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「隣の人がぶつけたのに!」60代女性、隣人の車が当てた扉でリアガラスが割れて…賠償の命運を分けたのは?

  • 2026.9.13
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「隣の人がぶつけたのに、うちの車は自腹になることがあるんですか」

契約者のAさん(60代・女性)は、電話口でそう言いました。

ある日、自宅でくつろいでいたAさんの耳に、庭先から「ガシャン」という大きな音が届いたそうです。見に行くと、隣に住むBさん(60代・男性)の車が、Aさん宅の跳ね上げ式カーゲートの支柱に接触していました。

その勢いで、跳ね上げたままにしていた扉が上から落下。ちょうどAさんが停めていた車のリアガラスに当たり、ガラスは割れて、車内にも破片が飛び散っていました。

隣の家にある物が落ちて、自分の車が壊れる。カーポートの屋根、物置、自転車、植木鉢。住宅が隣り合っていれば、どの家にも起こり得ることです。

そして、ぶつけたのは隣人なのだから、壊れたものはすべて相手の保険で直る。そう思うかもしれません。しかし、カーゲートは相手の保険で直っても、車のほうは対象から外れてしまうことがあるのです。

今回は、私が実際に相談を受けた、隣家同士の物損事故のお話です。

相手が謝っても安心はできなかった

Bさんが自宅の駐車場へバックで車を入れようとした際、誤ってAさん宅のカーゲートの支柱にぶつかった。それが、音の正体でした。

Bさんはすぐに車を降り、その場でAさんに謝罪しています。自分の保険会社にも、その場で連絡を入れました。二人は日ごろから挨拶を交わす間柄で、隣人としての関係は良好です。

それでも、Aさんには不安が残りました。カーゲートはともかく、車のほうまで直してもらえるのかが分からなかったからです。

Aさんはひとまず、扉が乗ったままになっている車の様子をスマホで撮影。そのうえで、契約している保険会社の窓口である私に、相談の連絡をしてきたという経緯です。

Aさんの契約内容を確認すると、車両保険には加入していませんでした。相手側から支払われなければ、車の修理費は全額が自己負担になります。

無条件に賠償されるわけではない

対物賠償責任保険は、相手の車の損害だけを賠償するものではありません。壊してしまった相手の所有物が対象です。今回であれば、カーゲートも停めてあった車も対象になり得ます。

Bさんが接触したこと自体は、本人も認めています。確認が必要だったのは、その接触によって扉が落ち、車が壊れたと言えるかどうかでした。

「こうしたケースであれば、車の損傷も一般的には対象になります」

私はAさんに、そう伝えた後にこう付け加えました。

「ただしそれは、支柱への接触から車の損傷までが、ひとつながりの“一連の事故”によるものだと確認できた場合の話です」

記録は味方してくれなかった

何が起きたのかを確かめる手段として、まず思い浮かぶのは映像でしょう。実際、Bさんの車にはドライブレコーダーが搭載されていました。

ところが、それは前方のみを撮影するタイプ。Bさんは駐車場にバックで入ろうとしていたため、支柱に接触した瞬間は、どこにも記録されていなかったのです。

「ドラレコに映ってないと、車のほうは難しいんですね」

Aさんは、そう口にしました。

何が起きたのかを示すものがなければ、Bさん側の保険会社は、車の分について保険金を支払うことができません。頼りになるはずの映像は、この事故に関しては存在しないのと同じでした。

片付けなかったことが結果を分けた

そこで私はAさんに、3つのことを伝えました。

1つ目は、扉が落ちて車が損傷したことを、必ず相手の保険会社に申し出ることです。

2つ目は、保険会社から依頼を受けた調査担当者が現場に来るため、そのときに事故直後に撮った写真を見せること。そして、その写真を加工したり、コピーしたりしないことです。日付の情報がずれてしまうと、事故直後に撮られたものかどうかが判断できず、かえって不利になる可能性があります。

3つ目は、調査担当者が来るまで、車の中を清掃しないことです。

事故のあと、車内に飛び散ったガラスをきれいに片付けてしまう人がたまにいます。しかし、ガラスが内側に飛び散っているかどうかや、その飛び散り方も含めて、事故と損害の因果関係が調査されます。今回のように物が当たった場合は、ガラス以外にも、車体との接触箇所に塗料が付着しているか、その色が一致するかも確認の対象です。痕跡をそのまま残しておくことが、何よりの材料になります。

Aさんは私が伝えたとおり、現場をなるべく動かさず、車内も片付けずにそのままにしておきました。

その甲斐もあってか、損害調査を経て、支柱への接触から車の損傷までが一連の事故によるものと確認。Bさんの対物賠償責任保険で、カーゲートの扉も車も賠償されることになりました。

「片付けなくてよかったです。あのとき掃除機をかけていたらと思うと、ゾッとしますね」

Aさんは、そう話していました。

実は、隣の家でも“トラブル”が起こっていた

この件で救われたのは、Aさんだけではありませんでした。

BさんとAさんは隣同士ですが、なかでもBさんの奥さんとAさんは、とりわけ仲が良かったとのこと。そのため事故のあと、Bさんは奥さんにとても怒られたといいます。

そのうえでBさんが、Aさんの車のほうは賠償できない可能性もあると口にしたところ、「そうなったら絶対に自腹で支払うように」と、毎日のように言われ続けていたそうです。

Aさんがこの話を知ったのは、賠償が決まってしばらく経ってからのことで、奥さんのほうから打ち明けられたのだといいます。

「うちの人、あの間ずっと生きた心地がしなかったみたい」

奥さんは、笑いながらそう話していたそうです。

Bさんにとって、Aさんの車が対物賠償責任保険の対象になるかどうかは、賠償の問題であると同時に、家庭の中の問題でもあったのかもしれません。

隣人との事故で記録が守るもの

隣家同士の事故には、賠償が終わったあとも顔を合わせ続ける関係が続くという特徴があります。「賠償できるか」が、道路上で見知らぬ相手と起こした事故よりも、両者の関係に長く尾を引きかねません。

事故直後の写真はコピーせず、そのまま残しておくこと。そして調査が済むまで、車内や損傷物を片付けないこと。この2点は、複数の物が壊れた事故に限らず、どんな物損事故でも覚えておきたいポイントです。

今回、Aさんが車をそのままにしておいたことで守られたのは、自分の車だけではありません。これからも長く続くご近所付き合いも、Bさんの家庭の平和も、そこには含まれていました。

※保険の適用有無や判断基準は、加入している保険会社や契約内容、個別の事故状況によって異なります


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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