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「中国のホテル、窓開けたらすぐ壁なんだけど…」SNSで目撃された“異様な光景”に一級建築士がマジメに回答

  • 2026.9.13
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

「窓開けたらすぐ壁なんだけど…」

中国の宿泊施設で、部屋の窓を開けると外の景色ではなく、すぐ目の前に壁のようなものが現れる光景が、SNSでたびたび話題になります。

一般的に窓といえば、外の景色を眺めたり、室内に光や風を取り込んだりするためのものというイメージがあります。それだけに、すぐ目の前が壁になっている場所に、なぜあえて窓を設けるのか不思議に感じる人もいるでしょう。

こうした窓には、どのような理由や役割があるのでしょうか。また、実際に採光や換気の効果は期待できるのでしょうか。日本の住宅やホテルにも同じような造りがあるのかどうかを含め、一級建築士の溝下翔太さんに伺いました。

窓を開けたら目の前が壁…なぜあえて「窓」をつくる?

---窓を開けても、すぐ目の前に壁があるような造りの宿泊施設があります。外の景色を見ることができないにもかかわらず、このような場所に窓を設けるのはなぜなのでしょうか?

溝下翔太さん:

「ひと言でいうと、『窓のない部屋』にしたくないからです。中国のホテル設計のルール『旅館建築設計規範』では、客室を外に面した窓のない場所に置くのは望ましくないとされています。予約サイトでも窓は『有窓』『内窓』『無窓』と分けて表示され、無窓の部屋は敬遠されて料金も安めになりがちです。

ところが、オフィスビルだった建物をホテルに変えたり、奥行きの深いフロアに部屋を詰め込んだりすると、外壁に面していない部屋がどうしてもできてしまいます。そこで建物の内側に人が通れる程度の隙間をつくって窓を開け、向かいの壁を植木や照明で飾って『内窓のある部屋』に仕立てる。これがあの窓の正体です。

いい面もあって、景色はなくても目線が抜けるので、閉じた箱のような窮屈さはやわらぎます。隙間の上が空に開いていれば、間接的に光や風も少し入ります。日本の町家の坪庭や、建物の内側につくる小さな中庭(光庭)と同じ考え方で、植木や照明はその眺めの飾りです。

弱点は、本物の日当たりや眺めがないこと。同じ隙間に面したほかの部屋との間で、気配や音、においが行き交いやすいのも気になります。隙間は掃除や湿気の管理がしづらく、天井でふさがれたタイプなら換気にもほとんど役立ちません。部屋数を優先した造りなので、予約のときは『内窓』と書かれていないか確かめておくと安心です」

目の前が壁でも光や風は入る?「隙間」の造りで大きな違い

---窓のすぐ先に壁がある場合でも、採光や換気といった一般的な窓の役割を果たすことはできるのでしょうか?

溝下翔太さん:

「隙間が空に向かって開いているか、天井でふさがれているかで、答えは変わります。

空に開いている場合、窓に入る光の量は『窓からどれだけ空が見えるか』で決まります。深い井戸の底から空を見上げているところを想像してください。隙間が細く、まわりの壁が高いほど見える空は小さくなり、届く光もわずかです。日本の建築基準法にも『壁が近い窓は採光(光を取り入れること)に数えない』という計算ルールがあって、たとえば窓の上に10mの壁が立ち、向かいの壁まで1mしかない隙間なら、法律上は窓がないのと同じ扱いになります。同じ隙間でも、上の階ほど空が広く見えるので有利です。白い壁の反射で少し明るくはなりますが、部屋を照らす窓とは言いにくいところです。

換気は、隙間が外の空気につながっていれば一応の役目は果たします。ただ、細い隙間の空気はほとんど動かないので、実際にはエアコンや換気設備が主役です。

一方、天井でふさがれた屋内の隙間に向いた窓は、光も外の空気も入ってきません。隣の部屋に向けて窓を開けているのと同じで、採光も換気も効果はゼロ。残る役割は、目線の抜けと、『窓がある』という安心感の演出になります」

日本にも「窓の先が壁」の部屋はある?住宅とホテルでは異なるルールも

---日本の住宅やホテルでも、窓のすぐ先に壁があるような造りは見られるのでしょうか?

溝下翔太さん:

「日本にもよくあります。京都の町家の坪庭は、細長い敷地の奥に光と風を入れる小さな庭で、窓の先は数m先の塀です。住宅密集地では隣の家の壁が1mほど先にある窓は普通で、繁華街のビジネスホテルにも隣のビルの壁が目の前という部屋はよくあります。

法律面では、窓の外が壁であること自体は建築基準法違反ではありません。ただし住宅の場合、壁が近すぎて採光に数えられない窓しかない部屋は、法律上『居室(人が長く過ごす部屋)』とは認められません。間取り図の『納戸』や『サービスルーム(S)』の正体はこれです。

ホテルの客室はルールが2段階です。まず建築基準法では採光の義務がなく、換気も機械換気でよいので、窓の前が壁でも問題ありません。ただし屋内の隙間に向いた窓は『窓のない部屋』と扱われ、火災時の煙を排出する設備や、避難経路の決まりが上乗せされます。そのうえで、営業許可を扱う旅館業法では客室に自然の光を取り入れる設備が必要で、厚生労働省の目安では窓の面積を床面積の8分の1以上としており、さらに東京都では窓のない客室を認めていません。

つまり日本では、外に面した本物の窓があれば目の前が壁でも客室として認められますが、屋内向きの『見せかけの窓』では許可が下りにくいのです。ちなみに防火地域・準防火地域では、隣のビルの壁が近い窓に火が移らないよう、網入りガラスなどの防火ガラスも求められます」

「景色を見る」だけが窓の役割ではない

窓のすぐ先が壁になっている部屋でも、隙間が屋外につながっていれば、わずかながら光や風を取り込める場合があります。また、外が見えなくても目線が抜けることで、閉塞感をやわらげる役割も期待できるとのことです。

一方で、隙間が天井でふさがれている場合には、採光や換気の効果は期待できません。日本でも住宅密集地やホテルなどで窓の先に壁があるケースは見られますが、住宅とホテルでは窓や採光などに関するルールも異なります。

宿泊施設を予約する際、「窓あり」と書かれていても、必ずしも外の景色が見えるとは限らないようです。窓からの眺めや日当たりを重視する場合には、窓の種類や部屋の位置なども確認しておくとよいでしょう。


監修者:溝下 翔太

一級建築士・建築基準適合判定資格者。大学卒業後、設計事務所で5年間、住宅などの設計実務を経験。その後、自治体職員として10年以上にわたり建築確認審査や住宅政策などの建築行政に携わり、「設計する側」と「審査する側」の両方の視点から数多くの建築物を見てきた。現在は「United Archi.Lab」として独立し、住宅・建築分野の記事執筆や監修を中心に活動。執筆実績は400本以上。


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