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ごみを20年で半減させた「京都」の全方位作戦 3.8兆円の損失を止めるヒント

  • 2026.8.31

食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務めるラジオ番組『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)に出演。年間461万トンにのぼる食品ロスの実態や、3.8兆円に及ぶ経済的な損失、京都市が取り組む食品ロス削減の工夫、私たち一人ひとりにできることについて語った。

まだ食べられるのに捨てられる食品

上柳:まず、「食品ロス」というのは、どういう概念なんですか?

井出さん:国によって定義は違いますが、日本の場合は、まだ食べられるにもかかわらず、捨てられてしまうものを指します。

上柳:私がぱっと思い出すのが「恵方巻き」です。恵方巻きが、節分の日を過ぎると大量に処分されてしまう。これは考え直さなければいけないということで、予約制にしようとか、いろいろと改善されてはいるそうですが。

井出さん:私も恵方巻きの問題に気づいて、2019年から毎年、節分の日の夜間にコンビニなどを自分で回って、どれくらい残っているのかを見ています。

そのうち、高校生や大学生、社会人のボランティアの方も一緒に、全国で数えてくださるようになりました。今年の節分は60人近くの方が参加して数えてくれました。そして、「こういう実態があります。まだまだですよ」ということで問題提起をして、記事として配信したりしています。

上柳:2019年から改善はされたのですか?

井出さん:まだまだです。ただ、2019年に「食品ロス削減推進法」という法律ができたんです。その年と比べると、傾向としては右肩下がりに減ってきています。それでも、日付が変わる手前に、1店舗で恵方巻きが80本近く残っていることもあります。

年間461万トン、金額にすると3.8兆円捨てている

上柳:金額的にはどれくらいの損失があるのですか?

井出さん:日本の食品ロスは年間461万トンです。これを金額に換算すると、食品ロスによる経済損失は年間で約3.8兆円になります。

上柳:家庭から出す食品ロスと、食品を作ったり売ったりする事業者から出るロスを合わせた数字なんですか?

井出さん:はい。家庭系と事業系を合わせて出していて、国民1人あたりにすると、年間で3万1000円以上を捨てている計算になります。

上柳:お金に換算して考えると、とてももったいないですね。家庭系と事業系では、どちらが多いんですか?

井出さん:ほぼ半々です。世界的に見ると、むしろ家庭のほうが60%ぐらいと言われていますから、一人ひとりの力がすごく大きいということです。

食品を廃棄するために使われる税金

上柳:廃棄したものは、焼却炉で燃やすことになりますよね?

井出さん:そうですね。生ごみは、重さの80%以上が水です。水だから燃えにくいし、エネルギーも使う。お金も使う。一般ごみを処理するのに、年間で2兆4489億円という税金を使っています。

私がびっくりしたのは、日本には国立大学法人が90法人ぐらいあるんですけれども、その全部の予算を合わせても1兆1000億円ないんですね。

上柳:ということは、国立大学の年間予算の2倍以上のお金を、一般のごみを燃やしたりするために使っている。本当にもったいないことですね。

しかも、燃やすということはCO2も出ますよね。

井出さん:出ます。世界の中でも、温室効果ガスをたくさん排出する国のワースト10に、日本はいつも入っています。トップ5に入る年もあります。

京都市が取り組む食品ロス対策

上柳:企業だけでなく、自治体でも食品ロスを減らす取り組みはあるんですか?

井出さん:私が注目してきたのが、京都市です。京都市は食品ロスも含め、2000年には82万トンぐらいごみを出していたんですが、20年かけて41万トンまで減らし、今はもう30万トン台まで減らしているんです。

上柳:それはすごいですね。

井出さん:ごみを処理するクリーンセンター(清掃工場)も、5つあったのを今は3つまで減らしています。

上柳:ということは、もう100億円単位で減らしているのですね。具体的には、どういう方法で減らしたのですか?

井出さん:これが大変面白く、市役所の方がいろいろ実験しているんです。

例えば宴会のときに、幹事が「皆さん、あと10分で閉会です。お皿に残っているものを食べ切ってくださいね」と声をかける場合と、声をかけない場合とで、どれくらい食べ残しが違うか。

上柳:それで、どれぐらい減るんですか?

井出さん:いろいろ減るんですけれども、面白いのは、高級レストランでは変わらないということです。

上柳:みんな、もったいないから食べるんですね(笑)

井出さん:はい。でも、安い居酒屋さんだと、幹事の声かけ一つで、変わるんです。

修学旅行でも食品ロスを減らす

井出さん:京都といえば修学旅行が非常に多いですよね。年間で75万人ぐらい来るんですが、旅館同士が「うちの旅館のほうがおかずが1品多い」という感じで、おかずの多さで競ったりしていたんです。そうすると、小学生は食べきれなかったりする。そこで市の方が、「おかずは食べきれる量でお願いします」「旅館同士で競わないように」と呼びかけたりしています。

上柳:なるほど。

井出さん:それから、賞味期限や消費期限よりかなり前に、商品を棚から撤去してしまう「販売期限」というものがあります。

「それはもったいないよね」ということで、京都市内のスーパーで、その販売期限をできるだけ延ばし、ギリギリまで販売する実験を1カ月間行ったんです。すると、食品ロスは10%減り、売り上げは逆に5.7%ほど増えました。こうした結果を示しながら、ほかのスーパーにも販売期限を延ばすよう呼びかけています。

上柳:何か画期的な方法ではなくて、小さいことの積み重ねなんですね。

井出さん:そうですね。そして、それを全方位的にやっています。

例えば、小学校4年生はごみについて習うので、食品ロスに関するクイズの下敷きや教材を配っています。

京都には国内外から観光客が訪れていますよね。英語だけじゃなく、ほかの多言語でも食品ロスについて啓発したりしています。

上柳:どれも難しいことではありませんね。「日本中のみんなでやろう!」と言ったら、すぐにできそうなことばかりです。

私たちができること

上柳:すぐにできることで、個人でできることって何がありますか?

井出さん:お腹が空いたまま、買い物に行かないことです。

上柳:そうですよね。買いすぎちゃいますもんね。

井出さん:アメリカの大学が研究していて、空腹時とそうではないときでは、なんと64%多く買い物をするんです。余計なものを買って、結局それを食べないということが多いそうです。

上柳:なるほど。会社や組織ができることはありますか?

井出さん:例えば、知り合いのコンビニオーナーさんは「牛乳と卵だけは切らさない」と言うんです。日常的に使うものだから。でもそれ以外まで、棚にパンパンに詰めておく必要はないと。例えば、栗の甘露煮なんて、お正月ぐらいしか使わないですよね。

上柳:日本は欠品を嫌いますからね。常に棚をパンパンにしておかないといけない。そのせいで余計に作ってしまい、捨てざるを得なくなる。

私たち消費者も、棚を見て「品揃えが悪いな」と不満を持つのではなく、「必要なものが、必要な分だけあればいい」と意識を変えていく必要がありますね。旬のものが並んでいれば、それで十分だと思えるような感覚を持てればいいなと思いました。

――ごみを20年で半減させた京都市。その背景にあったのは、何か一つの画期的な方法ではなく、宴会、旅館、スーパー、学校など、さまざまな場所で続けた小さな取り組みだ。食品ロスは年間461万トン、金額にして3.8兆円。あまりに大きな数字だが、京都市の例を見ると、身近な行動の積み重ねが社会を変える可能性を感じる。

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