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「無施錠」で駐車中の愛車が盗難に→泥棒が事故を起こしたら…誰の責任?アディーレ法律事務所の見解は

  • 2026.9.13
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

もしも自分の愛車が盗まれてしまい、その車で窃盗犯が事故を起こしてしまったら――。被害者であるはずの自分に、まさか損害賠償の責任が発生することなどあるのでしょうか?

「自分は車を盗まれた被害者なのだから、責任を負うはずがない」と思うのは当然のことです。しかし、実は盗まれたときの状況によっては、車の所有者が法律上の責任を問われてしまうケースが存在します。

今回は、「なぜ被害者である所有者が責任を問われることがあるのか?」という疑問について、アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士に伺いました。

盗難車が事故を起こしたら誰の責任?所有者が損害賠償を求められるケースとは

---もし盗まれた車で窃盗犯が人身事故を起こした場合、原則として責任を負うのは誰になりますか?また、車の所有者が責任を問われることはあるのでしょうか?

正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属) アディーレ法律事務所名古屋支店:

「盗難車で窃盗犯が事故を起こした場合は、原則としてその犯人が責任を負いますが、盗難されたときの状況によっては、車の所有者も責任を問われる可能性があります。

自動車損害賠償保障法(自賠法)では、『運行供用者』は、その自動車の運行によって人身事故が起きたときは、損害賠償義務を負うとされています。この『運行供用者』とは、その自動車の運行を支配し、その運行によって利益を得る立場にある者をいいます。例えば、タクシー会社が雇用している運転手が業務内で事故を起こしたときは、タクシーの所有者であるタクシー会社が運行供用者として責任を負うことがあります。

しかし、盗難車の事故の場合は、一般的に、所有者と運転者(窃盗犯)との間には関係がなく、所有者は自動車の運行につき支配もしていません。そのため、原則として所有者に運行供用者としての責任は認められにくいですが、他人による無断運転を許容していると同視し得るような状況(公道で無施錠、鍵をつけたまま車を離れた)を作った事案で責任を認めた判例がありますので、注意が必要です。

また、自動車の所有者自身に独自の不注意(過失)が認められ、その過失と事故との間に相当因果関係が認められるときは、不法行為に基づいて損害賠償責任を負う可能性があります。もっとも、盗難という第三者の故意の行為が介在していますし、盗難車を実際に運転して事故を起こしたのは窃盗犯ですから、所有者の管理上の過失と事故との間に相当因果関係が認められるかについては、慎重な判断が必要です」

鍵や車の管理状況で判断が分かれる?具体的な「過失」の境界線

---盗難時の車の管理状況は、所有者の責任を判断する上でどのように影響するのでしょうか?

正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属) アディーレ法律事務所名古屋支店:

「盗難時の鍵や車の管理状況は、所有者の責任(過失や運行支配)を判断する上で重要です。道路交通法上、車を離れる際はエンジンを止め、施錠するなど、他人に無断で運転させないための必要な措置を講じることが求められています。そのため、施錠の有無・エンジンや鍵はつけっぱなしだったか・駐車場所は第三者が容易に侵入できる場所か・車を離れた理由や時間・鍵の保管方法・盗難防止措置の有無や内容など、具体的状況に照らして責任の有無を判断することになります。

例えば、第三者が出入りできる場所で、『エンジンをかけたまま、施錠もせずに車を離れた』『車内の見える場所に鍵を置いたまま、車から離れていた』場合は、容易に鍵や車両を盗める状況だったとして、過失や運行支配が認められる可能性があります。しかし、ガレージなど第三者が侵入しがたい場所に保管していれば、責任は否定される方向になるでしょう。

また、『車内の見えない場所に鍵を保管していた』場合は、状況次第ですが、無施錠や第三者の侵入が容易な場所など、盗難の危険性が高まる状況であれば、過失が認められる可能性があります。

もっとも、最高裁の判例では、第三者が出入り可能な駐車場に社用車を停めていたケースで、従業員が、車を施錠せずエンジンキーを運転席のサンバイザーに挟んでいたにもかかわらず、会社の過失を認めませんでした。会社が施錠や鍵の保管について内規を設けていたこと、従業員が内規に違反する保管方法を取っていたことを会社が把握していたとは認められなかったことなどが判断の背景にあります。

一方で、第三者が容易に立ち入れない『自宅の玄関などに鍵を置いており、侵入した第三者に鍵と車を盗まれた』場合は、それだけで所有者に過失があるとは考えにくいでしょう。

そして、『鍵は適切に保管していたものの、車自体を盗まれた』場合は、施錠して鍵も適切に保管していた、さらにガレージに入れるなど盗難されにくい状況だったとすれば、過失は認められにくいでしょう。

さらに、所有者の責任を問うには、過失と事故が発生したこととの間に相当因果関係が認められることや運行支配が残存していると評価されることも必要です。基本的に交通事故は運転者である窃盗犯の責任であり、盗難の被害者である所有者に責任が認められるケースは限定的ですが、例えば、保管状況に問題があることに加え、事故発生が盗難直後で、盗難場所と事故発生場所も近いといった事情は、相当因果関係や運行支配を肯定する重要な事情となりえます」

愛車が盗まれたら放置は厳禁!警察への「盗難届」の遅れと責任問題

---もし愛車が盗まれたことに気付いたあと、警察への盗難届が遅れてしまった場合は、所有者の責任が問われる原因になるのでしょうか?

正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属) アディーレ法律事務所名古屋支店:

「盗難届が遅れたからといって、直ちに所有者の責任が問われるわけではありません。しかし、届出が遅れたことと、事故が起きたこととの間に相当因果関係が認められる場合には、所有者の不法行為責任が問われる可能性があります。

自動車の盗難にあった場合、法的に所有者に盗難届をする義務を課しているわけではありません。盗難に気付き、速やかに警察へ届け出るなど適切な対応をしていれば、盗難発覚後の対応につき、所有者の過失が認められる可能性は低いでしょう。

一方で、盗難届の義務はないとしても、盗難届は、盗難被害を受けたことを警察に知らせて、警察が捜査を開始するきっかけとなるものです。したがって、盗難を知った後も長時間にわたって何らの対応もせず、その間に盗難車が使用され続けることを具体的に予見でき、速やかに通報するなどしていれば事故を防止できたと認められるような特別な事情があれば、過失や相当因果関係が問題となる可能性はあります」

盗難被害に遭ったら「自分は被害者だから」と後回しにせず速やかな届出を

これまで見てきたように、盗難車による事故について、窃盗犯とは何の関係もない所有者の損害賠償責任を認めるためのハードルは高いといえます。

しかし、「窃盗にいつ気付いて、どのような対応をしたのか」は、所有者の責任を検討する上で重要です。自分の責任を回避するだけでなく、誰かの命を守ることにも繋がりますので、盗難被害にあったときは、「自分の車だから」「自分は被害者だから」と対応を後回しにせず、できるだけ早く届け出て、第三者による自動車の使用を防止しましょう。


監修者:正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属) アディーレ法律事務所名古屋支店

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正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属) アディーレ法律事務所名古屋支店

一児のシングルマザーとしての経験を活かし、不倫問題やDV、離婚などの男女問題に精通。TVでのコメンテーターや法律解説などのメディア出演歴も豊富。コメンテーターとして、難しい法律もわかりやすく、的確に解説することに定評がある。アディーレ法律事務所は、依頼者が費用の負担で相談をためらわないよう、弁護士費用で損をさせない保証制度(保証事務所)を導入しています。「何もしない」から「弁護士に相談する」社会を目指しています。

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