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感性をほどく陶芸【花嫁の手仕事vol.7】

  • 2026.9.19
YUKARI KAWAGUCHI

今月の花嫁の手仕事は、陶芸です

暮らしの中で毎日使う器。どんな器を選ぶかには、その人の「好き」が思いのほか静かに表れる気がします。

ひと塊の土が電動ろくろの上で少しずつ形を変え、誰かの手に渡る器になる。その器は朝のコーヒーを受け止めるマグカップになったり、大切な人を迎える日の一枚のお皿になったり。何げない日常の風景に溶け込みながら、その人らしい暮らしを静かに映し出していきます。

夫と暮らし始めた頃は、新しい生活を整えることに精いっぱいで器にまで目を向ける余裕はなく、量販店で揃えた食器セットを使っていました。そこから暮らしを重ねるうちに自分の好きだと思える器を少しずつ迎えるように。

YUKARI KAWAGUCHI

可憐な花柄から、アスティエのような静かで凜とした一皿にも憧れ、そして作家ものへ。お気に入りが一枚増えるたび、食卓は料理を並べる場所から、自分たちらしい時間を楽しむ場所へと変わっていった気がします。

YUKARI KAWAGUCHI

そんな器を愛でるうちに、いつしか自分で作るという景色にも心が向くようになりました。土から器が生まれる時間をこの目で見てみたい。そう思い、沖縄での旅先で訪ねたのが今回の花嫁の手仕事の舞台、陶芸です。

再生粘土を使用した、やちむんづくり

YUKARI KAWAGUCHI

やちむんとは、沖縄の言葉で焼き物のこと。日々の食卓に寄り添う素朴なぬくもりと、大らかな表情が魅力です。今回体験したのは、制作工程で生まれる削りカスや割れてしまった作品などを再び練り直した再生粘土を使った陶芸。ものづくりの現場で出る余りにも新しい命を吹き込む取り組みです。

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いざ、挑戦! これまで数えきれないほどの器を見て、触れて、使ってきたのだから、少しくらいは様になるものが作れるのでは? と思っていましたが、そんな根拠のない自信は、電動ろくろの前であっけなく打ち砕かれました。

ほんの少しの力加減で形は変わり、思い描いた姿にはなかなか近づかない。お皿一枚を作ることが、こんなにも奥深い世界だったなんて……!

YUKARI KAWAGUCHI

それでも、土の感触に集中している時間は不思議と心が静かになっていく。日常の思考が少しずつほどけていくような感覚。何より、自分の手を動かしたことでわかったのです。わずかな歪みもすべては偶然ではない。そこには必ず、作り手の技術と時間があるのだと。

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乾燥させて、釉薬をのせ焼きつけ、約3カ月後、一枚のお皿が届きました。思い描いたよりも小さくて、思い描いていたものとは少し違う。それでも、その不完全さこそが美しいなと思えたのです。

YUKARI KAWAGUCHI

結婚生活もそんなものかもしれません。

始めから完成形を目指すのではなく、揺らぎも重ねながら、少しずつふたりだけの形を育てていけばいいのだと。そう思うと、このお皿がよりいっそう愛おしく見えてきました。

YUKARI KAWAGUCHI

これから先もきっと思い通りの形ばかりではないけれど、器も暮らしも、手をかけた分だけ愛おしくなる。そんなことを教えてくれた、今月の花嫁の手仕事でした。

※この記事は2026年9月19日時点のものです。

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