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老いは2部制で考えると気が楽––––和田秀樹さんが説く「闘う時期」と「受け入れる時期」の切り替え方

  • 2026.8.28

老いは2部制で考えると気が楽––––和田秀樹さんが説く「闘う時期」と「受け入れる時期」の切り替え方

年金生活に入る頃から、気になり始めるいわゆる「終活」。いつの間にか増えてしまった大量の持ち物を整理したり、生活を縮小したり、あるいは遺言をしたため、エンディングノートを作ったり。そうした準備は必要だよ、という人がいる一方、いやいやそんなものは不要だよという人も。老年精神科医の和田秀樹さんは後者。なぜ「終活」はいらないのか、その考えを全6回でご紹介します。今回は第3回です。

和田秀樹さん 精神科医

わだ・ひでき●精神科医。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として35年以上にわたり医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『逃げ上手は生き方上手』『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』『女80歳の壁』など著書多数。

遺された人のことなんて考えなくていい!

遺された人のことなんて考えずに、好きなことを思いっ切り楽しんでいれば終活なんていらない!と言う和田秀樹さんからのアドバイスです。

死んでまで 生きてる人を 縛るまい

「世間の常識」や、そこから生まれた「思い込み」も、幸・不幸を分ける原因に。例えば、お墓の問題がそれだ。生前にお墓を用意したり、子どもにお墓の代金として数百万を残したりする人もいるが、この行為には「私が亡くなった後、家族にはお墓参りに来てほしい」という気持ちが含まれている。この気持ちは理解できるものの、自身は反対だと和田さんは言う。

「子孫を将来にわたり縛る足かせになりかねないと思うからです。私だったら、それは彼らに強要するように思うのでしたくないですね。そうは言いながらも私自身はご先祖様には感謝していますし、盆暮れには手を合わせますが、若い世代にそれを強要はしたくない。『死んだら関係は切れる』と思っていれば、誰にも気を遣わずに、自分の好きなように生き、お金を使うこともできます。そのほうが有意義だと思います」

衰えは 認めたほうが 気が楽だ

人はいつか死ぬ、ということは、頭では理解できていても、なかなか受け入れられない。そこで和田さんが提案するのが「老いの2部制」だ。人生自体も「2部制」で受け止めたほうがよいと本文で書いたが、老いの時期も前半と後半に分けて考え、受け入れやすくするのだ。

「前半は『老いと闘う時期』。70代中頃~80代前半の人が相当します。後半は『老いを受け入れる時期』で、80代中頃~90代の人が当たります。前半は衰えてくる体の機能をできるだけ衰えさせないよう『現状維持』を心がける時期。運動機能や脳の機能は、放っておけばどんどん低下します。しかし、元気なうちに維持するよう心がければ、低下の速度は緩やかになるのです。そして大事になるのが、後半への上手な切り替えです。うまく受け入れられると、『できなくなったこと』より『できること』に目を向けられるようになる。こういう人が最終的に元気で長生きできるのです」

高齢期における医療との付き合い方

エンディング ノートのように いかぬもの

「終末期医療」についてどう考えるかということも、「終活」の大事なテーマの一つ。医療による延命治療をせず、自然に死を迎える「尊厳死」を選びたいと書き記す人もいるはずだ。だが、このこと自体は否定しないが、しかし和田さんは、そこに医療のインチキさも感じる。

「なぜかというと、最期のときには『人間の尊厳を保つ』と言って医療を控えるのに、その手前の段階では『人間の尊厳を無視した医療』を行っているからです。例えば70歳で血圧が高い人に、医師は血圧の薬を飲み、塩分を控え、お酒もやめるように指示します。患者さんは、そこから十数年、食事もお酒も我慢して生きるわけです。これは我慢して生きることを強制された延命治療といえます。それで寿命が延びるかどうかは医師だってわかっていません。その不確かな医療のために楽しいはずの晩年をつまらないものにしている。これは人間の尊厳を踏みにじる医療だと私は思います」

本当に尊厳を保ちたいなら、「幸齢期」の積極的な医療も控えるべきだと和田さんは強く主張する。

長生きは “正しい”よりも 楽しいを

日本は今や「がんで死ぬ国」になった。そのがんを撃退するには免疫力を上げなければいけない。それだというのに、肉も塩分もお酒もタバコもダメ、となったら生きる楽しみが奪われて、むしろ免疫力は下がってしまう。確かに味の濃い食事も、お酒もタバコも心臓病のリスクを上げる「負の一面」はある。しかし同時に幸福感を高めて免疫力を上げるという「正の一面もある。つまり極端に言えば「医師の指示を聞いてがんで死ぬ」か、「好きに生きて心臓病で死ぬ」かの選択になってくる。それはひいては、「医者の言うことを聞いて、わずかに長き生きする」か、「好きに生きて、わずかに早死する」かということでもある。いずれにしても大規模比較調査をしたことがない日本では「不完全な情報」でしかない。

「それなら『好きに生きるほうがいいのでは?』というのが、私の提案です。私の35年の診療経験からも、節制してしょぼくれて生きている人より、好きに生きている人のほうが、元気に長生きしているのです」

撮影/佐山裕子(主婦の友社) 取材・文/志賀佳織 イラスト/ピクスタ

※この記事は「ゆうゆう」2025年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

※2025年4月1日に配信した記事を再編集しています。

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