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茶道から学ぶ、もてなしの心【花嫁の手仕事vol.6】

  • 2026.8.29
YUKARI KAWAGUCHI

今月の花嫁の手仕事は、茶道です。

茶道というと、なんとなく「ハードルが高いもの」というイメージがありますよね。ところが私の母校では茶道が必修科目。高校時代は、毎週のようにお茶を点てていました。

……といっても、当時の私にとっては、これがなかなか大変。お辞儀の仕方から道具の扱い、お茶のいただき方まで、覚えるべき作法がたくさん。次は右手? 左手? 頭の中は大混乱。茶道の時間を楽しいというより、ちょっぴり退屈と感じていたのが正直なところです。

それから約30年。

茶道からすっかり離れていたわけではなく、今でも来客があると、ときどきお抹茶を点てることがあります。あの頃は作法を覚えることに必死だったけれど、もう少し気楽にお茶そのものを楽しめるかもしれない。そんなふうに思うこともありました。

そんな折、家族で古都・奈良へ

Christopher Cypert

旅の拠点に選んだのは、「JWマリオット・ホテル奈良」。モダンで洗練された雰囲気がありながら、どこか身構えてしまうような感じがないのがこのホテルの好きなところ。

YUKARI KAWAGUCHI

木目を基調にした落ち着いた空間も心地いい。世代を問わずゆったり過ごせるので、カップルはもちろん、子連れの旅にもぴったりです。しかも、滞在中のアクティビティを見ていたら、茶道体験があるではありませんか。これはやってみたい!

茶道といえば京都と思いがちですが、実は奈良も茶の湯と深い縁のある土地。奈良出身の村田珠光は侘び茶の祖とされ、今日の茶の湯につながる礎を築いた人物です。そんな歴史をもつ奈良で、約30年ぶりの茶道。高校時代は作法を覚えるのに必死だった私がどんなふうにお茶と向き合うのか。ちょっと楽しみになってきました。

舞台となったのは、奈良町にある西村邸

YUKARI KAWAGUCHI

約300年の歴史をもつ町家が残るこの界隈には、かつて麻織物の問屋や職人が暮らし、興福寺や東大寺の神職関係者も居住していたのだとか。間口が狭く、奥へと長く続く町家が連なる風景に奈良らしい時間の流れを感じます。

YUKARI KAWAGUCHI

茶道を教えてくださったのは、武家茶道の流れを受け継ぐ今井駿一先生。難しい作法を完璧に覚えるところからのスタートではなく、まず教えていただいたのは、意外にもその空間を味わうことでした。

YUKARI KAWAGUCHI

鳥のさえずり、お湯を注ぐ音。茶筅(ちゃせん)がしゃかしゃかと茶碗の中を動く音。

普段なら気にも留めないような小さな音に耳を澄ませてみると、いつもの時間が少し違って感じられます。目の前の一服に集中して、五感をひらく。そうすると、不思議なくらい気持ちが静かになって、心の中にすっと余白が生まれてくるのです。

茶室でひときわ印象に残ったのが掛け軸

YUKARI KAWAGUCHI

また、茶道において、掛け軸はいちばんのご馳走といわれるほど大切なもの。お茶会のテーマや亭主から客人へのメッセージが込められているのだとか。この日、掛けられていたのは、先生のお祖父さまが書かれた「無」という一文字。

何かを欲張って追い求めるのではなく、ときには立ち止まって、今あるものに目を向ける。余白や不完全さのなかにも、美しさを見つける。

なんだか自分に向けられているようで、ハッとしました。いつの間にかもっと、もっと! となっていた自分の暮らしをいま一度見つめ直してみる、いいきっかけになった気がします。

茶道の楽しみのひとつが季節を愛でること

YUKARI KAWAGUCHI

そして、茶道でいただく和菓子には、季節やその土地の風景まで込められていることを知りました。私が選んだのは、寒天の中を金魚がすいすいと泳ぐ、なんとも愛らしい和菓子(左上)。金魚の養殖が盛んな奈良の文化を表現しているそうで、透明な寒天の中を泳ぐ赤い金魚を眺めていると、それだけで涼やかな気分になりました。

まずは、目で楽しんで、次に舌で味わう。食べてしまえばなくなってしまうからこそ、そのひとときを大切に味わう。これこそが和のたしなみなのかもしれませんね。こうして茶道を体験してみると、作法のひとつひとつにも相手を思う気持ちが表れていることに気づきます。

たとえば、お茶をいただくときには、茶碗を少し回して正面を避けます。亭主がこちらに向けて出してくださった茶碗。その正面を避けていただくことで、相手への敬意を表すのだとか。

YUKARI KAWAGUCHI

先生が点ててくださったお抹茶を香りで楽しみ、最後は「ずずっ」と少し音を立ててすする。この音はお茶を飲み終えたことを亭主に伝える合図なのだそう。音を立てるのはお行儀が悪いと思っていたので、これはちょっと意外でした。

そうやって知っていくと、茶道は決まりごとに縛られる堅苦しいものではなく、相手を思いやり、心を通わせるためのコミュニケーションだったのかもしれない……。少しずつ見え方が変わってきました。

最後は、いよいよ自分で抹茶を点てます

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うつわをあたため、抹茶を入れ、お湯を注ぐ。茶碗を支えながら茶筅を動かしていきます。はじめはうつわの中を優しくなでるように。そこから少しずつ手首をきかせ、こまかな泡をつくっていくーー。

無になって、自分を見つめなおす。とてもいい機会になりました。

年齢を重ねた今だからこそわかる、日本文化の美しさ

YUKARI KAWAGUCHI

昔は作法にばかり気を取られていたけれど、今なら少しわかる気がします。相手を思い、心を配り、そのひとときをともに楽しむ。茶道に息づくおもてなしの心は、これからパートナーと暮らしていく花嫁にとっても、大切にしたい美意識のひとつなのかもしれません。

※この記事は2026年8月29日時点のものです。

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