開けると、門の近くに四人ほどの男性が立っていました。

作業ズボンに上着を羽織った人もいて、私には誰なのか分かりません。

そのうちの一人が帽子を取り、静かに言いました。

「畑で一緒だった者です。焼香だけさせてもらって、すぐ帰りますので」

祖母が玄関まで出てくると、その人たちは順番に家へ上がり、祖父に手を合わせて帰っていきました。

それで終わりではありませんでした。

しばらくすると、また別の人が来ました。祖父とよく自転車で出かけていたという人や、畑で顔を合わせていたという人もいました。

皆さん長居はせず、焼香を済ませると、玄関先で祖母に頭を下げて帰っていきます。

祖母はそのたびに、前の晩に用意した箱を一つずつ渡していました。

祖父には、私の知らない毎日があった

葬儀が終わり、食事の席に残ったのは予定どおり身内だけでした。

叔母が箱の残りを数えて、「用意しておいてよかったね」と言いました。

残っていたのは、ほんの少しでした。

祖母は箱を片づけながら、ぽつりと言いました。

「毎朝、畑で会ってた人もいるからね。来てくれる人がいるかもしれないと思って」

その言葉を聞いて、私はようやく分かりました。

家で見る祖父しか知らなかった私にとって、祖父は静かに畑へ出かけて、静かに帰ってくる人でした。

けれど、その途中には毎朝あいさつをする人がいて、一緒に畑仕事をする人がいて、休日に出かける人もいたのです。

身内だけで送ると決めていても、祖父に最後のお別れをしたい人までいなくなるわけではありません。

今でも、あの朝、玄関の外で帽子を手に立っていた人たちの姿を覚えています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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