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「今日は泣いてもいいんだよ」心が折れそうな夜に迷い込んだ不思議な甘味処。甘いものがそっと心に寄り添う癒やしエピソード集【書評】

  • 2026.9.1

【漫画】本編を読む

『泣きたい夜の甘味処』(中山有香里/KADOKAWA)は、お菓子とともに、疲れて泣きたい心にそっと寄り添う甘味処を舞台にしたコミックエッセイ。第9回料理レシピ本大賞 in Japanのコミック賞を受賞した作品で、続編となる『疲れた人に夜食を届ける出前店』も第10回の同賞を受賞した、人気シリーズの第1作だ。

とある町にひっそりと佇む、夜だけ営業する甘味処。熊と鮭が営むこの店には、夢を諦めた人や、大切な人を失った人、自分を責め続けてしまう人など、それぞれに悲しみや苦しみを抱えた人々が迷い込んでくる。この店で提供されるのは温かいお茶と、その人にぴったりの甘味が一品だけ。昔ながらのドーナツや、いちご大福、梅酒ゼリー、プリンといった、どこか懐かしさを感じるお菓子が迷い込んだ人たちの心を優しくゆっくりとほぐしていく。

そんな甘味を口にした登場人物たちは、抱えている悲しみや苦しみが解決するわけではない。しかし、その気持ちを誰かが受け止めてくれながら、温かいお茶を飲み、甘いものを味わう時間によって、ほんの少しだけ前を向く力を取り戻していくのである。その小さな変化が丁寧に描かれていることで、読み手もまた自分の心を見つめ直したくなる。

さらに、作品に登場するお菓子は登場人物それぞれの思い出や人生と深く結び付いているため、エピソードごとに「このお菓子を久しぶりに食べてみたい」と思うだけでなく、「自分にもこんな夜があったな……」という記憶が呼び起こされる人も多いだろう。そして巻末には描き下ろしのストーリーに加えて、11のお菓子レシピが収録されているのもうれしいポイントだ。

泣きたい夜は誰にでもある。そんな時は無理に前を向かなくてもいい。ただ温かいお茶を飲み、甘いものを口にしながら、少しだけ心を休ませよう。本作は、そんな優しいメッセージを伝えてくれる、何度でも味わいたい作品だ。

文=ソルティ・タムラ

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